松下幸之助に教わった「社会人にとって大切な2つのこと」

『松下幸之助に学んだ人生で大事なこと』は、松下幸之助の薫陶を受けた上甲晃さんがその半生を振り返り、師に学んだ人生と仕事の極意を余すところなく記した実践録です。著者は就職した松下電器で編集長まで務めあげるも、広報の仕事から突然、営業畑へ異動を命じられます。苦心の末、営業成績もグングン伸び始めた矢先、下った辞令はまさかの松下政経塾出向――。数々の試練や挫折に直面する中で常に心の支えとなったのが、経営の神様・松下幸之助氏の教えでした。本日は『松下幸之助に学んだ人生で大事なこと』からその珠玉の教えを一部ご紹介いたします。

松下幸之助との出会い

現場での実習期間中、時々、全員が本社に集められる。新入社員研修は、私にとっては、衝撃だった。何よりも、松下幸之助の話が、目から鱗。それどころか、大学時代に学んだいかなる高名な教授達の講話よりも、心に響いたのだ。実学の持つ迫力に触れたとも言える。

かつて、大学の同窓会で講演したことがある。「私は、学問的な学びを大学でしたけれども、人間が生きていくうえで大切なことは、ほとんどすべて会社で学んだ。もっと言えば松下幸之助に教えられた」と話したことがある。

松下幸之助の話で、忘れられないことがいくつかある。私が自らの会社員生活をまことに充実して過ごすことができたのは、松下幸之助の教えのおかげであると言っても過言ではない。言葉を変えれば、松下幸之助に出会わなければ、私は、自らの生き方を、こんなにも真剣に、前向きに考えることはなかったかもしれない。

「ええ会社に入った」と思えるかどうか

まず、2つのことを教えられた。「まず君達が、この会社に入っていい仕事ができるかどうかは、“いい会社に入った”と思えるかどうかである。もっと言えば、家に帰って両親に向かって、“おかげでいい会社に入れた”と言えるかどうかや」。私は、この一言を、すごい言葉と受け取った。
「いい会社に入った」と思うと、「僕は幸せだ」と思う。もしも、「大変な会社に入ったな」と後悔したら、「僕は不幸だ」と思う。生まれた場所でも、「いい所に生まれた」と思うと、「僕は幸せだ」となる。「嫌な場所に生まれた」と思うと、「僕は不幸」だ。結婚も同じだ。「いい人と結婚したな」と思い続けられる人は、「僕は幸せだ」。「大変な人と結婚してしまったな」と後悔する人は、「僕は不幸な星のもとにある」と思ってしまうだろう。

松下幸之助は、「人間の人生、9割は自分の意志ではどうにもならない運命にある」と言う。確かに、生まれてくること自体も、男か女かも、親兄弟も、生まれてくる時間も、場所も、顔付や背格好も、自分の意志ではどうにもならない運命のもとにある。あるいは宿命とも言える。
自分の努力ではどうにもならないことは、受け入れる以外にないのだ。「この親は気に食わないから変えてくれ」、「こんな時間に生まれたくなかったから変えてくれ」と言っても、どうにもしようがない。しようがないことは、受け入れざるを得ない。できれば、「喜んで」。

「何よりも信用や」

社会人になって大切なことの2番目は、「信用や」。

社会人になって、お金が一番大事と思ったらあかん。もちろん、お金も大事や。しかし、お金というものは、万一なくしても、努力すれば取り戻せる。人生には、これをいったんなくしてしまうと、取り戻すのに大変苦労するものがある。その取り戻すのに苦労するものを何よりも大事にせなあかん。それは何か?それは信用や。信用ぐらい、身に付けるのに苦労するものはない。そして失うのは一瞬や。いったんこれを失ったら、二度取り戻せないかもしれん

社会人として50年以上生きてきて、この言葉ほど本質を突いた教えはないと思う。私にとっては、最も大切なことを、社会人生活の最初に教えられたことは、まことに幸運だったと思う。
いかなる才能に恵まれていても、「あの人は、人間として信用ならない」と言われたら、すべての才能は何の役にも立たなくなる。

「立場は新入社員でも意識は社長であれ」

新入社員の研修の時、松下幸之助から、「これから仕事をするに当たって、雇われ人の意識ではなく、社長の意識になれ」と教えられた。

立場は新入社員でも、意識は社長であれ」。私のサラリーマン生活を通し、一貫して心掛けてきたことである。そしてもう一つ、「上司は使うものである」。

サラリーマン生活を私が存分に楽しむことができたのは、この二つの教えを愚直に守り通したからだ。上司から見たら、まことに扱いにくい部下だったと思う。

「意識は社長」、「上司は使うもの」の二つの言葉を集約して、松下電器では、それを「社員稼業」と称した。即ち、社員の一人一人が、雇われ人ではなく、「松下電器の軒先を借りて店を開いているつもりでやれ」といった意味だ。自主自立、独立稼業の意識を植え付けられたのだ。私は、その教えを極めて積極的に受け止めた。31年間のサラリーマン生活の間、「意識は社長」であったように思う。

(本記事は『松下幸之助に学んだ人生で大事なこと』(上甲晃・著)より一部抜粋・再編したものです。人間力・仕事力を高める記事が満載の『致知』、詳細はこちら!)

◇上甲晃(じょうこう・あきら)
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昭和16年大阪市生まれ。40年京都大学卒業と同時に、松下電器産業(現・パナソニック)入社。広報、電子レンジ販売などを担当し、56年松下政経塾に出向。理事・塾頭、常務理事・副塾長を歴任。平成8年松下電器産業を退職、志ネットワーク社を設立。翌年、青年塾を創設。同塾で20年以上にわたる指導を続け、1700名を超える若者たちを育ててきた人材育成のスペシャリストである。著書に『志のみ持参』『志を教える』『志を継ぐ』(いずれも致知出版社)など多数。

『松下幸之助に学んだ人生で大事なこと』

定価=本体1,500円+税

 

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