4 月号ピックアップ記事 /対談
感謝こそ最高の力なり 西田文郎(サンリ会長) 大橋秀行(大橋ボクシングジム会長)

井上尚弥選手をはじめ5人の世界チャンピオンを輩出してきた大橋ボクシングジム会長の大橋秀行氏には若き日の現役時代、大きな転機があった。試合で負けが続く中、その原因が自身の心のあり方にあると気づいたことである。以来、感謝という言葉は氏の人生の中心軸となった。メンタルトレーニングの第一人者として知られる西田文郎氏もまた、脳の働きを研究する過程で感謝こそが究極のプラス思考と悟る。感謝の力が持つ大いなる力を、それぞれの人生体験を踏まえて語り合っていただいた。

「負けず嫌い」には二種類あって一つは「拗(ひね)くれた負けず嫌い」。拗くれていても負けず嫌いの人間は強くなる。しかし、本当に強くなれるのは「素直な負けず嫌い」なんです
西田文郎
サンリ会長
〈西田〉
きょうは久々にお会いできて光栄です。2014年、65歳の時に脳梗塞を患ったのですが、ご覧の通り杖がなくても生活し、講演ができるまでに回復しました。
大橋会長も指導者としてボクシング界で大活躍ですね。世界王者である井上尚弥さんの驚異的な強さは誰もが知るところです。実は今回対談するに当たって少し調べてみたんです。そうしたら会長と最初にお会いしたのが2001年か2002年なんですよ。
〈大橋〉
ああ、そんなに経ちましたか。確か川嶋勝重が世界戦に挑む前からのお付き合いですね。
〈西田〉
ええ。大橋会長がまだ30代、僕は50代でした。川嶋さんが2004年に世界を制覇して、それからというもの大橋ボクシングジムに入る人、入る人、皆強くなっちゃった。他のジムには失礼ながら、こんなことは普通あり得ない。
〈大橋〉
奇跡です。もちろん、西田先生に教えられたメンタルトレーニングの力も大きいわけですが、運に恵まれましたね。
川嶋が王座を獲得し、その背中を八重樫東(やえがし・あきら)が追って、八重樫の背中を見て井上尚弥・拓真兄弟、武居由樹が育った。適当な選手がチャンピオンになっていたら、そういうよき伝統は受け継がれなかったわけだから、川嶋の存在は大きかったですね。うちにはこの5人の世界チャンピオンがいますが、僕が最も印象に残っているのは、やはり川嶋なんです。

いまもそうですけど、ピンチの後は絶対によいことがあるんですね。ピンチが来た時にはワクワク、ドキドキするように自分を訓練し、いまでは自然にそれができるようになりました
大橋秀行
大橋ボクシングジム会長
〈大橋〉
改めて振り返ると、僕の場合、両親もそうですが、兄貴(大橋克行氏)の存在が大きかったですね。もし兄貴がいなかったら絶対にボクシングをやっていなかったと思います。
〈西田〉
お兄さんもプロボクサーでいらっしゃいますね。
〈大橋〉
はい。僕は小学生の時、勉強も運動も苦手な子供でした。運動会の曲が流れるのを聞いただけで心臓がドキドキしてずる休みするほどでした。
ところが、5つ上の兄貴からボクシングごっこ、プロレスごっこ、柔道ごっこの相手をさせられるうちにどんどん強くなりましてね。中学校では地元の柔道大会で3年連続優勝するくらい力を付けていきました。その頃からボクシングを始め、横浜高校では海藤晃先生の指導を受け、2年生でインターハイ・モスキート級を制覇したんです。
この海藤先生はたいへんなスパルタ教育で、実力のある先輩と比較しては「おまえは駄馬なんだから3倍練習しないとサラブレッドには勝てないんだよ」といつも言われ続けていました。本当に3倍練習して2年生の時にインターハイで優勝したんですけど、悔しさをバネにできたのがよかったと思います。
大学を中退しプロになり、所属するヨネクラジムの米倉健司会長から「150年に一度の天才」と褒められて有頂天にならずにいられたのは、いま思うと駄馬と呼んで鍛えてくれた海藤先生の教育のおかげですね。……(続きは本誌をご覧ください)
本記事の内容 ~全10ページ~
◇世界チャンピオンを育てた三位一体の力
◇本当に強くなるのは「素直な負けず嫌い」
◇世の中には四種類の人がいる
◇人間の魂を動かすもの
◇油断大敵ならぬ不満大敵
◇「最強の脳」はこうしてつくられる
◇感謝・使命感は最も高次元なエネルギー
◇会って感謝を伝えることの意味
◇「怒りを敵と思え」
◇人生の試練は神様からのプレゼント
プロフィール
西田文郎
にしだ・ふみお――昭和24年東京都生まれ。40年代から科学的なメンタルトレーニングの研究をはじめ、「SBTスーパーブレイントレーニング」を構築。55年サンリ創業。経営者やビジネスマン、トップアスリートの能力開発指導に携わる。著書に『№1理論』『天運の法則』(共に現代書林)『強運の法則』(日本経営合理化協会)など多数。
大橋秀行
おおはし・ひでゆき――昭和40年神奈川県生まれ。高校時代にアマチュアの全日本タイトルを獲得。大学時代、ロサンゼルス五輪の代表選考試合に決勝で敗れ、プロに転向。アマ通算44勝(27KO)3敗。60年プロデビュー。その後世界タイトルに2度挑戦するも敗退。平成2年3度目の挑戦で世界チャンピオンに。6年引退。プロ戦績は24戦19勝(12KO)5敗。同年大橋ボクシングジムを開設。これまで輩出した世界チャンピオンは最多タイとなる5人に及ぶ。
編集後記
メンタルトレーニングを通して数々のアスリートやチームを勝利へと導いてきたサンリ会長の西田文郎さん、井上尚弥選手ら5人の世界王者を輩出してきた大橋ボクシングジム会長の大橋秀行さん。興味深いのは、お互いがそれぞれの歩みの中で感謝の心の大切さに辿り着き、感謝の力で仕事や人生の壁を乗り越えてこられたことです。実践に裏打ちされたお二人の体験談は説得力に満ちています。

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