2021年12月06日
戦後75年を経たいまも、自虐史観から脱することができない日本。欧米列強の支配下にあったアジア解放など、歴史の「正の部分」が過小評価されているとの指摘もあります。長年アジアの国々を訪れているアジア支援機構の池間哲郎氏とジャーナリストの井上和彦氏が、歪んだ教育の問題点や日本人としての誇りについて語り合いました。
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自国が「悪い国」と教えているのは日本だけ
(池間)
アジアの近代化に対する日本の貢献は、計り知れないものがありますね。
(井上)
ところが、現代の日本人の多くはそのことを知りません。逆に日本が日本語を強要したとか、皇民化教育を強要したという言い方をするわけでしょう。インドネシアにしても350年間、オランダに言葉を奪われ、文化を奪われ、すべてを奪われていた。そういう人たちに日本は教育を施したんです。
日本が施した教育は文字だけではありません。数学、哲学、医学、技術など多岐に及びます。では、何語で教えるのか。日本兵がオランダ語で教えるわけにはいきませんね。日本語で教えるしかないわけだから、日本語を強要したなどというのは全く的外れな指摘です。皇民化などまさに戦後教育の捏造以外の何物でもありません。
(池間)
一方、プロパガンダの悪影響で、これからの日本がどうなっていくかという不安がどうしても拭えませんね。私は最近、学校教育現場に力を入れているんです。学校に足を運ぶと、「日本は悪い国」という教えがいかに子供たちに深く染みついているかが分かります。
例えば、教科書がそうです。歴史を辿るとミャンマー人はタイ人を虐殺し、タイ人はラオス人を酷い目に遭わせ、ベトナム人はカンボジア人を苦しめたという負の歴史があります。どこの国もそうです。
だけど、それぞれの歴史教科書(国史)には、自分たちの国は素晴らしい国だ、誇りを持ちなさいということが、はっきりと書かれている。日本だけですよ、自分たちの国は悪い国だと教えているのは。私は何とかこの流れを変えたいと努力しているんです。
アジアの手本となる生き方に涙
(井上)
池間さんの話を聞いた子供たちは変わりますか。
(池間)
はい。特に高校生たちは変わりますね。日本がアジアから愛されている具体的な事例を示すと、彼らの背筋がピンと伸びる瞬間を感じます。彼らも「日本人として誇りを持ちたい」と思っているんです。中には泣き出す子もいます。
ある時、講演が終わると、高校生の丸坊主の男の子がポロポロ泣きながらと近づいてきましてね。「いつも先生方から日本の悪口ばかり聞かされて、日本人に生まれたことが恥ずかしいとか、日本は大嫌いだとか思っていたけど、きょう初めて日本人になることができました」と。こういう話がいっぱいあるんですよ。
(井上)
アジアでなぜ日本人が愛されているかというと、やはり当時の日本人が、台湾の人たちが言うリップンチェンシン(日本精神)そのものだったからだと思います。勤勉で正直で約束を守るという日本人の姿はアジアの人たちにとって人間的な儀表、手本なんです。
(池間)
日本の統治時代を知るアジアの人たちは、先生方を褒める人が大変多いですね。日本人教師に対する尊敬の念がとても強い。
その教育はいまも根づいていて、ほとんどすべての人たちが「どうせ仕事をするなら、日本人と組みたい」と言いますね。日本人は正直で約束したことはちゃんと守ってくれる。そして優しい、と。
正しい歴史観を持つリーダーが求められる
(井上)
優れた先人の生き方を見てくると、どうしてもいまの日本人のこれからについて目を向けざるを得ません。戦後僅か70年の間に、日本人は驚くほど劣化してしまいました。それは嘆かわしいばかりです。
その意味で、私たちはいまこそ先人の足跡に学ばないといけないし、先人たちに心から感謝しなくてはいけない。そのことを強く訴えたいですね。
(池間)
私は少し視点を変えて、「他国に学ぼう」と言いたいと思います。海外に行くと「日本人ってどういう民族なのですか」「何を大切にしているのですか」「最初の神様は誰ですか」といった質問を受けます。
しかし、日本人のほとんどはその質問に答えられないと思いますね。だって自分たちの神話もろくに学んでいないじゃないですか。海外の子供たちは違います。「自分はこういう国の、こういう人間なんだ」とはっきり言いますし、国旗や国歌をものすごく大事にしています。
だから、日本はそういう他国に学んで祝日は日の丸を掲揚するとか、国歌を高々と歌うとか、せめて普通の国になってほしいと思うんです。そうやって誇りを持って歩んでいく日本人であってほしいと心から願いたいですね。
(井上)
ところが、国歌斉唱や国旗に対する一部国会議員の非常識な主張や彼らの極端に歪んだ自虐史観を聞くと腹立たしく思えて仕方ありません。
(池間)
全くそのとおりです。考えてみたら、これは単純明快なことであって、祖国を愛し、日本人としての誇りを持つ。それだけの話だと思います。右だの左だのという話ではなくて、当たり前のことを当たり前と思える。そういうリーダーが増えてくれば、日本は大きく変わっていくはずです。
(本記事は月刊『致知』2016年1月号 特集「リーダーシップの神髄」より一部抜粋・編集したものです)
「日本の近現代史、先人たちの勤勉、誠実な姿勢、立ち居振る舞いをいま一度見直していくことが必要です」
◉井上和彦さんが『致知』2022年1月号に再びご登場。ジャーナリストとしてアジアの人々の声に耳を傾けてきた体験をもとに、忘れ去られてしまった日本史の真実、失われつつある日本人の精神、そして先人が教える日本の生き筋を語り合っていただきました。お相手は、拓殖大学顧問の渡辺利夫さんです。
◇池間哲郎(いけま・てつろう)
昭和29年沖縄県生まれ。会社員を経て映像制作会社を設立し、アジア途上国の人々の姿をとおして懸命に生きることの大切さなどを伝え続けている。認定NPO法人アジアチャイルドサポート代表理事。「日本塾」主宰。著書に『あなたの夢はなんですか? 私の夢は大人になるまで生きることです。』(致知出版社)『日本はなぜアジアの国々から愛されるのか』(育鵬社)など。
◇井上和彦(いのうえ・かずひこ)
昭和38年滋賀県生まれ。法政大学社会学部卒業。専門は軍事・安全保障・外交問題・近現代史。テレビ番組のコメンテーター、キャスターを務めるほか、書籍やオピニオン誌の執筆を行う。著書に『日本が戦ってくれて感謝しています(1・2)』(産経新聞出版)『ありがとう日本軍』(PHP研究所)など。
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