和敬清寂 茶の心で生きる 大貫ちか子(裏千家茶道名誉師範)

60年以上茶道の道を歩み、94歳のいまなお生涯現役で「茶の心」を人々に伝承し続けている裏千家茶道名誉師範・大貫ちか子さん。夫である作家の故・三戸岡道夫氏の言葉や茶道の教えを交え、充実した人生を掴む要諦を語っていただいた。

「和敬清寂」の心を皆が持てば、いまみたいな戦争も起こらないでしょうし、もっと多くの人、若い人たちがこの茶の心を学び、立派な日本人として生き、世のため人のために貢献していってほしいと心から願っています

大貫ちか子
裏千家茶道名誉師範

――大貫さんは94歳のいまも、現役の茶道家として後進の育成に力を尽くされているそうですね。

〈大貫〉 
94歳で現役だと言っても、そういう方は世の中にたくさんいらっしゃるのではないですか? とにかく私は90歳まではよく一人で出歩いたり、お医者さんに行ったり元気にしていたんですけれども、90歳を過ぎてからは、半年ごとくらいにまた体が辛くなったなと感じるようになりました。人間って、こうして歳をとって死んでいくんだなと……。

ですから、最近は、毎日毎日を大切に生きて、茶人として立派に死んでいきたいという思いをますます深くしているところです。

――日々を大切に生きる。いまお稽古では何人くらい生徒さんを指導なさっているのですか。

〈大貫〉 
いまは自宅(東京都)で毎月9回ほどお稽古をして、15人くらいが通ってくれています。

以前はカルチャースクールの産経学園や学校でもよく教えていました。文京区立第一中学校では約50年教えて、ついこの間、教え子に引き継いだところです。新大久保の学校でも何年か教えましたけれども、随分評判がよくて、辞める時に教育委員から何度も引き止められました。

――お稽古ではどのようなことを大事に指導されているのですか。

〈大貫〉 
いつも伝えているのは「和敬清寂」ですね。

「和」はお互いに心を開いて仲良くすること、「敬」はお互いに敬い合うこと、「清」は見た目だけではなく心も清らかであること、そして「寂」はどのような時も動じない心のこと。この「和敬清寂」の言葉には、すべての茶の心が込められています。

また、「おはようございます」「ありがとうございます」など、きちんと挨拶ができる人間になってほしいということもよく伝えていますね。人としての基本である挨拶がきちんとできる人は、やはり茶道もよくできるようになります。

~本記事の内容~
◇茶道が一番の健康法
◇仕事が人生の喜びに
◇我慢が人生をひらく
◇茶の心を伝承する
◇世のために人のために

プロフィール

大貫ちか子

おおぬき・ちかこ――昭和6年静岡県生まれ。大学卒業後、高校教員となる。結婚を機に東京に生活拠点を移し、38歳の時に裏千家茶道に入門。以後修業を重ね、正教授として多くの教室で指導を行う。平成21年名誉師範授与。


編集後記

取材は、都内の大貫さんのご自宅兼稽古場にて行われました。取材の前に、黒の楽茶碗にてお茶を点ててくださったのですが、その佇まいに優雅さと風格を感じ、感動しました。もちろんお茶もすごくおいしかったです。茶道の学びを人生に生かしてこられた大貫さんの体験談に、最後まで凛として生きる要訣を教えられます。

2025年12月1日 発行/ 1 月号

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