【編集長取材手記】名将・栗山英樹と名僧・横田南嶺が語り合う「勝運を引き寄せるもの」

~本記事は月刊『致知』2024年8月号 特集「さらに前進」掲載の対談(さらに参ぜよ三十年)の取材手記です~

WBC優勝に導いた名将が師と仰ぐ人物

2023年3月に開催されたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で、3大会ぶり3度目となる世界一に輝いた侍ジャパン。日本中に歓喜の渦を巻き起こし、勇気と感動を与えてくれたことは記憶に新しいでしょう。

監督としてチームを率いた名将・栗山英樹さんは球界きっての読書家として有名ですが、書籍を通じて学び、尊敬して已まず、予てお会いしたかった人物がいました。

その人物とは臨済宗円覚寺派管長や花園大学総長を務める禅の名僧・横田南嶺さん。お寺の出身ではないにも拘らず僅か10歳にして仏道に生きることを決め、その頃から禅の書物を暗唱し、坐禅を組み、漢文や書道やお茶を習い、大学在学中に出家得度、幾多の修行を経て、2010年に45歳の若さで鎌倉の名刹・円覚寺の管長に就任した方です。

そんなお二人が初めて対面したのは、2023年7月のこと。WBC優勝後、栗山さんに取材依頼状をお送りし、対談相手の候補を何名かご提案したところ、栗山監督が「この方にぜひお目にかかりたい」と逆指名してこられたのが横田さんでした。

テレビをはじめ各方面から引っ張りだこで多忙を極めていた栗山さんが時間を捻出してくださったばかりか、わざわざ円覚寺まで足を運んで対談取材は行われました。

悲願達成までの舞台裏を振り返りつつ、その最大の勝因、今大会を通して得た学び、さらにはいかなる出逢いによって自己を磨いてきたか、指導者としての哲学を縦横に語り合っていただきました。

共に『致知』の愛読者であり、初対面ながらもすぐに意気投合、お互いに学びを求めて質問し合う姿が印象的でした。ちなみに、対談後は昼食を取り、管長自ら境内の国宝舎利殿や修行道場などを案内し、最後には坐禅の手ほどきも。栗山さんは終始感動を以って受け止めていました。

その内容は、人間学を学ぶ月刊誌『致知』2023年10月号(創刊45周年記念号)のトップ対談「世界の頂点をいかに掴んだか」として13ページにわたって掲載され、非常に大きな反響を呼びました。

あれから約1年、去る6月6日に都内ホテルで再び両者が相まみえ、2時間にわたってさらに深奥な人間学談義に花を咲かせました。

月刊『致知』最新号(2024年8月号特集「さらに前進」)に栗山さんと横田さんの2回目の対談記事が掲載されています。テーマは「さらに参ぜよ三十年」です。

「さらに参ぜよ三十年」とは禅の言葉で、具体的に三十年間という期間を示しているわけではなく、禅では一生涯のことを指す、といいます。この言葉通り、まさにお二人は一生求道。謙虚にして驕らず、もっと自分を磨き高めていこうと歩み続けているお姿に、大変感銘を受けました。

侍ジャパンが世界一を掴むことができた理由

栗山さんは今年から北海道日本ハムファイターズの最高責任者であるCBO(チーフ・ベースボール・オフィサー)に就任しています。

側近の広報担当マネジャーに伺ったところ、過密スケジュールのため、普段は栗山さんが2時間もの時間を確保することはまずない、とのこと。それだけこの対談を重要視してくださっていることを思うと、感謝が溢れて仕方ありません。

思い返せば、昨年9月22日に行われた月刊『致知』創刊45周年記念式典の際も、ギリギリまで別の予定を何とか調整して、会場のホテルニューオータニに駆けつけてくださり、乾杯のご発声をいただいたことは忘れられません。その時の栗山さんのスピーチをご紹介します。

「『致知』創刊四十五周年本当におめでとうございます。先般侍ジャパンは世界一を掴むことができました。これもすべては人間学、すべては人だと思い、前に進んだ結果だと思います。

一つ例を挙げると、選手たちに侍の魂を伝えるにはどうしたらよいのか、頭を悩ませました。ただ『致知』には、人を変えるのは片言隻句であり、そしてその魂は、命をかけて伝えれば必ず伝わると記されていました。ですから、侍の第一義を手紙に書いて選手たちに伝えさせていただきました。そうした選手たちの本当の思いが今回の世界一に繋がったと思います。ある意味、『致知』の勝利です!

