マックス・フォン・シュラーが読み説く「アメリカのいま、日本の未来」【第1回】——分裂と崩壊の危機にあるアメリカ

元海兵隊、歴史家として独自の視点と情報源からアメリカ政治、国際情勢に対する鋭い評論を続けているマックス・フォン・シュラーさん。日本在住の親日家でもあり、日本文化への深い理解から、この激動の時代の中で日本が持つ使命、とるべき具体的な方策も積極的に提言してきました。本連載では全3回にわたり、日本人が知らない超大国・アメリカの真実、混乱を深める朝鮮半島の行方、そして日本復活の道筋を紐解いていただきます。連載第1回は、過激な左翼運動、新型コロナウイルス感染拡大などにより、分裂と崩壊の危機にあるアメリカのいまに迫ります。

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なぜアメリカは世界最大の感染国になったのか

世界各地で猛威をふるっている新型コロナウイルス。中国政府は否定していますが、今回の新型コロナウイルスは中国武漢市が発生源であることは間違いないでしょう。武漢市にはウイルスを専門に研究する中国科学院の「武漢病毒研究所」があります。そこで実験に使われていたコウモリやネズミなどの動物が施設から逃げ出す、あるいは市場での販売目的などで外部に持ち出され、ウイルスが漏れ出てしまったというのが私の見方です。

日本では次第に収束しつつあるものの、第2波、第3波による感染拡大の可能性もあり、油断は禁物です。実際、隣国・中国や韓国では再び感染が広がっており、南米やアフリカなどではこれから感染拡大が本格化するといわれています。日本は海外からの渡航者・観光客の受け入れについて、最低でもあと1~2年は慎重になる必要があるでしょう。「規制は必要ない。日常生活に戻ろう」「早く観光客を受け入れよう」などと主張する人たちは、新型コロナウイルスによって世界はこれまでとは全く違うものになってしまったことを認識しなければなりません。

さて、現時点(2020年6月24日)で最も多くの新型コロナウイルスの感染者・死者が出ている国はどこかといえば、それは世界1位の経済大国・アメリカです。アメリカの感染者は約200万人、死者も11万人を超えました。これは2番目に多いブラジル(感染者約100万人・死者約4万人)を大きく上回る数字です。なぜ超大国であるアメリカで最も感染が拡大しているのでしょうか。その要因を探ることで、現在のアメリカが抱える様々な問題、矛盾が見えてきます。

まず一つには、アメリカの医療・保険システムの問題です

アメリカには日本のような国民健康保険制度が整っていないため、盲腸の手術だけで約900万もかかり、毎年何十万人ものアメリカ人が医療問題で自己破産しています。ですから、アメリカ人は体調が悪くても医療機関をなかなか受診しようとしないのです。また、民間の健康保険に入っていても安心できません。病気になり保険金が必要になっても、アメリカの保険会社は自分たちが損を被らないよう膨大な契約書を盾に様々な理由をつけて支払いを拒もうとします。これは私が実際に聞いた冗談のような話ですが、病気になったある人が保険金の支払いを受けようとした時、保険会社が「あなたは若い頃に顔に疾患がありましたね」と言うので、「あれはニキビです」と答えたら、「契約時に申告していないから保険金は払えない」と。このようなことは日本では考えられないことです。

確かにアメリカには最先端の設備を備えた医療施設や高い技術を持った医師が存在します。しかし、アメリカの医療・保険システムは人々の病気を治し、命を守るというよりも儲けのためのビジネスになっており、その人の財産を奪い生活を崩壊させてしまうようにできているのです。こうした医療事情が新型コロナウイルスの感染拡大や死者の増加に繋がる一因になっているのだと思います。

