「能楽修業に終わりなし」——能楽界最年少の人間国宝が語る、一道を極めていく心得〈宝生欣哉〉

ワキ方下掛宝生流(しもがかりほうしょうりゅう)十三世宗家として、600年以上続く能楽の歴史と伝統を守り、次世代に継承している宝生欣哉氏。2023年には、親子三世代、能楽界最年少で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。能楽界を支える氏に、「名人」と謳われた先代・宝生閑師への思いを交え、家元を継承していく上での覚悟を伺いました。
(本記事は月刊『致知』2026年7月号 特集「続けてこそ道」から一部抜粋・編集したものです)

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自分はまだまだ 能楽の道に終わりなし

――宝生さんは、下掛宝生流能楽師(ワキ方)として、2023年に56歳の若さで重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。祖父・弥一師、父・閑師に続く三世代、さらに能楽界最年少での認定だと伺っています。

〈宝生〉
他の流儀も含めて、素晴らしい先生方、先輩方はたくさんいらっしゃいますから、「まさか自分が」と本当に驚きました。仲のいい能楽師からも、「おまえが認定されるとは思わなかった」と言われましたが(笑)、一番驚いているのは自分だよと。なぜ私が選ばれたのか、いまも全く分かりません。

――先代方も宝生さんの活躍を喜ばれているのではないですか。

〈宝生〉
喜んでくれているとは思いますけれども、生きていれば、きっと「(人間国宝認定は)まだ早い!」と言ったでしょうね。特に2016年に亡くなった父と比べれば、自分はまだまだです。追いつくことさえできていません。

――先代の芸にはまだまだ及ばないと。いまはどのような心境で舞台に向き合っておられますか。

〈宝生〉
父の亡き後、下掛宝生流家元を継承した時もそうでしたが、舞台に立つ上で何か変化があったということはありません。むしろ、そうでないとだめだと思います。どんな立場になっても、流儀を代表して舞台に立つ以上は、自分に与えられた役をこれまで通りしっかり勤める、ただそれだけです。

ただ、「三代目が家を潰す」と言われるように、私の代で下掛宝生流を潰すわけにはいかないという思いは改めて強くしています。


~本記事の内容~(全4ページ)
◇自分はまだまだ 能楽の道に終わりなし
◇下掛宝生流の芸を次世代に継承する
◇教えてもらうのではなく、自分で掴み取っていく
◇学びと成長の機会はあらゆる場所にある
◇父からもらった唯一の「ありがとう」
◇素直な心が道を究める力になる

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◇宝生欣哉(ほうしょう・きんや)
昭和42年東京都生まれ。幼い頃から祖父・弥一師、父・閑師に師事。8歳で『猩々乱(しょうじょうみだれ)』で初舞台。25歳で『道成寺』を披く。海外公演にも多数参加。平成12年芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。28年下掛宝生流13世宗家を継承。令和5年親子三世代、能楽界最年少で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定。

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