自立自尊の国、日本へ拓き進め! 稲村公望(元日本郵便副会長) 田母神俊雄(第29代航空幕僚長)

かつて世界2位を誇ったGDP(国内総生産)はいまや中国、ドイツに抜かれるなど、様々な内憂外患に直面し、その活力を失いつつある日本。どうすればわが国は自立自尊した豊かな強い国として甦ることができるのだろうか。憂国の士である元日本郵便副会長・稲村公望氏と第29代航空幕僚長・田母神俊雄氏の提言から、日本の明るい未来を拓く道筋を探る。

日本文明を破壊に導きかねない過度な株主資本主義、グローバルゼーションへの盲目的追従と外国への属国化に対して声を大にして拒否し、〝自立自尊の日本〟を追求していかなくてなりません

稲村公望
元日本郵便副会長

〈稲村〉 
最初の出逢いはいつだったか覚えていませんが、田母神さんとは随分長い付き合いですね。

〈田母神〉 
稲村さんが沖縄郵政管理事務所の所長をされていた1997年からですよ。その頃、私は当時の佐藤守空将のナンバー2(副官)、南西航空混成団司令部幕僚長として沖縄に赴任して、稲村さんとご縁をいただいたんです。

当時から、稲村さんはそれ行けドンドンの人で(笑)、初対面からとてもよく気が合いましたね。

〈稲村〉 
いや、私は本来気が弱い人間なんです(笑)。それに田母神さんは北の福島県生まれの軍人で、私は南の奄美・徳之島(鹿児島県)生まれの役人ですから、気が合うようで、そうでもない(笑)。長く関係を続けるには、むしろそのほうがいいのかもしれません。

私は常々、男同士の関係というのは、「淡き水の如し」が一番よいと思っていましてね。田母神さんとは、あちらこちらでお会いしていますが、そこまで深い関係にはならなかったし、こうして二人で話をする機会もいままであまりありませんでした。ですから、きょうはどのような対談になるのか、とても楽しみにしていました。

安易な欧米の追従はやめ、日本の歴史と伝統文化、先人たちの価値観にいま一度立ち戻り、取り戻していく。
それこそが、誇りと自信に溢れた自主独立の国、格差のない幸せな日本を拓いていく道だと信じています

田母神俊雄
第29代航空幕僚長

〈田母神〉 
稲村さんと接していていつも感じるのは、やはり祖国・日本、故郷への深い愛情ですよ。何をしても、何を話しても、愛国の情が迸っているのが稲村さん。

例えば、郵政省の幹部でありながら、小泉政権が行った郵政民営化に対して断固反対を貫いたでしょう。これもよほど信念がなければできることではありません。

〈稲村〉 
その頃務めていた日本郵政公社常務理事や日本郵便副会長の職も、表向きは任期による退任でしたが、本当は郵政民営化反対を理由にクビになったんですよ。

今年(2025年)5月に、参政党の神谷宗幣さんが参議院議員の財政金融委員会で郵政民営化について質問をしたことで、郵政民営化後、日本郵政の持っていた資産約360兆円のうち、約137兆円が減損したことが明らかになりました。日本郵政の資産である郵便貯金や簡易保険は、そもそも国民が預けた資金です。それが約137兆円も失われてしまったというのに、日本のメディアは、全く報じませんでした。

〈田母神〉 
その事実が国民に知らされないのも、国会で検証されないのも全くおかしなことですよ。

もともと郵政が国民から集めた資金は、「財政投融資」という素晴らしい制度のもと、低い金利で地方の道路や橋、鉄道、学校の体育館など長期的な視野に立った日本のインフラ整備、国民生活の向上のために使われていました。

ところが、民営化されれば、とにかく儲けを出さなくてはいけませんから、例えば、金利の高い海外の投資ファンドに預けて運用するということになるわけです。日本国民が預けた資産が日本人のためではなく、海外の投資ファンドの利益のために使われる、これほどばかげたことはありません。……(続きは本誌をご覧ください)

本記事の内容 ~全9ページ~
◇男同士の交わりは淡き水の如し
◇郵政民営化で日本国民が失ったもの
◇安易な移民政策は、社会の混乱と衰退を招く
◇アメリカによる日本経済弱体化政策
◇軍事の自立が日本の自立への道
◇日本経済復活へいまなすべきこと
◇正しい歴史観が祖国への誇りに繋がる
◇対等に付き合える真の親米を目指せ
◇平等で幸福な国、日本の未来を拓く

プロフィール

稲村公望

いなむら・こうぼう――昭和22年奄美・徳之島生まれ。47年東京大学法学部政治学科卒業、同年郵政省入省。米国フレッチャー法律外交大学院修了。55年在タイ日本国大使館一等書記官。58年郵政省復帰。沖縄郵政管理事務所所長、総務省政策統括官(情報通信担当)などを歴任。平成15年日本郵政公社発足と同時に常務理事就任。「郵政民営化」に断固反対。24年新会社「日本郵便株式会社」副会長就任。26年日本郵便株式会社常任顧問を辞任。「月刊日本」客員編集委員。岡崎研究所特別研究員。令和元年春の叙勲で瑞宝中綬章受章。著書に『続々 黒潮文明論』(彩流社)など多数。

田母神俊雄

たもがみ・としお――昭和23年福島県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊入隊。航空幕僚監部装備部長、統合幕僚学校長、航空総隊司令官を経て、平成19年第29代航空幕僚長に就任。20年退官。現在は危機管理、政治、国際情勢分析の専門家として、講演、著述活動を行う。著書に『大東亜戦争を知らない日本人へ』(ワニブックス)『国家の本音』(徳間書店)『愛国者』(青林堂)『戦争の常識・非常識 戦争をしたがる文民、したくない軍人』(ビジネス社)など多数。


編集後記

高市早苗政権が誕生するなど明るい兆しが出てきている一方、国内外で難題が山積し、国家衰退への道を辿りつつある現在の日本。激動する世界をいかに生き抜き、強く豊かな国を築いていけばよいのか。志を同じくする憂国の士、元日本郵便副会長の稲村公望さんと第29代航空幕僚長の田母神俊雄さんに、日本復活への具体的な処方箋、日本人として持つべき気概を示していただきました。

2025年12月1日 発行/ 1 月号

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