「侍ジャパン」ヘッドコーチと「はやぶさ2」プロジェクトマネージャが語り合う、緊張や失敗との向き合い方<白井一幸×津田雄一>

2023年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で、侍ジャパンのヘッドコーチを務め、世界一に貢献した白井一幸氏(写真右)と、2021年に地球帰還を果たし、新たな旅に出た小惑星探査機「はやぶさ2」のプロジェクトマネージャとして、9つの世界初のミッションを達成へと導いた津田雄一氏(写真左)。分野は異なるものの、共に最高のチームをつくり上げ、偉業を成し遂げてきたお2人に、緊張やプレッシャー、失敗との向き合い方について語り合っていただいた一節をご紹介します。
(本記事は『致知』2025年3月号 対談「最高のチームをつくる要諦」より一部を抜粋・編集したものです)

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緊張やプレッシャー、失敗との向き合い方

<白井>
私のマインドも、どうやったらできるかしか考えないんですよ。

人間は失敗を責められると萎縮して挑戦しなくなってしまう。だから、選手には「なぜ失敗したの?」じゃなくて「じゃあ次どうする?」「何かできることある?」と声を掛ける。

そうすると失敗を恐れなくなって、皆のマインドがゴールに進んでいくんです。

<津田>
できることを探すのがすごく重要で、挑戦しないことが一番のリスクだと思います。

<白井>
できる方法を探すことにワクワクして、チャレンジを楽しめるのが成功するチームの共通点だと感じています。

<津田>
楽しむっていうのも大切ですよね。

我々は国のプロジェクトとしてやっている仕事ですから、当然真面目に取り組まなければいけませんが、「真面目=しかめっ面」ではダメで、その中でいかに楽しめるか、遊び倒すか。

<白井>
大事ですね。侍ジャパンも絶対に勝たなきゃいけないので、めちゃくちゃ緊張するし、プレッシャーもかかるわけですよ。

準決勝や決勝の時に、緊張している選手たちに伝えたのは、「世界中でこの緊張感を味わえるのは俺たちだけだぞ。こんな幸せなことはないよね。ワクワクするよね。この緊張を大いに味わっていこうぜ」と。

緊張している時に、「リラックスして行け」なんて言っても無理な話です。緊張やプレッシャーは排除しようとすると却って襲ってくるんです。しかし、受け入れると楽しくなる。そうすると緊張に対する捉え方が変わり、場の空気が変わるじゃないですか。

<津田>
緊張を嗜む。

そのためには、自分たちがいま直面している状況を俯瞰するとか客観視する要素が要りますよね。

振り返ると、私も「これは世界で初めてやろうとしていることなんだ。はやぶさ1でうまくいかなかったことを、遂にいま我々がやれる時が来た。その思いを大切にして楽しみましょう」とか、失敗したとしても、「これは世界初の失敗なんだ。起きたことにきちんと対処しさえすれば、何か得るものがあるはず。取るべきリスクはしっかり取ってやっていきましょう」とよく伝えていました。

<白井>
野球界でもよく、二軍は育成だから勝敗は関係ないと言って試合をするチームがあるんです。私はここが間違いだと思います。

あくまで絶対に勝ちたい、勝つためにどうするかと考えて全力を尽くす。練習も同じで、失敗したらやり直しはないという本気の練習を重ねる。

当然、緊張感やプレッシャーもかかってきます。そういう中で負けた場合には学ぶことがたくさんあるんですけど、最初から負けてもいいと思っていたら、得るものは何もないですよね。


↓ 対談内容はこちら!
◆侍ジャパンが掲げた目的と目標
◆いかにして全員がゴールを共有したのか
◆まるで芸術作品のようなはやぶさ2のチーム
◆「発案は個人、評価はチーム、責任はリーダー」
◆アイデアを湧き立たせるファシリテーションの秘訣
◆ヘッドコーチとして常に意識してきたこと
◆プロジェクトマネージャとしての最大の決断
◆緊張やプレッシャー、失敗との向き合い方
◆ターニングポイントを支えた本との出逢い
◆この道に生きると思い定めた人生の原点
◆日本一弱いチームと世界一強いチームの差
◆勝利や成功を掴む3つの条件

 ▼詳細・お申し込みはこちら


◇白井一幸(しらい・かずゆき)
昭和36年香川県生まれ。58年駒澤大学を卒業後、ドラフト1位で日本ハムファイターズ入団。平成3年自身最高打率3割1分1厘でリーグ3位、最高出塁率とカムバック賞を受賞した。9年日本ハムファイターズの球団職員となり、ニューヨーク・ヤンキースへコーチ留学。12年二軍総合コーチ、翌年二軍監督を経て、15年一軍ヘッドコーチに就任。令和5年のWBCで侍ジャパンヘッドコーチを務め、世界一に輝く。企業研修講師としても全国を飛び回る。著書に『侍ジャパンヘッドコーチの最強の組織をつくるすごい思考法』(アチーブメント出版)など多数。

◇津田雄一(つだ・ゆういち)
昭和50年広島県生まれ。平成15年東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。同年JAXA(宇宙航空研究開発機構)に入る。小惑星探査機「はやぶさ」の運用に関わると共に、ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」のサブプロジェクトマネージャを務め、世界初の宇宙太陽帆船技術実現に貢献。22年より小惑星探査機「はやぶさ2」プロジェクトエンジニアとして開発を主導し、27年プロジェクトマネージャに就任。世界初となる9つのミッションを達成に導く。著書に『はやぶさ2 最強ミッションの真実』(NHK出版新書)などがある。

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