水野南北『脩身録』が教えるもの 岡本彰夫(元春日大社権宮司)

手相、人相、家相……人類は科学が未発達の太古から、経験を蓄積した相学を発展させてきた。少食により運が開けるとする〝節食開運説〟で知られる江戸時代の観相家・水野南北の『脩身録』には日本相学の粋が詰まっていると、大和の地で1250年の時を刻む春日大社で権宮司を長く務めた岡本彰夫氏は言う。食物も情報も溢れている現代日本に、『脩身録』が投げかけるものとは。同書を実に40年、座右に置く岡本氏の語りに耳を傾けたい。

相の上では絶対に幸せになれない人もある。しかし、相を徳が上回れば、運命は開けていくことを、この本は教えています

岡本彰夫
元春日大社権宮司

時は江戸後期、類稀な観察眼による人相の研究を書にして送り出し、一世を風靡した観相家がいました。

水野南北先生。食を慎めば運命が開ける、という〝節食開運説〟でつとに知られています。

確かに、南北先生が食の大切さを強調したことは間違いありません。しかし、食はあくまで彼が説いた「南北相法」の一部であり、そこには運命を開いていくための様々な知恵があります。

それが凝縮された書物が『南北相法極意・相法脩身録』(以下『脩身録』)です。私はこの書物を40年、自分なりに愛読し、座右の書としてきました。

なぜ神職の私がこの本と出逢ったのか。考えると、幼い頃の思い出が浮かんできます。

昭和30年代のこと、私は早くに父と生き別れ、母と祖母と3人で、奈良の田舎に育ちました。母は働きに出たため、祖母が父親代わりとなり、膝下で育んでくれたのでした。

この祖母が、少し変わった日課を持っていました。夏場、悪くなったごはんや、料理で出た野菜の切れ端をざるに取っておく。数日にいっぺん、少し離れた農家の鶏小屋へ私の手を引いてそれを持っていき、鶏たちに与えるのです。

幼心に、なぜこんなことをするのか疑問に思って尋ねてみると、祖母は即座に答えました
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~本記事の内容~(全4ページ)
◇目に見えない世界、〝冥加〟を大事にする
◇札つきの非行少年が観相に目覚める
◇相は活物――運命は日々の心がけで変わる
◇神様が持たせてくれた弁当箱
◇悪因を解き、福有に至る道
◇すべては我が身、我が家から始まる

プロフィール

岡本彰夫

おかもと・あきお――昭和29年奈良県生まれ。52年國學院大学卒業後、春日大社に奉職し、数々の古儀・神事を復興。平成13年より27年まで権宮司。同年より奈良県立大学客員教授。宇賀志屋文庫庫長。奉職中から人材育成のための私塾「こころ塾」を主宰し、全国約300人が講話に耳を傾ける。著書に『天が教えてくれた幸せの見つけ方』(幻冬舎文庫)など多数。


編集後記

幸福になる人は〝陰徳〟を積んでいる、といいます。では、その陰徳とは何か? 奈良県春日大社に38年奉職し、水野南北の『脩身録』を座右書としてきた岡本彰夫さんの語りは軽妙洒脱でした。人や物、天地に対しても慎みを持って生きることが、運命を好転させる秘訣であることを教えられます。

2025年7月1日 発行/ 8 月号

特集 日用心法

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