2021年05月21日
1994年、39歳の時に盛和塾に入塾、以来、新経営の神様とも称される京セラ創業者・稲盛和夫氏の人生・経営の神髄を学んできたパスポート社長の濵田総一郎さん。いま27社のグループ会社を率いる濵田さんに、稲盛和夫氏の心に残る教えについて語っていただきました。
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去る8月24日、稲盛和夫・京セラ名誉会長が逝去されました。35年前、1987年の初登場以来、折に触れて様々な方との対談やインタビューにご登場いただくのみならず、たくさんの書籍の刊行、数々のご講演を賜るなど、ご恩は数知れません。
生前のご厚誼を深謝し、月刊『致知』12月号では「追悼 稲盛和夫」と題して特集を組みました。豪華ラインナップは以下特設ページよりご覧ください。
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経営者に求められる「分」と「任」
〈濵田〉
稲盛塾長には、経営の転機となる貴重なアドバイスをいくつもいただいてきました。
経営に行き詰まった会社を引き受けてほしいと銀行から頼まれ、社会的意義や情にほだされて断り切れずに再建に乗り出したことがありました。歴史的、文化的な価値も高い会社であったので引き受けたのですが、再建には思いがけず悪戦苦闘しました。
思いあまって稲盛塾長に相談したところ、次のようなお話を聞かせてくださいました。
「私のところへもたくさんの話がくるが、悪魔のささやきだと思ってほとんど断ってきた。歴史的、文化的価値があることは、会社を引き受ける理由にはならない。
引き受けるか否かを判断する時には『分』と『任』というものを考えなければならない。分とは力だ。銀行が支援を依頼してくるのだから分という力量はあるのだろう。しかし、それを引き受けるに相応しい人が他にいるのではないか。
それを引き受けることによって自分の本業に支障が出て、社員が苦労するようでは、分はあってもその任にあらずということだ」
多くの同業者の再建を成し遂げてきた経緯から、稲盛経営哲学とアメーバ経営さえあれば、どんな会社でも再建できると私は思い込んでいました。
しかし稲盛塾長のお話を伺い、私は自分の慢心に気づかされました。経営者とは徹底した理想主義者であると同時に、徹底した現実主義者でなければならないことを胸に刻んだのです。
おかげさまで、その後は経営の舵取りにおいて間違いを犯すことがほとんどなくなりました。現在では27社のグループ企業を擁し、連結の売上高は550億円、経常利益は20億円を計上するに至っています。
(本記事は月刊『致知』2021年4月号 特集「稲盛和夫に学ぶ人間学」より一部を抜粋・編集したものです)
◇濵田総一郎(はまだ・そういちろう)
昭和30年鹿児島県生まれ。武蔵大学卒業。東武鉄道勤務を経て帰郷し、家業の立て直しに尽力。平成3年独立してパスポートを創業、社長に就任。