世界的建築家・安藤忠雄が熱く語った〝逆境〟を突破するリーダーの心得

2017年、国立新美術館(東京都)で開催され、約30万人を動員した「安藤忠雄展 ―挑戦―」。独学で建築を学び、世界中から脚光を浴びる建築家となった安藤忠雄さんは2003年の月刊『致知』で、建築に没頭した若き日々、人を惹きつける人間の仕事姿勢について熱く語っていました。当時の安藤さんの迸るような情熱が伝わってくるリーダー論は必読です。(写真=2018年撮影)

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1日4時間睡眠、外出せず勉強漬け

〈安藤〉
僕は高校を卒業してから悪戦苦闘の人生で、あまり成功した試しがないんです。

建築をやりたいという気持ちは早くからあって、地元の大阪には京都大学とか大阪大学に建築学科があったんですが、家庭の経済的な事情と自分の学力の両方の理由で行けなくて、自力で勉強せざるを得ませんでした。 

毎朝9時から次の日の朝4時まで机に向かいました。当時四当五落という言葉がありましてね。睡眠4時間で頑張ったらいい大学に受かるけれども、5時間寝たら通らないという意味なんです。

その時僕は、京都大学と大阪大学の建築学科の本を買ってきて、自分も4時間しか寝ないぞと決めて、4月1日から翌年の3月末まで1年間、外に出ずに月月火水木金金で勉強した。

それをやったからといって、別に大学卒業の資格が得られるわけじゃありませんが、自分なりに、建築というのはこんなに難しいものかということが分かりましたし、ずっと勉強し続けなければいかんということも実感できましたから、収穫は大きかったと思うんです。

その間に、建築やインテリアデザインやグラフィックデザインといった、表現に関わる通信教育を全部受けてスタートしたんですが、学歴もネットワークもない自分を、社会は誰も相手にしてくれないわけですね。

だけど大阪というのはおもしろいところで、そういう人間でも、ものすごく元気で頑張っている人には、時々チャンスをくださる人たちがいたんです。これが、自分が大阪で頑張ることのできた原点なんですね。

どういうリーダーに人はついていくか

リーダーは知力と生命力ですけれども、人はその生命力のほうについてくるわけでしょう。目標に向かっていく勢いみたいなものに、よし賭けてみようと思ってついていくわけです。

車の運転でもそうですが、ノロノロ運転していたら眠くなってぶつかりますけど、時速150キロで走っていれば居眠り運転なんかしないでしょう。

これは大企業でも、25人ほどの私の事務所でも同じで、リーダーは目標を明確にして、それに向けて可能な限り全力疾走していれば、緊張感があるからそんなに失敗しないと思うんです。やっぱり居眠りができるような中途半端な走り方では駄目です

 時速60キロ程度では油断が生まれます。120キロとか150キロとかの、どう見てもスピードオーバーであるという速度で走るべきです。ぶつかったら終わる、と周りは忠告するかもしれませんが、突出するから必死な姿が見えます。

よい仕事をするぞ、責任ある仕事をするぞ、と決心して本気で前を行くリーダーにこそ人はついていくものです。特に若い人には、本気で仕事をするとはどういうことかを体感するためにも、全力疾走するリーダーになれと僕は言いたいですね。


 (本記事は月刊『致知』2003年11月号 特集「仕事と人生」より一部を抜粋・編集したものです)

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 ◇安藤忠雄(あんどう・ただお)
1941年大阪生まれ。建築家。独学で建築を学び、1969年に安藤忠雄建築研究所を設立。1979年「住吉の長屋」で日本建築学会賞。代表作に「光の教会」「大阪府立近つ飛鳥博物館」「淡路夢舞台」「FABRICA(ベネトンアートスクール)」「フォートワース現代美術館」「東急東横線渋谷駅」など。イエール大学、コロンビア大学、ハーバード大学の客員教授を務め、1997年東京大学教授、2003年から名誉教授。1993年日本芸術院賞、1995年プリツカー賞、2005年国際建築家連合(UIA)ゴールドメダルなど受賞多数。2010年文化勲章受章。

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