もう一つは、都市部の衛生環境の悪化です。アメリカでは行き過ぎた強欲資本主義が蔓延り、年々国民の間で経済格差、貧富の格差が広がっています。1983年に『フォーチェン』誌が発表したアメリカ主要500社の経営者の平均的な報酬は、一般労働者の約38倍でしたが、近年では約224倍にまで拡大しています。さらに、リーマン・ショックによる景気後退も格差拡大に拍車をかけました。格差の拡大によって失業者やホームレスが急増した都市部では、衛生環境が悪化し新型コロナウイルスを含め様々な感染症が蔓延しやすくなっているのです(米住宅都市開発省のデータではアメリカのホームレス人口は実に約55万人にも上ります)。衛生環境が整っていない都市部のホームレスの野営地から、新型コロナウイルスの感染が広がっている可能性は十分考えられます。

それから三つ目に指摘しておきたいのは、政府によるロックダウン(都市封鎖)や営業停止措置に強固に反対する右派、保守派の存在です。アメリカの保守派は個人や企業の権利・自由を最大限尊重し、政府による干渉を非常に嫌がります。また、伝統的なキリスト教信仰を守る保守派の人たちは、子供の頃から『聖書』に書かれていることは一字一句完璧に真実だと教えられており、進化論や地球温暖化も信じていません。今回の新型コロナウイルスも政府や製薬会社の陰謀だと主張しています。そのような保守派勢力が、経済活動の再開や規制緩和を求めるデモを展開したり、外出や営業停止措置を守らなかったりして、感染封じ込めを妨げているのです。

それに、もともとアメリカ人は個人主義が強く、日本人のように政府が外出や営業の「自粛」をお願いすれば、皆で団結して自発的に協力するという国民ではありません。私は今回の日本人の協力体制、規律ある行動に本当に驚きました。そうした国民性もアメリカが世界一の感染国になってしまった要因でしょう。

フロイド氏の事件から見えるもの

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、5月25日にミネソタ州ミネアポリスで起こったのが、現在も全米を揺るがしている黒人男性ジョージ・フロイド氏の事件です。この事件からもアメリカが抱える深刻な問題が見えてきます。

報道では、武器を持たない無抵抗のフロイド氏が白人警官に膝で首を9分近く押さえつけられ窒息して亡くなったとされています。この白人警官の対応にアメリカ各地で抗議の声が上がり、大規模な暴動にまで発展。ホワイトハウス(大統領を護衛するシークレットサービスが複数人怪我をしたという情報もあります)やリンカーン記念堂も攻撃され、お店の略奪や警察署が焼き討ちに遭うなど大きな被害が出ています。そのため大都市では夜間外出令が敷かれ、一部の都市では暴動鎮圧のために州兵が投入されました。これは戦後、前例のない危機的な事態です。

まずフロイド氏について触れておきましょう。報道されているように、フロイド氏は麻薬や武器所有などの前科がある人物です。事件当時の映像を見ると、最初に駆けつけた警官と車の中で何やら争っている様子が見え、捕まる時のおぼつかない不自然な歩き方からフロイド氏が薬物をやっているか、酔っ払っているようにも推測できます。治安が悪いアメリカでは、警官の任務にはいつ自分が撃たれて殺されるかもしれないという命の危険が常に伴いますから、少しでも容疑者が抵抗すれば警官はすぐさま制圧行動を行います。今回のフロイド氏の場合も、警官は身の危険を感じで制圧行動をとったのでしょう。

そして制圧の際、警官はフロイド氏の首の裏、肩当たりに膝をつけてはいますが、重要な点は、その間フロイド氏が言葉を発していることです。もし窒息死したのであれば、会話はもちろん声を出すことすらできないでしょう。ですから、フロイド氏は、警官の制圧が引き金となり、もともとあった持病が悪化したか、薬物中毒による影響で死に至った可能性も考えられます。しかし、そうしたことはメディアでもほとんど報道されず、きちんとした検証もされていません。きちんとした報道・検証がされないままデモが始まり、あっという間に暴動へと広がっていったのです。

その背景には、アメリカ社会の根本を揺るがしている左派の存在があります。

分断、崩壊へと向かう超大国

日本ではあまり知られていませんが、近年、アメリカでは左派による極端なポリティカル・コレクトネス(人種・宗教・性別などの違いによる偏見や差別を含まない中立的な表現や用語を使用すること)や、過激なフェミニズム運動が高まり、社会の根幹を揺さぶっています。

