8 月号ピックアップ記事 /二十代をどう生きるか
二十代は感性を磨け 水上 力(一幸庵店主)

開業から48年にわたりお客様から愛され続け、国内外の料理人がこぞって見学に訪れる東京・茗荷谷のお菓子調進所「一幸庵」。店主の水上力氏は喜寿を迎えるいまなお厨房に立ちながら、世界のトップパティシエとのコラボレーションにも精力的に取り組み、仕事に余念がない。氏の菓子づくりに懸ける情熱はいかにして育まれたのか。修業時代を振り返っていただき、菓子職人としての原点に迫る。

仕事を心から楽しむことができれば、どんどん前に進んでいきます。
だから、困難というものはありません。
たとえ壁が立ち塞がっても、自分を変えることで打ち壊すことができる
水上 力
一幸庵店主
私の20代は、ただただ必死の10年間でした。立派な職人になりたい一心で、菓子づくりに没頭し尽くしました。その一つひとつの積み重ねが、いまの私を形づくっていると実感しています。
最後の宮大工棟梁と称された西岡常一さんは次のような言葉を遺しています。「宮大工はいま評価されなくても、100年後、200年後に残っていればそれでいい」。手仕事の尊さが詰まった金言です。
翻って、いまは何でもネットで答えが分かる時代になり、若者も早く結果を求めているように感じます。そんな時代に私の修業時代の体験が受け入れられるか分かりませんが、無我夢中で駆け抜けたあの頃を振り返りたいと思います。
戦後間もない1948年、東京の南大塚で江戸菓子屋を営む両親の元に生まれました。両親は毎日朝から晩まで働いていて、私も配達や餅つきをよく手伝っていたものです。ただ、4人兄弟の末っ子でしたから、後を継ぐ気はありませんでした。公認会計士になろうと思い、大学に進学しました。
当時は大学紛争の真っ只中。私も時代に流されてデモに参加していたところ、大学4年生の時に大学紛争が終焉を迎え、三島由紀夫の割腹自殺事件が起きました。衝撃を受け、自分なりに将来を真剣に考えるようになったのです。
とはいえ、……(続きは本誌にて)
~本記事の内容~
◇必死の10年間
◇文化を理解することが大事
◇過酷な修業を経て掴んだもの
◇壁を打ち壊すのは自分
◇熱意と意氣と元気と努力
プロフィール
水上 力
みずかみ・ちから――昭和23年東京都生まれ。江戸菓子屋の四男として育つ。京都・名古屋で約5年間、菓子職人としての修業を積み、52年東京・茗荷谷に「一幸庵」を開店。「エコール・ヴァローナ 東京」や「ジャン・シャルル・ロシュー」といった国際的なパティスリーメゾンとのコラボを積極的に行う。著書に『IKKOAN 一幸庵 72の季節のかたち』(青幻舎)など。
編集後記
5月21日(水)、茗荷谷の一幸庵を訪ねると、水上さんは笑顔で私たちを迎えてくださいました。取材前につくしの和菓子を、取材後にはとろけるような触感の名物のわらび餅を、感動をもって堪能しました。

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