10 月号ピックアップ記事 /対談
終わりなき旅路をゆく——出逢いと挑戦の軌跡 川島文夫(PEEK-A-BOO代表) 三國清三(ソシエテミクニ代表)

「ハサミ一つで世界を変えた男」と称されたヴィダル・サスーンの下で研鑽を積み、喜寿を迎えるいまなおサロンに立つ川島文夫氏。フランス料理の巨匠・三國清三氏もまた、数々の師との邂逅を糧に、独創的な料理で日本のフランス料理界を牽引し続けている。美容師と料理人、それぞれの道を極めてきたお二人は、いかなる出逢いによって自己を磨き高めてきたのか。35年以上にわたり親交を深める両氏に、出逢いと挑戦の足跡、仕事・人生の流儀について語り合っていただいた。

不器用って財産なんですよ。
才能なんて10%あればいい。
最後に勝負を分けるのは情熱でしょう
川島文夫
PEEK-A-BOO代表
〈三國〉
僕は今年71歳になりましたけど、お世辞抜きで川島先生を目指しているんです。先生は喜寿を迎えるいまも現役バリバリ。2週間に1度先生の姿を見て、「ああ、僕も頑張らなきゃ」と思うわけです。心から尊敬しています。
〈川島〉
おかげさまで僕が代表を務めるヘアサロン「PEEK-A-BOO」は今年創業48年を迎え、東京に8店舗、330名のスタッフを擁するまでになりました。でも、まだまだ未熟です。
この年になると、行く先々で「いつまでやるんですか」と聞かれるけど、余計なお世話ですよ。僕は引退興行なんてやる気はありません。サロンワークこそ自分自身の原点なんです。
いまも週4日はサロンに立っています。一日15人から20人ほどのお客様を担当しますが、午前中に10人担当して体のキレが増し、午後にさらに10人やる。週の残り3日はといえば、講習会で日本全国、時には世界各地を回って後進に技術を伝えています。
日々欠かさない習慣といえば、50年近くずっと自転車通勤です。雨でも台風でもお構いなしに表参道の街を駆け抜ける。自転車に乗っていると、気軽に寄り道して違う景色を楽しめるでしょう。それが気分転換になるし、インスピレーションにも繋がっています。
〈三國〉
健康にもいいですしね。
〈川島〉
その通り。そうして必ず8時半には出勤し、一日のスケジュールや出張の予定を欠かさずチェックするようにしています。
僕はスタッフの顔を見るのが好きなんです。「ちゃんとやっているかな」「早く成長してほしい」とか。現場で働くスタッフが笑顔じゃないとお客様を笑顔にはできません。スタッフをどうやってエンジョイさせるか。そこからスタートするといいと思います。
技術は見様見真似で身につきますが、ハートは教えないと覚えないんです。

幼い頃、親父と漁に出た時によく言われました。
「大波が来たら逃げるな。船の真っ正面からぶつかっていけ」
逃げようとして波を横腹に受ければ船は沈む。でも真っ正面から向かっていけば、波は被っても必ず乗り越えられる
三國清三
ソシエテミクニ代表
〈川島〉
この9月から新しいお店を開くそうですね。
〈三國〉
ええ。1985年のオープンからオーナーシェフを務めてきた四ツ谷の「オテル・ドゥ・ミクニ」を2022年末に閉店し、同じ場所にカウンター8席の料理店「三國」をオープンします。
コンセプトは、ずばり「スポンタネ」です。スポンタネとはフランス語で「ありのまま」という意味で、僕が20代の頃に師事した、〝厨房のモーツァルト〟との異名を取るフレディ・ジラルデさんが得意とする即興料理を指します。
アシスタントは一人か二人入れますが、料理は僕一人でつくります。メニューなどは一切なく、その日僕の目利きで仕入れた食材を前に、「グリルにするか、蒸すか」「単品かコースか」など、お客様と相談しながら決めていく。全く新しいスタイルのレストランです。
〈川島〉
この年齢でゼロから出直すのは並大抵の覚悟じゃできないよ。
〈三國〉
完成したものは壊さなければ次の展開がありませんから。
それに僕が料理人になって最初に描いた志は、自分一人で1から10までつくって、お客様に提供したいということでした。
僕自身もいつ最後になるか分からない。他のことは考えず、ただ食材と向き合って料理をつくりたい。やりたかったことをやり残すべきではないと決心して、一から始めることにしたんです。……(続きは本誌をご覧ください)
本記事の内容 ~全10ページ(約14,000字)~
◇35年以上にわたり親交を深めてきた道友
◇すべての人を平等に綺麗にしたい
◇8席の即興料理店「三國」に懸ける思い
◇世界に負けるな 自分に負けるな
◇人の嫌がる雑用が道を拓く
◇運命を変えた〝料理人の神様〟との出逢い
◇〝厨房のモーツァルト〟から学んだこと
◇「ハサミ一つで世界を変えた男」との邂逅
◇ヘアデザインは偶然ではなくテクニックで成り立つ
◇どんな大波でも真っ直ぐ突っ込めば沈まない
◇人間が休む時は死ぬ時
◇いい美容師である前にいい人間でなければならない

取材前、三國氏の髪を整える川島氏
プロフィール
川島文夫
かわしま・ふみお――昭和23年東京都生まれ。高山美容専門学校卒業。カナダの美容室勤務を経て、46年ロンドンの「ヴィダル・サスーン」に参加。48年東洋人初となるアーティスティック・ディレクターに就任。美容史に残るヘアスタイル「BOX BOB」を発表。52年「PEEK-A-BOO 川島文夫美容室」を表参道に開店。現在もサロン勤務を行いながら、日本全国・世界各地を行脚して技術指導に励む。著書に『プロフェッショナルの極意』(髪書房)がある。
三國清三
みくに・きよみ――昭和29年北海道生まれ。15歳で料理人を志し、札幌グランドホテル、帝国ホテルにて修業後、49年駐スイス日本大使館料理長に就任。ジラルデ、トロワグロ、シャペルなど世界的な巨匠の下で修業を重ね、60年東京・四ツ谷に「オテル・ドゥ・ミクニ」開店。平成19年厚生労働省より卓越技能賞「現代の名工」受賞。27年仏レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエ受章。令和4年「オテル・ドゥ・ミクニ」閉店。7年黄綬褒章受章。9月、四ツ谷に「三國」開業予定。著書に『三流シェフ』(幻冬舎)など多数。
編集後記
美容師の川島文夫さんと料理人の三國清三さんの対談は8月8日に都内ホテルで行われました。お二人は35年以上の親交があり、肝胆相照らす仲であることが会話や表情からも伝わってきます。共通しているのは、日本の美容界とフランス料理界をそれぞれ牽引してきたパイオニアとしての矜持、そして一つひとつの出逢いを原動力に絶えず挑戦を重ねてこられたバイタリティー。生涯現役でさらなる高みを目指す姿勢に心を鼓舞されます。

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