一生挑戦 一生勉強
~現場一筋60年、トヨタ技能系から初の副社長に抜擢された〝おやじ〟の生き方~
河合 満(トヨタ自動車エグゼクティブフェロー)

販売台数で5年連続世界一に輝くトヨタ自動車。前期売上高48兆円、経常利益6兆円を記録し、言わずと知れた日本のトップ企業である。そのトヨタのものづくりを60年にわたり支えてきたのが河合満氏だ。中学卒業後にトヨタ技能者養成所に入り、18歳で入社して以来今日まで現場一筋に歩んできた。同社初となる技能系出身で部長職に就き、技監・専務・副社長を歴任し、いまも朝6時出社で後進の育成に邁進しているという。現場の叩き上げとして、いかに創意くふうを積み重ね、改善魂を培ってきたのか。「拓く進む」の典型ともいえる河合氏の生き方に学ぶ。

きょうのベストは明日のベストとは限らない。徹底的にムダをなくし、付加価値を上げる。よりよい改善・改革を続けていく道に完成形はないんです

河合 満
トヨタ自動車エグゼクティブフェロー

――河合さんの名刺には「おやじ」と書かれていますね。

〈河合〉
当社ではものづくりの責任を負う現場の組長や工長のことを「おやじ」と呼ぶんです。僕は中学を卒業してトヨタ技能者養成所(現・トヨタ工業学園)に入り、1966年18歳で入社して以来今日に至るまで60年、ずっと現場一筋でやってきました。

2021年に豊田章男会長から「エグゼクティブフェロー」という役職をいただきましたが、僕には「おやじ」のほうがしっくりくる(笑)。

ものづくりって無形なものを有形にしていくから本当に面白い。鉄の棒を真っ赤に焼いて型に入れて打つ。単なるこれだけのことなんだけど、何が面白いのかと言ったら、型だって材料だってどんどん変わっていく。そうするといろいろな工法が出てきて技術も上がって、製品が進化していく。その度に課題が出てきて、それに挑戦するわけ。常に変化を追い求め、挑戦し、達成するのが楽しい。

60年も会社におって、いまも僕は鍛造ハウスと呼ばれる鍛造部の事務所で仕事をしているんですけど、「おやじ、こんなことがありました。なぜでしょうか?」って。いまだに分からないことがいっぱい起きる。朝から「よし、これをきょう中にやろう」と夢中になるわけよ。時間も忘れて。そういう毎日を過ごしていたら、もうこんな歳になっちゃった。この1月で78歳になります。

――気づいたら60年経ち、78歳を迎える年になっていたと。

〈河合〉
常に目的を持って挑戦すると楽しくてやりがいがあるから、時間も早く過ぎるんでしょうね。……(続きは本誌をご覧ください)

本記事の内容 ~全7ページ~
◇トヨタの〝おやじ〟が60年欠かさない習慣
◇3K職場の鍛造部に骨を埋める覚悟
◇鈴村さんの叱責と張さんのフォロー
◇創意くふうで作業時間を十分の一以下に改善
◇固辞した副社長昇進を引き受けた理由
◇きょうのベストは明日のベストとは限らない

プロフィール

河合 満

かわい・みつる――昭和23年愛知県生まれ。38年中学校卒業後、トヨタ技能者養成所(現・トヨタ工業学園)入学。41年トヨタ自動車入社。平成4年本社工場鍛造部工長、17年同部長。25年技監。27年同社技能系初の専務役員に就任。29年副社長。令和3年1月よりExecutive Fellow(おやじ)。


編集後記

世界に冠たる一流企業のトヨタ自動車で、中卒の技能系出身から初めて副社長に抜擢された河合満さん、77歳。現在はエグゼクティブフェローという立場ながら、社内で〝おやじ〟と呼ばれ、皆に慕われています。11月13日、愛知県豊田市にある本社にて取材は行われました。「僕の人生は一生挑戦だし一生勉強」。2時間にわたり仕事の流儀を語られる河合さんの輝きに満ちた瞳が印象的でした。

2025年12月1日 発行/ 1 月号

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