「完璧じゃなくていい」スピードスケート日本女子初の金メダル 小平奈緒さんが明かす〝成長法〟

2018年の平昌オリンピックで日本女子スケート選手として初めて金メダルを獲得。いまや日本が誇るスピードスケート選手である小平奈緒さんは、かつては常に完璧主義で、自分を追い込み過ぎてかえって本番で力を出すことができずにいたといいます。それをどう克服していったのか。女子個人として前人未到のオリンピック4連覇を成し遂げたレスリング選手の伊調 馨さんが、興味津々といった様子で質問されます。

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8割、9割で合格点

〈伊調〉
小平さんも、2018年の平昌オリンピックで初の金メダルを獲得されますけど、結果を出すことへのプレッシャーとはどのように向き合っていかれましたか。

〈小平〉
オランダから帰国後、連勝を続ける中で迎えたのが平昌オリンピックだったんですが、特にプレッシャーを感じることはありませんでした。というのは、100%を出して無理やりゴールするというより、8割の力で勝てる、大丈夫というメンタリティーでスタートラインに立っていたんです。

あとは伊調さんがおっしゃっていたように、スタートラインについたら何を考えても無駄、ここまでやれることはやってきたのだから、自分より速い選手がいても仕方がない。もう肚を括って進むだけ、自分を貫いてゴールしようと思っていました。

また、ライバルである韓国の李相花選手がオリンピックの舞台でどんな力を発揮してくるのか気になるところではありましたけど、そこにも意識は向かなかった。なので、レースの記憶はぼんやりとしかなくて、夢中というか、気がついたら500メートルを滑り終わって金メダルを獲得していたという感じでした。

〈伊調〉
8割でも勝てるという意識の持ち方は素晴らしいですね。

〈小平〉
そういう心のゆとりはオランダに行ってから持てるようになったんです。やっぱり、常に完璧主義だと、失敗しない安全な道を選んでしまいますし、プレッシャーや緊張で10割出せる力も9割になってしまう。でも、自分の100%を決めないというか、8割、9割で大丈夫だよっていう自分、努力を積み上げていくことで、いまの9割が前年の10割を超えているというような成長があるんです。

それに、完璧よりも少し手前を自分の合格点に設定することで、自分を認めてあげることもできるようになるのかなって思いますね。まあ、オランダに行くまでの自分は本当に神経質で、何事も完璧にやらないと気が済まない性格でした。いまでもたまにその性格が出てしまうので、「8割、9割で合格」って自分に言っています。

〈伊調〉
そういうストイックさ、完璧主義なところは姉に似ているなって感じます。でも、あまりにストイック過ぎると疲れる(笑)。

〈小平〉
そうなんです。それをようやく自覚できるようになってきました(笑)。


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(本記事は月刊『致知』2021年6月号 特集「汝の足下を掘れ そこに泉湧く」より一部を抜粋・編集したものです)

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◇伊調馨(いちょう・かおり)
昭和59年青森県生まれ。兄と姉の影響で幼少期よりレスリングを始める。愛知県の中京女子大学附属高校(現・至学館高等学校)、中京女子大学(現・至学館大学)を経て、ALSOKに所属。世界選手権10度優勝。平成16年アテネ、20年北京、24年ロンドン、28年リオデジャネイロオリンピックで女子個人としては前人未到の4大会連続金メダルを獲得。同年国民栄誉賞受賞。

◇小平奈緒(こだいら・なお)
昭和61年長野県生まれ。幼少期よりスケートを始める。中学2年で500メートル中学記録を更新、高校時代のインターハイでは500メートル、1000メートルの2冠達成。平成17年信州大学教育学部に進学。卒業後の21年相澤病院(長野県松本市)に就職。22年バンクーバーオリンピックでは団体パシュートで銀メダル、30年平昌オリンピックでは1000メートルで銀メダル、500メートルで金メダルを獲得。

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