4 月号ピックアップ記事 /インタビュー
自分の人生は自分で輝かせる 竿下和美(ピアニスト/京田辺音楽家協会理事長)

ピアニストとして二十代から受賞を重ね、独自の演奏活動を通じて地域貢献の表彰も受けてきた竿下和美さん。一人娘の高校卒業を控えた春、ステージⅣのがんで余命一年半の宣告を受ける。しかし、病を抱えて病の内に屈せず、芸術家としての火種に転じるその姿は、周囲に感動と勇気を与えている。竿下さんが音に込める思いとは。

自分の人生が輝くかどうかは、他人が決めるものじゃない。自分の心次第だと思います
竿下和美
ピアニスト
――まさにいま、末期がんを抱えながら活躍するピアニストがいると知り、京田辺(きょうたなべ)市にまいりました。
〈竿下〉
遅い時間にありがとうございます。この春先の時期は自分の活動に加えて、音楽大学志望の高校生の指導が佳境に入るので、夜8時まで体が空かなくて。
いまの感覚として、私の中には3人の自分がいるんです。自分の音楽を追究するピアニスト竿下和美。次に、周りの音楽仲間の夢を叶える京田辺音楽家協会の理事長としての私。そして、皆さんにつけていただいた屋号「がんと闘うピアニスト」としてボランティア活動を行う私です。
朝、家事を済ませると、この一年毎日SNS(Instagram)で続けている演奏の配信の撮影をして、午後はコンサートや協会の仕事、学生の指導をする。抗がん剤の投与は、毎週1回行っています。
――お会いすると、見るからにお元気で、驚いています。
〈竿下〉
よく言われます(笑)。抗がん剤は、一番効くものから順に打っていって、4年目のいま4種類目です。体調は比較的安定していますけど、5年を越えるのが大変と言われている中で、この薬の効果がどれだけもつか。それは誰にも分からないことです。
もちろん病気になったのは嫌な出来事です。でも逆に、病気によって常に終わりを意識するようになりました。やりたいことは何でも後回しせず、前倒しでやろうって。だから人生に断然ハリが出てきました。人間、本来こうやって生きたら楽しいんだろうなって、日々感じています。……(続きは本誌にて)
~本記事の内容~
◇がんを抱えて、3つの自分を生きる
◇自分の守りたいものは自分で守るしかない
◇「ママは簡単に死なへんって信じてるから」
◇前代未聞、三世代で至高の名曲「第九」に挑む
◇自分が奇跡を起こせば誰かに奇跡が連鎖する
プロフィール
竿下和美
さおした・かずみ――大阪府生まれ。京都市立芸術大学音楽学部卒業後、プロデビュー。平成11年長江杯国際ピアノコンクール第1位、16年フランス音楽コンクール奨励賞ほか受賞多数。令和元年NPO法人京田辺音楽家協会設立。5年2月、ステージⅣの肺腺がんと余命1年半の宣告を受ける。6年12月「『全』市民第九演奏会 ~三世代で繋ぐ歓喜の歌~」を決行、以降も活動継続中。
編集後記
「事の外に立ちて事の内に屈せず」――。竿下さんの取材を終えて頭に浮かんだのは、この言葉でした。
江戸幕末期、財政難に陥った備中松山藩の財政再建を成功させた儒学者・山田方谷(やまだほうこく)の言葉です。直面したこと、目先の問題に囚われず、大局的に考えることの大事さを説いています。
竿下さんは、末期がん・余命1年半という、普通ならば打ちひしがれてしまうような境遇にあって、病に屈せず病の外に立って、自らの音楽を追い求めておられます。
夜遅い時間だったにもかかわらず、取材が進むほどに、心なしか顔や体から光が出始め、どんどんイキイキとしたエネルギーを発散されているように見えました。お話の内容はもちろん、そのことにも感動しました。ぜひ、何のてらいもなく、いまを真剣に生きる竿下さんの言葉に触れてください。

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