『大和の赤子』——日本に大和心を取り戻す ジョン・ラデュー(映画監督)

ハワイで生まれ、日本で育った映画監督ジョン・ラデューさんの最新作『大和の赤子』。本作は、結・和・祭をテーマに、日本人の精神、アイデンティティの神髄に迫っていく話題作ですが、そこには「自分はアメリカ人なのか、日本人なのか」アイデンティティの葛藤を抱えて生きて来たラデューさんご自身の人生のテーマが織り込まれていると言います。ラデューさんにこれまでの歩みと共に、 『大和の赤子』に込めるメッセージをお話しいただきました。

『大和の赤子』をぜひ一人でも多くの日本の方々に見ていただき、この悠久の歴史と伝統文化への誇り、そして「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の言葉にあるような日本人の謙虚さ、皆の幸せを願う和合の心、〝大和心〟を取り戻すきっかけになればと思っています

ジョン・ラデュー
映画監督

いまでは「見た目はアメリカ人、心は日本人だ」と胸を張って言えるのですが、かつての私は、自分はアメリカ人なのか、それとも日本人なのか、アイデンティティの葛藤を抱えて生きていました。

1981年、私はアメリカ人としてハワイに生まれ、父親の仕事の都合で幼少期に来日、東京で育ちました。幼い頃は「自分は日本人だ」という意識で生活していたのですが、小学生の頃から、次第に金髪の自分と周りの子供たちとの違いに気づくと共に、見た目などに関していじめを受けるようになったのです。

また小学校途中でハワイに一年ほど戻り、さらに父が中国で仕事をする予定があったことで、中国語学校にも通うことになりました。結果的にどの言語も中途半端になってしまい、国語の授業中、立って教科書を読まされるのが苦痛でたまりませんでした。

自分のアイデンティティが分からなくなる中で、拠り所になったのが〝映画〟でした。小学6年生の時、父が知人からビデオカメラを譲り受けたのですが、私はそれを使い、弟などを役者にして映画をつくるようになったのです。

そして進学したインターナショナルスクールで、映画監督を目指す同級生の影響を受け、将来は自分も同じ道に進むことを決めたのでした。


プロフィール

ジョン・ラデュー

1981年アメリカハワイ生まれ。日本で育ち、インターナショナルスクール卒業後、ロサンゼルスの映画学校で4年間学び、ハリウッドの仕事に携わる。日本のメディア企業などの勤務を経て、2018年映画制作会社KINTSUGIを設立。監督作品に『パパかママか』『大和の赤子』(2026年1月1日から日本・海外でオンライン配信)などがある。


2025年12月1日 発行/ 1 月号

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