「グロービス経営大学院」学長・堀義人が語る、20代でしておくべき2つのこと

日本最大のビジネススクールとして知られるグロービス経営大学院。アジアナンバーワンという高い目標を掲げ、30歳で同学を設立した堀義人氏が起業を志した原点、そして次世代の若者に伝えたいメッセージとは――。ハーバード・ビジネス・スクールと住友商事で経験を積んだ20代を振り返ってお話しいただきました。

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可能性を閉ざすのは自分の意識

〈堀〉

(前略)
HBS(ハーバード・ビジネス・スクール)の授業は、実際の企業事例をもとに、各自が経営者の立場で戦略立案や意志決定をするケース・メソッドという学習方法で、80分の授業が毎日2、3ケース実施されます。もちろんすべて英語です。

冒頭に誰かがいきなり指名され、自分の分析結果やアクションプランを説明しなければならず、それをもとに全員でディスカッションを行います。授業中の発言で評価の半分は決まるので、全員必死で手を挙げます。

入念な予習が必要な上に、夜は10時から仲間との勉強会にも参加するので、食事に30分以上費やしたことがないほどの忙しさでした。

楽しみは一週間の授業を終えた金曜の夜、クラスメートを誘って飲みに行き、夢を語り合うことでした。そこでとても印象に残ったのが、ほとんどの学生たちが起業家を夢見ていたことです。

日本では、優秀な人間は官庁や大企業に行くといった通念がありますが、HBSに世界から集まってきた優秀な人材は、自分でゼロから会社を立ち上げ、大きくすることが一番格好いいと考えているのです。私はそれまで、会社を起こそうなどと考えたことは一度もありませんでした。

しかし、そうした異質の価値観に刺激され、ベンチャーと名のつくコースを全部受け、多くの起業家の話を聞き、様々な事業アイデアを検討した末に、ハーバードを超えるアジアナンバーワンの大学院をつくりたいという目標に辿り着いたのです。

私がそうした高い志を抱いたのは、在学中に一つの言葉と出合ったからです。それは、ある黒人の方のスピーチに出てきた「可能性を信じる」という言葉でした。その言葉を聞いた瞬間、私は「これだ!」と思ったのです。自分に欠けていたのはこれだったのだと。

人間の可能性を閉ざしているのは、他人でもなく、外部環境でもなく、自分の意識であるということ。自分自身ができない、自分はこんなもんだと思った瞬間に、自分の可能性は閉ざされてしまうことに気づかされたのです。

自分の頭上を覆う天井を突き破り、宇宙にまで達するくらい自分の可能性はあると強く認識する。他人が何と言おうと、外部環境がどうであろうと、それを貫くことで道は開けてくる。もちろんそれはむやみに猪突猛進することではなく、可能性の高いものを冷静に見極め、それを現実の社会の中で具現化していくための明確な戦略を描いた上でということです。

ゆえにこれからは、自分の頭でとことん考えた上でなければ、決して可能性を否定しないようにしよう。とことん考える習慣を身につけ、その中で可能性があり、やるべき価値があると思えるものに向かって、信じて突き進んでいこうと決意したのです。

アジアナンバーワンを目標に掲げたのは、仮に日本一になったとしても、世界ではほとんど認識されないと思ったからです。100年以上の歴史を誇るHBSを凌駕するには時間がかかっても、アジアの他の大学院になら勝てる。今後は世界でアジアの地位が向上していくことは間違いないので、アジアナンバーワンは世界ナンバーワンへも通じる道だと考えたのです。(中略)

抜きん出ること、結果を出すこと

〈堀〉
30歳で勝負を懸けようと考えていた私は、20代のうちにできるだけ多くの経験を積み、多くを学び、自分を高める努力を重ねながら30代以降の生き方を懸命に模索していました。

その際に大事なことは、与えられた仕事については必ず抜きん出るという意識で臨むことだと考えていました。人一倍努力をして結果を出す。そのことを常に意識して仕事に臨むことが、自分を大きく成長させてくれると思うのです。

もう一つ心掛けたことは、できる限り多くの人と出会うということでした。よき縁に導かれずして事を成していくことは困難です。そして縁というのは、出会った人の範囲内でしか生まれないのです。

ネミック・ラムダという会社を創業された斑目力曠(まだらめ・りきひろ)さんから、人間は多くの可能性を秘めている。その可能性をよい方向に向けるか、悪くしてしまうかは縁によって決まるというお話を伺ったことがあり、私は深い共感を覚えました。

確かに人間は、良縁に恵まれることで運命もよい方向に開けていきます。それゆえに私は、グロービスを最高の良縁の場にしていきたいと考えるのです。グロービスに出合い、そこで学んだ人が、よい人生を切り開いていける場にしていくことこそが私の願いなのです。

振り返ってみれば、20代の自分は懸命に学び、様々な経験を積み、人生を精いっぱい楽しんでいました。思いっ切り生きていたと言い切ることができます。

自分の人生に明確な目標を持たず、無為に時をやり過ごすほどもったいないことはありません。いま20代の只中を歩んでいる方々には、たくさんの経験、学び、出会いを重ねながら、自分の可能性を信じて何事にも精いっぱい取り組んでいただきたいと思います。それは30代以降の人生に、必ず大きな果実をもたらしてくれるはずです。


(本記事は月刊『致知』2015年2月号 連載「二十代をどう生きるか」より一部を抜粋・編集したものです)

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〝この本は、教育者としてどうあるべきかという心構えや考え方が至る所に鏤められており、僕自身、『致知』で知ったのか、誰かに薦められたのか定かではありませんが、いずれにしても非常に感動し、何度も読み返しています〟

――読書家の堀 義人さんが、特に影響を受けた一冊としてこう語る『修身教授録』(森信三・著)
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◇堀 義人(ほり・よしと)
昭和37年茨城県生まれ。61年京都大学工学部卒業後、住友商事入社。平成3年ハーバード大学経営大学院修士課程修了。4年住友商事を退社し、グロービスを設立。8年グロービス・キャピタル、11年エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。18年グロービス経営大学院を設立、学長に就任。著書に『吾人の任務』『人生の座標軸』(ともに東洋経済新報社)などがある。

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