例えば、左派たちは英語という言語すらつくり直そうとしています。英語の「He(彼)」と「She(彼女)」は、いまのアメリカでは性的な差別用語であると考えられているのです。左派はこれからの性別として、中立的な「Ze」を使うことを勧めています。

カリフォルニア州で結婚式を挙げる場合にも、式の最中に「夫と妻」という言葉を使うことは法律で禁止されています。性的に中立な意味である「配偶者と配偶者」を使わなければなりません。なぜなら、「夫と妻」という言葉は、同性愛者の結婚に対して失礼に当たるからです。また、もしあなたがアメリカでビジネスを行っている場合、12月に「メリー・クリスマス」という看板を出すことは危険です。「あなたは、キリスト教の信者ではない人を差別している」と左派から裁判を起こされるかもしれないからです。

オハイオ州のオーバリンの大学では何人かの学生が、食堂で出している寿司とベトナム料理に反対していました。その学生たちの主張では、お米が正しく調理されておらず、文化的な配慮をもってその料理がつくられていないことが問題だというのです。アメリカはもはや自由に自分の主張を述べることができない国になっているのです。

そのような左派と右派の衝突も激しさを増しています。例えば、2017年、バージニア州シャーロッツビル市でアメリカ南北戦争の英雄ロバート・E・リー将軍の記念碑を撤去しようとする左派の提案に対し、右派が抗議する行進を行いました。アメリカ南北戦争の時代、特に南部のリーダーたちの多くは黒人の奴隷所有者でした。左派の望みは、南北戦争の記念碑を奴隷制の記念碑に取り換えることにあります。右派の行進は左派の社会主義労働党などから暴力的攻撃を受け、一人が亡くなり、多くの負傷者が出ました。こうした激しい暴力を伴う衝突がアメリカ各地で発生しているのです。

そして、左派の中でも特に過激なのが、白人至上主義や人種差別に反対する反ファシズム運動を展開し、共産主義革命を掲げる「アンティファ」(Anti-Fascist Actionの略)です。実際、トランプ大統領はフロイド氏の事件への平和的な抗議活動が「アンティファ」の扇動によって暴動に発展した、「アンティファ」をテロ組織に指定すると発言しています。

私も暴動の背後には「アンティファ」の扇動があることは間違いないと思います。極左団体や「アンティファ」が目指すのはアメリカ社会の分断であり、崩壊に他なりません。SNSに投稿された暴動の映像では、暴動が始まる前に黒い服装をした「アンティファ」の構成メンバーが街中にレンガを置いている様子が写っています。また、暴動開始の直前、「アンティファ」の白人メンバーが黒人たちに何やら命令し立ち去る映像もあります。そして実際に警察と揉み合いになり逮捕されているのは黒人たちです。これが本当に黒人差別を訴えるデモ、暴動なのでしょうか?

このまま極左の活動が活発化し、右派との暴力的対立が深刻化、激化していけば、トランプ大統領が「戒厳令」を出す事態になることも考えられます。そうなればアメリカは本格的な「内戦」「内乱」状態に陥り、秋の大統領選挙もどうなるか分からないでしょう。日本の方々はこうした分裂と崩壊に向かいつつある同盟国・アメリカの現実をしっかり把握して、激変する国際情勢に処していかなくてはなりません。

(※連載第2回は、7月1日(水)18時を予定しています。マックスさんに気になる朝鮮半島情勢を読み説いていただきます)

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◇マックス・フォン・シュラ―

1956年アメリカ・シカゴ生まれ。1974年に岩国基地に米軍海兵隊として来日、アメリカ軍の情報局で秘密調査などに従事。退役後は、国際基督教大学、警備会社、役者、ナレーター等、日本国内で幅広く活動する。著書に『アメリカ人が語る 日本人に隠しておけないアメリカの"崩壊"』『日本に迫る統一朝鮮の悪夢』『アメリカ人が語るアメリカが隠しておきたい日本の歴史』(いずれもハート出版)などがある。YouTube公式チャンネル「軍事歴史がMAXわかる!」でも情報発信中。

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