【編集長取材手記】昨日の不可能を、今日可能にする——ユーグレナ・出雲充が語ったイノベーションを生み出す秘訣

~本記事は月刊『致知』2025年5月号 特集「すれどもうすろがず」掲載特別講話の取材手記です~

「磨すれども磷がず」そのものといえる歩み

「人と地球を健康にする」をパーパスに掲げ、ヘルスケアやバイオ燃料などを事業の柱に展開する㈱ユーグレナ。

出雲充さんが同社を創業したのは2005年、25歳の時です。500回に及ぶ失敗と挑戦を乗り越え、世界初のミドリムシ(学名:ユーグレナ)食用屋外大量培養に成功して以来、大学発ベンチャー企業として東証一部上場を果たし、20年にわたりイノベーションを起こし続けてきました。

前期(2024年12月期決算)の売上高は476億円で過去最高を更新。創業のきっかけとなった世界最貧国の一つバングラデシュでの栄養補助食品の配布「ユーグレナGENKIプログラム」、バイオディーゼル燃料やバイオジェット燃料「サステオ」の開発・供給など、持続可能な社会の実現に向けて飽くなき挑戦を続けています。

月刊『致知』最新号(2025年5月号)特集「磨(ま)すれども磷(うすろ)がず」に出雲さんの記事が掲載されています。タイトルは「僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。~昨日の不可能を、今日可能にする~」。

「磨すれども磷がず」とは、約2500年にわたって読み継がれてきた東洋古典『論語』に出てくる言葉。本当に堅い物はどんなに磨いてもすり減らない。転じて、精神が堅固な人物はどんな境遇にも屈することはない、という意味です。

出雲さんの創業から今日までのドラマチックな歩みは、まさに「磨すれども磷がず」そのものといえるでしょう。

これからの時代に求められるリーダーのあり方

経営者と経営候補者を対象に、2011年より毎年開催している弊社主催のセミナー「徳望を磨く人間学塾」。昨年12月の会でゲスト講師を務めていただいたのが出雲さんです。

実はもともと別の方が予定されていましたが、事情により登壇できなくなるという不測の事態に見舞われました。タイトなスケジュールの中、ピンポイントでの依頼だったにも拘らず、「日頃、愛読している『致知』さんからの頼みなら喜んで」とご快諾くださった経緯がありました。

そうして迎えた当日、出雲さんが90分間、「真使命」「若者」「イノベーション」の3つをテーマに語られた講演の内容は圧巻でした。これはぜひ参加者約100名だけに留まらず、すべての読者に知っていただきたい、特集テーマ「磨すれども磷がず」にぴったりのお話であるとの思いから、今回特別に掲載するに至ったのです。

90分間の講演内容を凝縮して誌面10ページ、約14,000字の記事にまとめました。主な見出しは下記の通りです。

◇伝えたい3つのテーマ
◇大学1年生の夏休みにバングラデシュへ
◇ムハマド・ユヌス氏との衝撃的な出逢い
◇世界初となるミドリムシの食用屋外大量培養に成功
◇2年間で500社から断られ続けた先に
◇絶対に無理だと言われた東証一部上場を果たす
◇ミドリムシが空を飛ぶ!? バイオ燃料への挑戦
◇2025年に日本が迎える大転換とは
◇生き残る組織に共通する3つの特徴
◇イノベーションに欠かせない2つの掛け算
◇夢を追い続ける人が持つたった2つの要素
◇我が人生信条「昨日の不可能を、今日可能にする」

日本を代表する若手ベンチャー経営者であり、世界経済フォーラムのヤンググローバルリーダーにも選出された出雲さんのこれまでの歩みとは――。いま日本及び世界にどのような変化が起こっているのか――。日本にとって大きな分岐点である2025年を迎え、これからの時代、いかに経営していけばよいのか――。リーダーのあり方を学びます。

とりわけ心に響く5つの言葉

出雲さんのお話の中でとりわけ心に響く言葉を5つに絞って紹介します。

一つ目の言葉。

イノベーションを生み出す時に一番大事なもの、それは「一番にこだわる」ことです。
競争している限り一番じゃないと意味がない。二番以下はこの世に存在していないのと一緒なんです

これは一見非情に思える厳しい言葉ですが、本質を突いており、発奮を促される言葉です。日本で一番大きい都道府県、長い川、高い山、あるいは世界で一番大きい国、長い川、高い山などは答えられても、それが二番となれば、知っている人は極端に少なくなります。

