大胡田誠×大石亜矢子 ともに盲目の弁護士と歌手夫婦が語り合う人生のヒント

大胡田誠さん、大石亜矢子さんご夫妻はともに全盲というハンディを抱えながら、それぞれ弁護士、歌手として活躍を続けてきました。2人はどのように困難を乗り越え、道を開いてきたのでしょうか。人生をよりよく生きるヒントを語り合っていただきました。

人間関係は鏡写しのようなもの

(大胡田) 

いま亜矢子さんは親と子がともに育つと言いましたけど、実際、仕事でも友人関係でも人と人とは鏡写しのようなものだと思うんですね。相手がなかなか心を開いてくれないと思う時には自分が心を閉ざしていることが多くて、それが相手にも伝わって相手も心を閉ざしてしまう。

もし、相手に自分を信頼してもらいたいと思うのであれば、まずは相手を信頼する。自分のことを相手に分かってもらいたいと思うのであれば、まずは相手を理解しようと努める。その思いは鏡写しのように相手にも伝わっていくんです。このところ、私はそのことを強く感じるようになりました。

私は弁護士になりたての頃、依頼者からなかなか信頼してもらえませんでした。ほとんどの依頼者は人生の危機に直面した方々です。自分を助けてくれるはずの弁護士が目が見えないのですから、「本当に自分を弁護してくれるのか」と不安に思われるのも無理はありません。

私もそのことで随分と悩みまして、いろいろな本を読んだり先輩の話を聞く中で分かってきたのが、この鏡写しということでした。相手が不安なのは、自分の心が不安だからなんだと思って、まずは相手を信頼して話を全部聞く。

そうすると「ああ、この先生は自分を信じてくれているんだ」と伝わって、相手も私を信頼してくれるようになる。そんな関係性があることが、ある時から分かり出したんですね。

それ以降、初めて会うクライアントともスムーズに関係がつくれるようになりました。いまではこれはすべての人間関係に応用できる話だと確信を得ていますし、私の中では生きる上での大切な信条ともなっています。

(大石) 

仕事上の信条という意味では、私は雰囲気や場づくりがとても大切だと思っています。音楽活動でも自分もお客様もともに楽しめるように選曲したり、歌ったり、トークをしたりということを心掛けているんですけど、人生における信条としてはやはり自分で決めるということでしょうね。別の言い方をしたら、何かのせいにしないことが大事だと考えているんです。

(大胡田) 

私もいつもそう思って生きています。

(大石) 

私は一昨年、主人と一緒に本を書かせていただきました。その時に改めて自分の半生を振り返って、いろいろな出来事にぶつかると何かのせいにしてきたことにとても引っかかりました。だけど、自分の思いを正直に言えなかったことにしても、よくよく考えたら自分が言わなかっただけ。自分自身に原因があったことにやっと気づけたんです。

(本記事は月刊『致知』2019年5月号「枠を破る」から一部抜粋・編集したものです。各界一流の方々のご体験談を多数紹介。あなたの人生、経営・仕事の糧になる教え、ヒントが見つかる月刊『致知』の詳細・購読はこちら

◇大胡田誠(おおごだ・まこと)
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昭和52年静岡県生まれ。先天性緑内障により12歳で失明する。筑波大学附属盲学校の中学部・高等部を卒業後、慶應義塾大学法学部を経て、慶應義塾大学大学院法務研究科へと進む。平成18年5回目の挑戦で司法試験に合格。全盲で司法試験に合格した日本で3人目の弁護士となる。25年からつくし総合法律事務所に所属し、一般民事事件や企業法務、家事事件(相続、離婚など)や刑事事件などに従事する他、障碍者の人権問題をテーマにした活動も続けている。著書に『全盲の僕が弁護士になった理由』(日経BP社)。

◇大石亜矢子(おおいし・あやこ)
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昭和50年千葉県生まれ。極低出生体重児だったため、保育器の高濃度の酸素により網膜が損傷する「未熟児網膜症」によって失明。2歳の時に静岡県沼津市に移住。筑波大学附属盲学校(現・筑波大学附属視覚特別支援学校)の中学部・高等部を卒業後、武蔵野音楽大学声楽科卒業。ソプラノ歌手としてソロ歌唱の他、ピアノの弾き語りによる演奏活動を勢力的に行い、各地で感動を呼んでいる。また、盲導犬の啓発活動なども行う。大胡田氏との共著に『決断。全盲のふたりが、家族をつくるとき』(中央公論新社)がある。平成22年CD『マイ・ライフ』を、30年アルバム『My Best』をリリース。

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