なぜ日本人は初日の出で太陽を拝むのか

皆様は初日の出を拝んだことがありますか? そもそも、なぜ日本人は太陽を拝むのでしょうか。その理由について、東洋思想家の境野勝悟氏が高校生に向けて行った講演の中で解き明かしていますのでご紹介いたします。※本記事は致知出版社刊『日本のこころの教育』〈境野勝悟・著〉から一部抜粋・編集したものです

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100年前の日本人は毎日朝日を拝んでいた

<壇上から会場へ下りて>

みなさんは、正月元日にどこかへ太陽を拝みに行きますか? 君は?

――行きます。

太陽を拝みに行く人はまだいるかな?
きみは?

——行かない。

じゃあね、あなたは行かなくても、お父さんとか、お母さんとか、お姉さんとか、近所の人たちが初日の出を拝みに行くっていうのはわかるだろ。それは認めてもらえるよな。

――はい。

それでね、実は日本人は70年前、100年前は毎日朝日を拝んでいたんです。ほとんどの人が毎朝太陽を拝んだんです。いまは元日だけですね。 

<会場から壇上へ上がって……>

わたくしは大磯というところに住んでおりますが、大磯は海のはたです。で、わたくしは若いころ、時々自転車に乗って海岸まで走り、朝日を見に行ったことがあるんです。

秋などは5時半ぐらいに行きますと、まだ太陽が昇っていない、その薄暗い海岸を90歳ぐらいの老紳士方が、東の空に太陽が出ると、パッと直立するんです。そして、帽子を取って太陽さんに深くお辞儀をするんです。それでまた歩き出します。

このようにして、毎朝、自分の生命の元である太陽さんのめぐみに感謝をしてから、今日一日の生活をはじめたのですね。

この間、駿河台大学でこのお話をしたら、講演の後、PTAの会長さんが、「そういえば、私のおじいさんは、毎朝畑に出て、太陽を拝んでいたな」と懐かしそうに話してくれましたよ。

ラフカディオ・ハーンの心を動かした日本人の太陽信仰

みんなも知っているでしょう。アメリカの雑誌記者のラフカディオ・ハーンという人が、世界のいろいろな国の民族学の調査をするために、日本にも来たんです。

そしてかれは、日本という国の原点を調べるために出雲(島根県)の松江に行きました。出雲の国は日本が起こったところですね。そして、松江中学校の英語の先生になって生活を始めました。

松江では武家の屋敷を借りて暮らしましたが、ある日の朝方、まだ太陽が昇る前に、自分の家の塀の先で、大勢の人がガヤガヤガヤガヤ言っている。なんだろうと思ってひょっと垣根の外を覗いてみたら、村の人が川堀でうがいをしたり、顔を洗ったりしているんですね。

一体この人たちは何をしているのかと思って見ていたら、山から太陽が昇ったとたんに、みんな太陽に向かって、「きょうも一日お願いします」と言ってパチパチと手を打ってお祈りをしていた。

これを見てラフカディオ・ハーンは「世界にこんなすばらしい国民はいない。私はここの国民になる」と言って、小泉八雲という名前で日本に帰化するんです。そして自分のお嬢さんも、日本人以外はもらわないということで、節子さんという日本人の女性と結婚して、お子さんをもうけているんですね。

太陽のめぐみに対する感謝が日本の由来

ハーンの随筆に、日本の女性の微笑について書いたものがあります。日本の女性の微笑は世界中で一番美しいというんです。どんなつらいことがあっても、日本の女性は常に美しい笑顔を浮かべている、というようなことが書いてあるんですね。

ラフカディオ・ハーンが、日本がすばらしいと言ったのは、日本人が太陽のめぐみを大事にするからだったのです。太陽からのめぐみに感謝して生きるという心のバックボーンを持っている日本人に、すっかり心を奪われたということですね。

とにかく、わたくしたちの生命の一番目の原因として、わたくしたちの先祖が大事にしたのは太陽だったということ、これはみんな、頭のどこかに置いておいてください。

もちろん、太陽を大切にし、太陽に感謝して生活した人は、日本の古代人だけではありませんね。古代のエジプトでも、古代のインカでも、インドでも、インドネシアなどでも、太陽を大切にして、太陽に感謝をささげて生活をしています。(中略)

太陽の運行と人間の生命を結び付けて、太陽を崇拝した国は、日本のほかにもたくさんあります。ただし、太陽が人間の生命の根源のエネルギーであることを、「日の本」、つまり「日本」という国名にまでしたのは、わたくしたちの国だったということは、日本人としてどうかお忘れになりませんように……。


(本記事は致知出版社刊『日本のこころの教育』〈境野勝悟・著〉から一部抜粋・編集したものです)

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◇境野勝悟(さかいの・かつのり)
昭和7年横浜生まれ。早稲田大学教育学部卒。私立学校で18年間教鞭をとった後、東洋思想家として活躍。著書に『日本のこころの教育』『老荘思想に学ぶ人間学』『禅の思想に学ぶ人間学』など多数。(いずれも致知出版社)。

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