2026年07月10日
~本記事は月刊誌『致知』2026年8月号 特集「時務を識る者は俊傑に在り」に掲載のトップインタビュー(かくして日本発の新薬は誕生した)の取材手記です~
世界中のアトピー性皮膚炎患者を救う
アトピー性皮膚炎の患者さんは日本に数百万人、世界全体では2億3000万人以上いるとされています。それだけ数多くの方が苦しい生活を強いられている中で、日本発の2種類の画期的な新薬が世界中の人々を救っていることをご存じでしょうか。
2020年1月に承認された、炎症を引き起こす物質の働きを直接ブロックし、痒みや赤みを改善する非ステロイド性の塗り薬「デルゴシチニブ(コレクチム軟膏)」と、2022年8月に承認された、ステロイド外用薬や抗アレルギー薬など既存の薬では十分な効果が得られなかった重度の痒みを抑える注射薬「ネモリズマブ(ミチーガ)」です。
新たな治療薬の開発は簡単な道のりではありませんでした。従来のステロイド性治療薬には副作用があり、数多くの研究者たちが創薬を試みるも、悉く失敗する冬の時代が長く続いたといいます。
そんな困難な研究開発に並々ならぬ執念と創意を注いできたのが、京都大学大学院医学研究科皮膚科学教授・椛島健治さん、56歳。
なぜ世界に先駆けて金字塔を打ち立てることができたのか。これまでの道のりを辿りつつ、その原点や転機、思考と行動の習慣、独創的なアイデアを生み出す秘訣、自身を突き動かす使命感に迫りました。
人間学を学ぶ月刊誌『致知』2026年8月号特集「時務を識る者は俊傑に在り」に、椛島さんのトップインタビュー記事が掲載されています。タイトルは「かくして日本発の新薬は誕生した~アトピー性皮膚炎治療薬の研究開発に懸けた執念と創意~」。
山中伸弥さんとは京大のマラソン仲間
今回、椛島さんを取材することができたのは、これまで創刊48年の歴史の積み重ねがあったればこそ、だとつくづく感じます。
椛島さんのご著書を拝読すると、帯に「山中伸弥氏絶賛」とありました。iPS細胞を発見したことでノーベル賞を受賞された山中さんとは、同じ京大のマラソン仲間だとも書かれていました。
山中さんはこれまで何度も誌面にご登場いただいているのみならず、『致知』の愛読者でもあり、創刊40周年記念式典にて、トヨタ自動車の社長や会長を歴任された張富士夫さんと共に基調講演を賜りました。その講演の冒頭、山中さんは次のようにおっしゃっています。
本日は素晴らしい雑誌である『致知』の創刊40周年、誠におめでとうございます。藤尾社長をはじめ、関係者の皆様、読者の皆様に心よりお祝い申し上げます。私自身も毎号『致知』の出版を待ちわびている読者の一人であります
山中さんとのご縁もあって、椛島さんにご快諾賜れたのではないかと思います。
人生は幾つになっても勉強
取材当日、京都大学医学部附属病院内の教授室に伺うと、椛島さんは笑顔で私たちを出迎えてくださいました。和気藹々とした雰囲気の中、時にユーモアを交え、時に真剣な表情で、1時間にわたってこちらの質問に応じながら、熱く語ってくださいました。溌溂颯爽とした立ち居振る舞い、輝きに満ちた瞳、そして謙虚で飾らないお人柄が実に印象的でした。
取材の内容を凝縮して誌面7ページにまとめました。主な見出しは下記の通りです。
◇皮膚医学の謎をすべて解明したい一心で
◇臨床と研究の二刀流を可能にする時間管理術
◇医師を志した原点と両親から受けた影響
◇留学が転機となり米国の病院で腕を磨く
◇「働かなくてはならぬ」恩師・成宮先生の教え
◇1000回以上の失敗を経て辿り着いた日本発の新薬
◇教科書の常識を覆すことで画期的な発見に至った
◇置かれた場所で花を咲かせ どんな逆境も楽しむ
◇人生で一番大事なもの「運 鈍 根」の三条件
約1万字の記事の中に、一冊の書籍になるほどの内容がギュッと凝縮されています。
椛島さんの取材を通して感動したことは数多くあり、すべては語り尽くせませんが、まず嬉しかったのは、椛島さんご自身も、『致知』を購読してくださっていたということです。
僕は寝る前の30分から1時間くらい読書をします。読む分野はいろいろですね。自然科学の本が一番多いんですけど、人物伝とか結構好きなんですよ。特に尊敬しているのは稲盛和夫さん。その稲盛さんが『致知』を推薦されているのを日経新聞で見て申し込んだのだと思います。結局、人生は幾つになっても勉強じゃないですか。教授になると、周りは僕より若い人ばっかりになってくるんですよね。そういう状況の中で、『致知』を通していろんな立派な人たちがいることを知って、本当に多くのことを勉強させてもらいました
編集者冥利に尽きる思いであり、謙虚・素直に学び続けるその姿勢に感銘を受けました。
臨床と研究の二刀流を可能にする時間管理術
さらに驚いたのは、示唆に富む「椛島流の時間管理術」です。
椛島さんは30年近くにわたり臨床と研究の二足の草鞋を履いています。この世界で臨床と研究の両方をやっている人は数少なく、大変ではあるものの、「どちらも経験することで相乗効果を発揮できる」と実感しているといいます。
平日のうち1.5日は臨床で、外来診察と病棟回診を行う。残りの3.5日のうち、1日半は教授職や副医学研究科長として大学院の教育や関連病院の人事などに関する会議があり、研究に充てられるのは2日ほど。
多忙な日々の中、どのように時間管理をされているのか。興味津々で伺うと、「僕にとってゴールデンタイムは朝です」と即答されました。
夏は5時台に起床し、6時頃には走って出勤。家から大学まで片道6キロ、余裕のある時は比叡山のほうまで上がっていくので10キロ以上をランニングし、シャワーを浴びて身支度を調えるそうです。
そこから9時までは誰にも邪魔されない時間なので、論文を読んだり原稿を書いたり、知的作業にひたすら打ち込むんです。9時からは会議や外来など決まった仕事が次々に入ってきまして、午後のちょっと疲れた時間にメールの確認と返信をします。朝にメールチェックをすると切りがなくなってしまいますからね。朝の冴えている時間にできるだけ知的作業を持ってきて、徐々にルーティン作業にシフトしていくように時間管理を徹底しています。週末も予定がない時は大学でずっと仕事に没頭していますね
椛島さんはこういう生活を30年近くずっと続けています。「人生は習慣の織物」とよく言われますが、一流プロは日々欠かさない習慣を持っていることを再認識しました。
新薬開発の成功に至るまでの歩み、そこに懸ける執念と創意など、具体的なエピソードや教えは本誌インタビューに凝縮されていますので、ぜひお読みいただきたいと思います。最後に一つ、最も心に響いた椛島さんの名言を紹介します。
与えられた環境の中で何を学び、どう次に繋げるか。環境に制約があっても、そこでしか学べないことを見出す。そうすると必ずチャンスが訪れるんです。「置かれた場所で花を咲かせる生き方」が大切ではないでしょうか。
椛島さんが体験や学びを通して掴んだ人生と仕事を好転させる「心身の習慣」「成功の法則」「珠玉の金言」には、私たちの日常生活に生かせるヒントがちりばめられています。ノーベル賞候補と称される一流研究者が語る人間学談義に興味は尽きません。
◎各界一流プロフェッショナルの体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。人間力を高め、学び続ける習慣をお届けします。※動機詳細は「③HP・WEB chichiを見て」を選択ください










