1 月号ピックアップ記事 /百年企業はどこが違うのか
創業177年 山本海苔店 山本貴大(山本海苔店社長) 藤間秋男(TOMAコンサルタンツグループ会長)

日本には、100年の風雪に耐えてきた長寿企業が多数ある。そこに見出せる経営の神髄は何だろうか。事業承継コンサルタントとして百年続く企業づくりに取り組む藤間秋男氏が、百年企業の強さの秘密を探る本連載。初回は、山本海苔店の歴史と経営について社長の山本貴大氏に伺った。

創業当初から〝伝統は革新の連続である〟という精神を貫いてきました
山本貴大
山本海苔店社長
〈藤間〉
日本の食卓といえば海苔ですが、近年は海外の需要も高まっていますね。御社は海苔の老舗として長年にわたり市場を牽引してこられましたが、ご創業から何年続いているのですか。
〈山本〉
初代の山本德治郎が事業を始めたのが江戸時代後期の1849(嘉永2)年ですから、2026年で創業177年目です。
初代德治郎は農家の出身ですが、自分の力で道を切り拓きたいと考えて江戸へ出ました。そこで出合った「海苔」に強い関心を抱いて、山本海苔店を創業しました。海苔のメッカは元々浅草だったんですが、初代は商才に長けた人で、これから発展すると見込んだこの日本橋で商売を始めたわけです。
その志を継いだ二代目がすごくて、大きな仕事を2つやりました。
1つは「味附海苔」の発明です。これは、二代目が千葉道場の剣友だった山岡鉄舟から、明治天皇が京都へ還幸される際によいお土産はないかと相談を受けて考案したものです。海苔って醤油をつけて食べるじゃないですか。けれども天皇陛下にそんな手間をおかけしてはならないということで味附海苔を考えついたのだと思うんですが、これが大好評で、いま風に言えば〝バズった〟わけです(笑)。
もう1つ、「仕訳」というのもやりました。それまでは海苔をただ海苔として売っていたんですが、二代目は、これは蕎麦用の海苔、これは寿司用の海苔という具合に、8種類に仕訳して売り始めたんです。これによって……(続きは本誌にて)
~本記事の内容~
◇江戸時代から続く老舗として業界を牽引
◇伝統は革新の連続である
◇自ら実感した老舗の条件
◇会社を一つにするために必要なもの
◇謙虚に そして貪欲に

〈ホスト〉
藤間秋男(とうま・あきお)
TOMAコンサルタンツグループ会長
昭和27年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。公認会計士税理士。明治23年創業の藤間司法書士事務所の末裔として、昭和57年藤間公認会計士税理士事務所を新規創業。230名の総合コンサルファームにTOMAグループを成長させ、平成29年より会長。著書に『中小企業の事業承継はじめに読む本』(すばる舎)『100年残したい日本の会社』(扶桑社)など多数。
プロフィール
山本貴大
やまもと・たかひろ――昭和58年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、東京三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)へ入行。平成20年山本海苔店入社。子会社の丸梅商貿(上海)を経て、シンガポール髙島屋店、台北三越店の立ち上げなどに参画。令和3年社長に就任。
編集後記
取材は10月16日(木)、日本橋の山本海苔本店にて行われました。コンサルタントとして多くの中小企業の百年企業づくりを支援し続ける藤間秋男さんから専門家ならではの鋭い質問が飛び交い、2時間に及ぶ取材は大いに盛り上がりました。

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