〝最強のエクササイズ〟自衛隊体操で心と体のスイッチをオンにする〔前編〕

東日本大震災をはじめ、2018年の北海道胆振東部地震や2019年の台風19号、また今年7月に九州地方を襲った豪雨など、住民の生活を揺るがす天災が後を絶ちません。そうした災害の発生時にいち早く派遣され、救護活動にあたっているのが日本の自衛隊です。
被災地での活動は苛酷を極めることが容易に想像されますが、その中でも任務を全うするための体力づくりの一環として、陸自・海自で毎朝行われている、ある体操があります。それがここでご紹介する自衛隊体操です。自衛隊の設立以来受け継がれてきたというこの体操の効果と魅力を、自衛隊体育学校 体育班長の柴田勉さんにお話しいただきました。〔シリーズ配信・前編〕

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僅かな時間で限界まで全身を鍛える

〈柴田〉
どのような状況でも任務を全うするためには、全身をくまなく鍛え、その機能をバランスよく発達させると共に、いつも健康に働ける体力を養う必要があります。これらを目的に〝5分間でできる運動〟としてつくられたのが、今回ご紹介する「自衛隊体操」です。

もともとは昭和27年頃、福岡県にあった警察予備隊(当時名称)の養成学校で考案され、以来約70年の間、陸上自衛隊と航空自衛隊の毎朝の体操として各駐屯地で受け継がれてきました。

自衛隊体操の特徴はいくつかあります。

1つにはこの体操が21の項目で構成されている点。

2つにはそれらすべてが、「振る」「回す」といった身体の動きの基礎となる7つの「基本運動」の組み合わせからなっている点。

3つには「これ以上は痛い、動かない」という生理的極限まで行う点です。これは何も、過剰な負荷を掛けなくてはいけないという意味ではありません。自分の身体の可動域を知るために重要な原則なのです。

基本運動を正しく理解し、自分の生理的極限まで身体を動かすことで、高い運動効果を得やすくなります。特別な器具や技術は必要なく、場所さえあれば誰もが数分で実施できる。これこそ自衛隊体操が「最強のエクササイズ」と呼ばれる所以だと私は思います。

自衛隊体操がもたらす様々な効果

〈柴田〉
この体操を実践された方から、「全身が引き締まった」「姿勢(スタイル)がよくなった」「筋力がついた」等々の喜びの声が上がっています。

一般的なラジオ体操などではあまりないことですが、自衛隊体操は基本運動をベースに全身を余すところなく、かつ限界まで動かせるよう計算されています。そのため、継続的に実践することで筋力や柔軟性の向上、脂肪燃焼、姿勢(スタイル)の矯正効果も見込めます。

他にも慢性的な肩凝りや腰痛が改善された、またイライラや不安感が解消されたという方もあり、メンタルに関わる悩みにも一定の効果があるようです。

最初は「こんな難しい体操、自分には無理」と思われるかもしれません。しかし車を走らせる時と同様、最初からトップギアに入れる必要はないのです。体操の前に、以下を念頭に置いてください。

●十分な準備運動をする
首や肩、手首・足首、股関節など全身の関節を動かし、周りの筋肉を開始前に温めましょう。

●運動に適さない時間帯は避ける
食後30分以内(消化不良が起きやすい)、極端な空腹時(眩暈や注意力の低下で怪我のリスクが高まる)、就寝直前(寝つきが悪くなる)。これらの時間帯は悪影響を及ぼしかねません。

●できる範囲から始め、継続する
最初の1~2週間は決して無理をせず、継続を第一に考え、できる範囲から始めてください。最初こそ難しく感じられますが、徐々に身体が適応していくはずです。

体操の根幹をなす7つの基本運動

〈柴田〉
まず、自衛隊体操を構成する七つの基本運動を理解しましょう。

①振る 腕を振る際は肩を、脚を振る際は脚の付け根を支点に、「振り子の原理」を意識しましょう。支点以外の腕や脚は脱力し、重力を利用することがポイント。前後左右いずれの場合も同じです。

②上げる 腕や脚を上げる際は、「振る」と同様に支点を意識しながら、しかし脱力ではなく筋力を使って動かします。「振る」と対になる運動と理解してください。

③回す これも中心点を意識して行う運動です。上体を回す際にはお腹の下、腕を回す際には肩といった中心がブレないよう、勢いよく振り込み、回していきます。

④捻る 首や上体を捻る際は、中心軸を意識し、タオルを絞る要領で関節周りの筋肉を刺激します。

⑤倒す 胴体に限って用いられる運動。下半身は固定した状態で、背筋を伸ばして上体を倒します。

⑥屈伸 腕や脚を曲げる時に使う「屈筋」と、伸ばす時に使う「伸筋」の連動で成り立つ動作です。最大限に屈み、最大限伸ばすことで関節の可動域が広がります。

⑦跳躍 つま先を揃え、膝のバネを使って軽快に跳びます。脚、膝、股関節を一つのクッションのように連動させるイメージです。体に余分な力が入らないよう顎は引かずに、自然な状態で跳びましょう。

後編では「忙しい方のための3分間プログラム」と題し、より短時間で効果を実感する自衛隊体操の具体的なやり方をご紹介中!


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それぞれ陸上自衛隊と海上自衛隊に「特殊部隊」を創設した
熊野飛鳥むすびの里代表・荒谷卓さんと、特殊戦指導者・伊藤祐靖さん。
・ ・ ・
戦いの中に身を置いてきたお二人のお話には、
いかなる過酷な環境にも屈しない最強の人材・組織のつくり方、
リーダーの条件など、コロナ禍の闇を切り開く学びが満載です!


(本記事は『致知』2020年9月号 連載「大自然と体心」より一部を抜粋・編集したものです

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◇柴田 勉(しばた・つとむ)
昭和41年福岡県生まれ。60年に航空自衛隊入隊後、高射部隊、教育部隊、司令部に勤務。平成19から24年自衛隊体育学校の体育教官を務め、29年から現職。日本スポーツ協会公認スポーツ指導員。『自衛隊体操公式ガイド』(講談社)では体操指導を務める。

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