幸せは心のレベルで決まる——稲盛和夫の幸福哲学

京セラ、KDDI、JALの再建……会社経営をしていく中で得た事業・人生発展の秘訣を、強い信念を持って語り続けてきた稲盛和夫氏。人生・仕事と向き合い、発展させていく中で掴まれた独自の「幸福哲学」には多くの学びをいただきます。

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勤勉、感謝、反省の大切さ

私は13歳で終戦を迎えた世代ですので、生きる上で最初に意識したことは、「勤勉」ということでした。廃墟と化した国土に立ち、真面目に一所懸命働くことしか、生きる術はなかったのです。

私の一家も当時、経済的にたいへん困窮しましたが、不思議と不幸だという感覚はなかったように思います。誰もが誠実に、日々懸命に生きることで精一杯だったのです。

その後、27歳のときに京セラをつくっていただいてからは、「感謝」という思いを強く抱きました。経営の経験も何もない私のために、自宅を抵当に入れてまで、会社設立に尽力いただいた方々の期待に応えなくてはならないとの一心から、必死になって働いているうちに、心の底から「感謝」する思いが湧き起こってきたのです。

幸いにして、まもなく会社の経営も軌道にのり、借金を返せるめどもつきましたが、決して経済的に豊かになっていたわけではありません。そのころは一日中仕事で走り回り、ときにはクレーム処理などのトラブルに追われ、まさに昼夜兼行で仕事に励んでいました。

しかし、それでも一緒に必死になって働いてくれる社員や、注文をくださるお客様、いつも無理を聞いてくださる業者の方々など、周囲の人々への「感謝」の思いは片時も忘れたことはなく、同時に「自分は幸せ者だ」ということも、漠然とではありますが感じていました。

その後、日本の社会が豊かになっていくにつれ、京セラも成長発展を重ね、また思わぬことに、私も経営者として世間から高い評価をいただくようになってまいりました。

そのころから私は、「反省」ということを強く意識するようになりました。毎日、起床時と就寝前に洗面所の鏡に向かい、昨日あったこと、今日自分がやったことを思い返し、人間として恥ずべき点があれば、自分自身を強く叱り、再び過ちを繰り返さないよう戒めるようになりました。

至らない自分ではありましたが、そのような「反省ある人生」を心がけてきたことで、晩節を汚していく経営者が次々と現れる中にあって、大きな過ちを犯すこともなく、十分に幸せを実感できる、現在の日々を迎えることができているものと私は考えています。

美しい心を持って生きる

このように、どのような環境にあろうと、自分なりの幸せを感じつつ、現在に至っていることを思い返すとき、私は幸せとはまさに主観的なものであると強く思います幸せと感じられるのか感じられないのか、その成否はあくまでも、当人の心の状態にあるのであって、普遍的な基準など一切ないと思うのです。

物質的にいかに恵まれていようとも、際限のない欲望を追い続けていれば、決して幸せを感じることはできない。一方、物質的に恵まれず赤貧洗うが如し状態であっても、満ち足りた心があれば幸せになれる。

仏の教えに、「足るを知る」ということがあるように、膨れあがる欲望を満たそうとしている限り、幸福感は得られません。反省ある日々を送ることで、際限のない欲望を抑制し、いまあることに「感謝」し、「誠実」に努力を重ねていく――そのような生き方の中でこそ、幸せを感じられるのだと思います。


(本記事は月刊『致知』および弊社書籍『人生と経営』『「成功」と「失敗」の法則 』などより一部を抜粋・編集したものです)


◇追悼アーカイブ
稲盛和夫さんが月刊『致知』へ寄せてくださったメッセージ

「致知出版社の前途を祝して」
平成4年(1992)年

 昨今、日本企業の行動が世界に及ぼす影響というものが、従来とちがって格段に大きくなってきました。日本の経営者の責任が、今日では地球大に大きくなっているのです。

 このような環境のなかで正しい判断をしていくには、経営者自身の心を磨き、精神を高めるよう努力する以外に道はありません。人生の成功不成功のみならず、経営の成功不成功を決めるものも人の心です。

 私は、京セラ創業直後から人の心が経営を決めることに気づき、それ以来、心をベースとした経営を実行してきました。経営者の日々の判断が、企業の性格を決定していきますし、経営者の判断が社員の心の動きを方向づけ、社員の心の集合が会社の雰囲気、社風を決めていきます。

 このように過去の経営判断が積み重なって、現在の会社の状態ができあがっていくのです。そして、経営判断の最後のより所になるのは経営者自身の心であることは、経営者なら皆痛切に感じていることです。

 我が国に有力な経営誌は数々ありますが、その中でも、人の心に焦点をあてた編集方針を貫いておられる『致知』は際だっています。日本経済の発展、時代の変化と共に、『致知』の存在はますます重要になるでしょう。創刊満14年を迎えられる貴誌の新生スタートを祝し、今後ますます発展されますよう祈念申し上げます。

――稲盛和夫

〈全文〉稲盛和夫氏と『致知』——貴重なメッセージを振り返る

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◆稲盛和夫(いなもり・かずお)
昭和7年鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。34年京都セラミック(現・京セラ)を設立。社長、会長を経て、平成9年より名誉会長。昭和59年には第二電電(現・KDDI)を設立、会長に就任、平成13年より最高顧問。22年には日本航空会長に就任し、27年より名誉顧問。昭和59年に稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった方々を顕彰している。また、若手経営者のための経営塾「盛和塾」の塾長として、後進の育成に心血を注ぐ。著書に『人生と経営』『「成功」と「失敗」の法則 』『成功の要諦』(いずれも致知出版社)など。

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