5 月号ピックアップ記事 /エッセイ
『重職心得箇条』に学ぶ上に立つ者の心得 窪田哲夫(恵那市 佐藤一斎 言志四録普及特命大使)

幕末の大儒・佐藤一斎は、門弟の数3000人ともいわれ、新時代の国家建設を担う指導者たちにも多大な影響を与えたといわれている。その一斎がまとめた十七条からなるリーダーの要諦が、『重職心得箇条』である。同書を座右に変化する人生を切り開いてきた窪田哲夫氏が一斎から学んだもの、そしてこの令和の日本をも見据えて一斎が訴えかけているものとは。

公平を失ふては、善き事も行はれず
佐藤一斎(さとう・いっさい)
©恵那市教育委員会
安永元(1772)年~安政6(1859)年。岩村藩家老の佐藤信由を父に江戸藩邸で生まれた。朱子学や陽明学に通じ幕府の学問所「昌平坂学問所」の儒官を務める。佐久間象山や横井小楠、渡辺崋山など多くの逸材を育てた。著書に『重職心得箇条』『言志四録』など。
六条「活眼で、渦中の処理を、怠るな!」
公平を失ふては、善き事も行はれず。凡そ物事の内に入ては、大体の中すみ見へず、姑く引除て活眼にて惣体の体面を視て中を取るべし。
(公平を失っては善い事すらも行われない。だいたい物事の内に没頭してしまうと、どこが中か隅かも分からなくなってくる。しばらく問題を脇に除けて、活眼でもって全体を見渡し、中を取るがよい)
事を行うには公正であることが大事で、これがなければ問題が起きた時にその本質を捉えがたく、どんな善い事も成就しません。そんな時は、渦中から一歩離れて、活きた眼で客観的に見る。そして、何が問題の核心で、何が意味のないことなのかを見極める。
上に立つ者は、自らのありたい姿を明るく、元気に、爽やかに、前向きに語り続けるべきです
窪田哲夫
恵那市 佐藤一斎 言志四録普及特命大使
上に立つ者は、常に自らの姿勢を正しく鍛え、修養し、その姿勢を真っ直ぐ貫かなければならない──旧国鉄で組合活動や組織改革に携わり、民営化後にグループ会社の役員を務めてきた私は、日々多くの部下と向き合う中で、このことを強く実感してきました。
そんな私が腹中の書として心に刻んできたのが、幕末の儒者・佐藤一斎の『重職心得箇条』です。世には数多のリーダー論がありますが、上に立つ者の品格陶冶と行動指針の要諦をここまで簡潔明瞭に示した点で、同書は他に類を見ないのではないでしょうか。
少し前の話になりますが、小泉純一郎氏が首相時代、官僚との軋轢に窮していた外務大臣・田中眞紀子氏に推薦して話題になったのがこの『重職心得箇条』でした。
小泉氏ばかりでなく、中曽根康弘氏や橋本龍太郎氏といった歴代首相をはじめ、政財界の多くのリーダーが上に立つ者の必読書としてこれを拳拳服膺していました。住友生命中興の祖・新井正明氏は、碩学・安岡正篤師を招いて『重職心得箇条』の講話を受け、幹部職に就く人には和綴じの冊子にして渡し続けていたそうです。その時の講話録は、『佐藤一斎「重職心得箇条」を読む』と題して致知出版社より刊行されています。……(続きは本誌にて)
~本記事の内容~
◇国内外のリーダーたちを魅了したその教え
◇人間力涵養の拠り所として
◇上に立つ者は日々何を心懸けるべきか
◇人々を明るくさせるのが上に立つ者の役目
◇200年後の日本をも見据えて
プロフィール
窪田哲夫
くぼた・てつお――昭和21年新潟県生まれ。慶應義塾図書館に勤務し拓殖大学商学部を卒業。鉄道労働組合中央執行委員、新幹線地方本部委員長、国鉄改革を経て、ジェイアール東海エージェンシーマルチメディア室長、営業部長、マーケティング部長、常務取締役を歴任。現在ジョルダン非常勤監査役、富士社会教育センター幹事、岐阜県恵那市 佐藤一斎 言志四録 普及特命大使。
編集後記
幕末の儒者・佐藤一斎が著した『重職心得箇条』。政財界のリーダーたちが愛読し、碩学・安岡正篤師の講話録が弊社より刊行されています。現代に通じる長の心得を説いた『重職心得箇条』の魅力を、一斎に造詣が深く「普及特命大使」を務める窪田哲夫さんに解説いただきました。

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