二つ目の言葉。

競争社会で生き残るために「お金持ち、特別な才能、いい家柄」は何の関係もありません。
適切な科学と繰り返し努力する力、この二つの掛け算ですべての人がイノベーションを起こすことができると私は確信しています

出雲さん自身、多摩ニュータウンという団地にて父親はサラリーマン、母親は専業主婦という一般的な中流家庭で育ちました。ミドリムシの研究をするために必要なお金や特別な才能やいい家柄やコネなど何もない中で、ミドリムシで日本一と言っていただけるベンチャー企業をつくることができた実感から出てきた言葉です。

三つ目の言葉。

1回目で成功する確率が1%だとすれば、2回目の成功率は1.99%となり、これを積み重ねていくと、459回目に成功率は99%に達します

これには衝撃を受けました。イノベーションを起こそうと思えば、1回目でいきなり成功することはまずなく、99%は失敗します。2回やって2回とも失敗する確率は0.99の2乗ですから、0.9801。これを1から引いて成功率は1.99%です。5回繰り返すと4.9%になり、100回やったら64%、459回目に数字が最初と逆転し、成功率は99%に達するといいます。出雲さんはこれを実際に手で計算したから覚えているそうです。

四つ目の言葉。

メンター(心の底から尊敬できる先生や先輩)とアンカー(夢を忘れずにいられる具体的な品物)、人はこの二つが揃っていれば、何回でも繰り返し努力することができます

出雲さんにとってのメンターは、グラミン銀行創設者のムハマド・ユヌス博士。ユヌス博士はバングラデシュの貧困層を対象にした無担保融資を行うグラミン銀行を創設し、これまで900万人もの貧しい農家を救い、2006年にノーベル平和賞を受賞された方です。

また、出雲さんにとってのアンカーは、大学1年次に生まれて初めて訪れた外国の地バングラデシュでお土産に買った1枚の青いTシャツだといいます。それにまつわる感動的なエピソードは本誌の記事をご覧ください。

五つ目の言葉。

私の座右の銘は「昨日の不可能を、今日可能にする」です。きょう困っている十億の人に栄養と持続可能な社会を届けたいという気持ちで毎日仕事に取り組ませていただいています

「昨日の不可能を、今日可能にする」素晴らしい言葉です。なぜこの言葉を座右の銘としているのか。この言葉に込められた意味や思いとは何か。これもまた、本誌の記事で紹介しています。

様々な分野で活躍する方々の「生きざま」を学ぶ

心に響く5つの言葉を取り上げましたが、他にも仕事や人生の糧となる数々の金言やエピソードに溢れています。

思い返せば、出雲さんとのご縁はいまから12年前、2013年5月号特集「知好楽」のインタビュー取材でお目にかかったのが始まりでした。以来、10年以上にわたり弊誌月刊『致知』をご愛読くださっています。

最後に、先日掲載誌をお届けするため㈱ユーグレナ本社に伺った際、出雲さんからいただいた貴重なメッセージを紹介します。

僕が長年愛読している月刊誌『致知』をおすすめしたいと思います。創刊は1978年と、47年の歴史があり、誌面では様々な分野で活躍する方々の体験談と「生きざま」が、対談やインタビューの形式で紹介されています。最新号(2025年5月号)には、「僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。」の講話録も掲載されていますので、ぜひ手に取ってみてください

出雲さんが壮絶な体験を通して掴まれた「イノベーションを生み出す秘訣」には、私たちの日常の仕事や人生に活かせるヒントが満載です。20年間に及ぶ経営人生の集大成として語り尽くした人間学談義、リーダーの本質論に興味は尽きません。


◇出雲 充(いずも・みつる)
昭和55年広島県生まれ。東京大学農学部卒業後、平成14年東京三菱(現・三菱UFJ)銀行入行。17年㈱ユーグレナを創業、代表取締役社長就任。同年12月に世界で初となる微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養に成功。24年東証マザーズ上場、26年東証一部上場。世界経済フォーラム(ダボス会議)ヤンググローバルリーダー、第1回日本ベンチャー大賞「内閣総理大臣賞」受賞。著書に『僕はミドリムシで世界を救うことに決めた。』(小学館新書)『サステナブルビジネス』(PHP研究所)など。

▼『致知』2025年5月号 特集「磨すれども磷がず」
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