8 月号ピックアップ記事 /インタビュー
5,000人のがん患者から教えられたこと 清水 研(がん研究会有明病院腫瘍精神科部長)

いまや国民の二人に一人が罹患するといわれるがん。医療の進歩は著しいが、依然として恐ろしい病であることに変わりはないだろう。がん専門の精神科医として、これまで約5,000人のがん患者やその家族と向き合ってきたという清水研氏は、不安や絶望に沈む人々にどのように寄り添ってきたのだろうか。そして臨床を通じて掴んだ人生の心得とは──。

これまでたくさんの患者さんとの関わりを通じて、人間には耐えがたい絶望を乗り越える力が備わっていることを実感しています
清水 研
がん研究会有明病院腫瘍精神科部長
──清水さんは、がん専門の精神科医として、これまでたくさんの患者さんやそのご家族と向き合ってこられたそうですね。
〈清水〉
はい。がんと心を専門とする精神腫瘍医として、患者さんとそのご家族の心のケアに携わってきました。2003年、31歳の時に国立がんセンター(現・国立がん研究センター)の精神腫瘍科でこの仕事を始めて、いまはがん研究会有明病院で腫瘍精神科部長を務めています。毎年200人から250人の方と対話していますので、約5,000人の方々と向き合ってきたことになりますね。
がんという病気は、強く死を意識させ、将来への見通しを根底から揺るがす性質があります。そういう「人生の困難」に直面された方々のお役に立ちたい一心でこの仕事に取り組んできました。
──大変デリケートなお仕事ですが、患者さんと向き合う際に、どんなことを心懸けておられますか。
〈清水〉
まずは、患者さんがいまどんなことで苦しんでいらっしゃるのか、心の奥の細かいひだまできちんと理解しようとすること。これが基本中の基本になりますね。
例えば、がんが進行して辛いといっても、100人の患者さんがいれば100通りの辛さがあります。食べる楽しみを失うことが嫌だという人もいれば、幼い我が子を残して逝きたくない、仕事を辞めなければならないのが無念だ等々、いろんな葛藤があるので、そこを丁寧に聞き出します。
これには3つの効果がありましてね。まず、自分の気持ちを他人に分かってもらえること。それが心が癒やされる一番の基本原則なんです。……(続きは本誌にて)
~本記事の内容~(全4ページ)
◇がん患者の心のケアに取り組み続けて
◇絶望に沈む患者といかに向き合うか
◇「親父はこれからも家族のヒーローだ」
◇折れない心を身につけるには
◇人間には絶望を乗り越える力が備わっている
プロフィール
清水 研
しみず・けん――昭和46年生まれ。金沢大学卒業後、内科研修、一般精神科研修を経て、平成15年より国立がんセンター東病院精神腫瘍科レジデント。以降一貫してがん医療に携わり、対話した患者・家族は約5000人に及ぶ。令和2年より現職。日本総合病院精神医学会専門医・指導医。日本精神神経学会専門医・指導医。著書に『もしも一年後、この世にいないとしたら』(文響社)『絶望をどう生きるか』(幻冬舎)『不安を味方にして生きる』(NHK出版)など。
編集後記
がん研究会有明病院腫瘍精神科部長の清水研さんは、がん専門の精神科医として、これまで約5,000人のがん患者やその家族と向き合ってきました。そのお話は不安や絶望に沈む人たちにとって大きな力となっています。

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