8 月号ピックアップ記事 /エッセイ
中江藤樹に学ぶ人生の心得 栢木寛照(信州善光寺本坊大歓進貫主)

近江聖人と称えられる江戸期の儒者・中江藤樹。その残した言葉には、私たちが日常生活を送る上で大切な心得も多い。同じ滋賀県に生まれ、僧侶になって以降も藤樹の教えを指針としてきた信州善光寺本坊大勧進貫主・栢木寛照師に、仏教者から見た藤樹の教えを紐解いていただいた。
【写真=国の史跡にも指定されている中江藤樹が開いた藤樹書院 ©公益財団法人藤樹書院HP】

何をするにも自らの利は3割に留め、7割は相手が喜ぶ生き方を心掛けていく。
そうすれば自他共に幸せになり、それは藤樹先生が求めた人としての生き方にも通じると思うのです
栢木寛照
信州善光寺本坊大歓進貫主
私は22歳で出家して天台宗僧侶となり、縁あって2022年から信州善光寺の大勧進貫主を務めさせていただいています。
改めて振り返ると、藤樹先生の教えは心の深いところで私自身の生き方の指針となってきたように思います。ことあるごとに『翁問答』や『鑑草』などを紐解きながら、その教えが仏教の教えと共通する部分が多いことに驚くことも度々でした。
例えば、藤樹先生は「五事を正す」という教えを残されています。五事とは貌、言、視、聴、思の5つであり、穏やかな顔つき、優しい言葉、温かい眼差し、人の声に耳を傾けること、思いやりのある真心を、日々の生活の中で心掛けるよう村人たちに説かれました。
この教えは、仏教が説く「無財の七施」に通じるものがあります。たとえお金がなくてもできる7つの施しのことで、具体的には眼施(温かい眼差し)、和顔施(優しい笑顔)、言辞施(優しい言葉)、身施(重たい荷物を持ってあげるなど体を使ってできる奉仕)、心施(優しい思いやり)、床座施(席を譲る)、房舎施(雨風をしのぐ場所を与える)を指します。
……(続きは本誌にて)
~本記事の内容~(全4ページ)
◇孝の実践者・中江藤樹
◇近江聖人と称えられる理由
◇優しさと厳しさを兼ね備えた人物
◇主軸を失った時、人や社会は狂い始める
プロフィール
栢木寛照
かやき・かんしょう――昭和21年滋賀県生まれ。一般企業を経て43年比叡山にて出家。平成27年善光寺大勧進副住職、令和4年瀧口宥誠前貫主の死去に伴い貫主に就任。比叡山麓三宝莚住職、比叡山延暦寺一山慈光院住職を兼ねる。公益社団法人三宝莚国際交流協会理事長、北マリアナ連邦名誉市民。テレビ・ラジオを通しての説法は広く知られる。著書に『親が育てば子も育つ』(徳間文庫)など。
編集後記
近江聖人と称えられる中江藤樹。今回、その生き方や教えを紐解いてくださったのは名刹・信州善光寺のトップである栢木寛照さんです。藤樹と同郷であり、幼少期から多くの影響を受けてこられたといいます。仏教者の視点で捉える藤樹の教えに興味は尽きません。

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