逸話に見る安岡正篤師 蒋介石と台湾
ご存知のように賀屋(興宣)さんも安岡さんも、台湾の蒋介石や張群と親しかった。 お二人とも刎頸の交わりを蒋介石や張群としとったようです。
日本が終戦当時、蒋介石に助けてもらったということで、その恩を忘れてはいけないということでした。 にわかに中国になびいて、台湾に見向きもしないようなやり方ではダメだ、と安岡先生はいつもいっておられた。 そういう点では節を曲げない人だった。
張群という人はまだ生きており、蒋介石とは同僚というか、パートナーでした。 敗戦の時、日本を分割することを反対したり、賠償金をとらなかった。 仮りに分割されていたとしたら、日本もドイツや朝鮮のようになってしまったでしょうね。 その上で、三百万だか四百万の兵隊を日本へ無事に送り帰してくれた。 こうした蒋介石の決断に日本国民として感謝しなくてはいけない。 ともかくも安岡先生の魅力は、時の権力に屈せず、正しいことを貫く。 憂国の日本の将来に対して心配した最後の国士だった。
電気興業会長・萩原憲三(『致知』1984年3月号より)