1 月号ピックアップ記事 /エッセイ
安藤百福 時代を切り拓いたその信念に学ぶ 筒井之隆(安藤百福発明記念館横浜(カップヌードルミュージアム横浜)前館長)

48歳で世界初の即席麺「チキンラーメン」を、61歳の時に世界初のカップ麺「カップヌードル」を生み出した日清食品創業者・安藤百福氏。47歳で無一文になった氏はいかにして再起し、20世紀を代表する発明を成し遂げたのか。氏の側近として20年以上行動を共にしてきた筒井之隆氏に、安藤氏の波瀾万丈の人生、時代を切り拓いた信念について語っていただいた。
【写真=筒井氏が書き留めていたノートには、安藤氏の教えが凝縮されている】

発明は閃きから。閃きは執念から。執念なきものに発明はない
安藤百福(あんどう・ももふく)
©日清食品ホールディングス
明治43年台湾生まれ。大正13年高等小学校を卒業後、祖父の経営する織物業を手伝う。昭和9年立命館大学専門学部経済科修了。23年中交総社(現・日清食品)創業。33年世界初の即席麺「チキンラーメン」を発明、日清食品に商号変更。46年世界初のカップ麺「カップヌードル」を発明。平成14年勲二等旭日重光章受章。19年96歳で逝去。著書に『魔法のラーメン発明物語 私の履歴書』(日本経済新聞社)『食欲礼賛』(PHP研究所)など。

子供のような好奇心を原動力に時代を切り拓いた安藤さんは、96年の人生を戯れた人、まさに人生の達人だと思います
筒井之隆
安藤百福発明記念館横浜(カップヌードルミュージアム横浜)前館長
私が「チキンラーメン」「カップヌードル」の発明者として知られる安藤百福さんと出逢ったのは、読売新聞社に勤めていた38歳の時です。安藤さんが全国の郷土料理を探訪する連載を開始することになり、私が取材に同行して記事を書く機会に恵まれました。
安藤さんは〝世界の食を変えた男〟との異名を取る日本を代表する経営者のお一人ですが、決して威張らず、ユーモアに富み、一記者である私とも懇意にしてくださいました。約3年間にわたって安藤さんと共に全国各地を渡り歩くうちに、その人柄に惹かれていったのです。
安藤さんもまた、私の記事を気に入ってくださったのでしょう。連載が終わる頃には「君みたいな人がいると便利だから」と、入社を勧められました。便利という言葉には少々引っ掛かりましたが、創業者から直々にお声掛けいただけることはサラリーマン冥利に尽きると思い1985年、41歳の時に日清食品に入社しました。
入社以来、秘書室長や広報部長として安藤さんが亡くなるまでの22年間傍に仕え、その謦咳に接してきました。私は安藤さんの話を聞きながら心に響いた言葉や口癖などをノートにメモする習慣がありました。今回の取材を機に改めて読み返してみると、真っ先に目に飛び込んできたのは、折に触れて口にされていた「仕事を戯れ化せよ」という言葉です。
我を忘れて夢中に働くための最上の方法は……(続きは本誌にて)
~本記事の内容~(全5ページ)
◇〝世界の食を変えた男〟の謦咳に接して
◇周辺を見渡すと事業のヒントはいくらでも見つかった
◇発明は閃きから 執念なきものに発明はない
◇立派な仕事とは新しい事業構造を組み立てること
◇かくして世界初のカップ麺は誕生した
◇人生に遅すぎることはない
プロフィール
筒井之隆
つつい・ゆきたか――昭和19年大阪府生まれ。42年同志社大学卒業後、読売新聞大阪本社入社。60年日清食品入社。秘書室長、広報部長、宣伝部長、マーケティング部長、常務取締役を歴任。平成23年安藤百福発明記念館横浜(カップヌードルミュージアム横浜)館長就任。令和3年退任。著書に『転んでもただでは起きるな! 定本・安藤百福』『鎌倉ジャズ物語―ピアニスト松谷穣が生きた進駐軍クラブと歌謡曲の時代』(いずれも中央公論新社)など。
編集後記
日清食品創業者で世界初の即席麺を発明した安藤百福。日本を代表する経営者に、20年以上仕えた筒井之隆さんの敬慕に満ちた語りに感じ入るばかりでした。「人生に遅すぎることはない」をはじめ、挑戦によって時代を切り拓いた先人の実感のこもった言葉に勇気づけられます。

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