これからも次代を担う若者のために、編集の皆さん、そして会社の皆さん、大変かと存じますが、頑張っていただきたいと思います。僕らもしっかりと応援し、学んでまいります。それでは、皆で45周年を祝い、乾杯させていただきます。ご唱和をお願いします。 乾杯!」

今回の対談でも、ご自身の人生を振り返って、こうおっしゃっています。

「選手時代、僕は本当にダメな人間でした。もちろん努力はしていました。監督という立場になった時に、ちょうどタイミングがよかったと思うんですけど、ある方が『致知』を贈呈してくださったんです。『致知』に出逢い、藤尾社長に出逢い、恩師と呼べる様々な先達に出逢い、そういう人たちの言動や考え方を取り入れて、いまの僕があります」

またある時には、

「私にとって『致知』は人として生きる上で絶対的に必要なものです。私もこれから学び続けますし、一人でも多くの人が学んでくれたらと思います。それが、日本にとっても大切なことだと考えます」

という有り難いメッセージを寄せていただきました。

人の心に焦点を当てる人間学を真摯に学ばれている栗山さんが監督としてチームを率いたからこそ、WBC世界一の偉業を成し遂げられたのだと痛感しました。

名将×名僧の人間学談義は学びと感動の宝庫

昨年7月、本誌の対談で初対面を果たした栗山さんと横田さん。その後もお二人の交流は続き、このたび2回目の対談が実現しました。

いま改めて振り返る「勝運を引き寄せるもの」、野球と禅に通底する道、家庭環境や両親の教え、選手時代・修行時代の忘れ難い思い出、人生における「信」の大事さ、大谷翔平はなぜ世界の大谷翔平になったのかなど、前回語り尽くせなかった話題で大いに盛り上がりました。

そこで語られた内容を凝縮して誌面12ページ、約17,000字の記事にまとめました。主な内容は下記の通りです。

◇WBC優勝後も自惚れなかった理由
「WBCで優勝して、たくさんの人に好評価をもらって感じたのは、○○○という思いでした。それは痛いほど感じました……」(栗山)

◇野球と禅に通底する無私・無我の道
「ああ、なるほど。○○○で野球の道と禅の道が通じてくるのかと。これは非常に大きな発見でございました……」(横田)

◇素晴らしい選手になるためには
「素晴らしい選手になるためには、よりよい○○にならなくてはいけない……」(栗山)

◇監督として一番信頼をなくすこと
「誰に対しても同じ○○が取れるかどうかが、組織のリーダーにとって大事だと思います……」(栗山)

◇運を引き寄せる時と運に見放される時の差
「どうしたら運を引き寄せられるかを徹底的に考える中で大事だと思うのは、やっぱり○○○することです……」(栗山)

◇世界一の勝運を呼んだもの
「WBC世界一の勝運を呼んだものをひと言で言えば○○ですね……」(栗山)

◇勝利の女神が微笑む人やチームの条件
「これは僕の感覚ですけど、自然と結果が出ている時は、○○○することが比較的多い……」(栗山)

◇勝つ空気を創り出すために実践していること
「僕が監督の時に気をつけていたのは○○です。これは斎藤佑樹に言われたんですよ。監督って○○○すごく意識してますよねって。よく見ているなと思いました……」(栗山)

◇栗山監督の人生を変えた言葉
「〝夢は正夢 歴史の華〟夢を正夢にするためには何が大切か。やはり○○と○○○は違います。この差じゃないでしょうか……」(栗山)

◇人格形成の原点にある両親の生き方
「修行時代を支えたのは母親の愛です。修行に出てしばらく経ってから、実家の近所のおばさんから〝あなたのお母さんは○○○〟と聞いた時に、〝これは一歩も引けない〟と思いましたね……」(横田)
「両親は僕が寝ていると思って喋っていたんでしょうけど、○○○の話をしていたんですよね。それが僕にとっては、管長の話と一緒で、〝俺、本当に頑張らなきゃ〟と思ったきっかけでした……」(栗山)

◇二軍選手の茶髪禁止に込めた思い
「時代に逆行していると批判を受けましたけど、やっぱり最低限のルールを守るべきだと。これは親父の○○○の影響が大きいんです……」(栗山)

◇30歳で一念発起 師匠に徹底して仕え切る
「10年修行して、9割くらいの時にパタリと進まなくなる。そこから数年間、もう一度管長の鞄持ちから料理、掃除、洗濯に至るまで徹底して仕え切りました。その時学んだのは、○○○ということです……」(横田)

◇「信ひとつ」で結ばれた師弟関係の極致
「先代管長が亡くなった時、もう長い間お仕えしてきて、いまさら涙も出ないと思っていたんですけど、やっぱり滂沱として涙が溢れるんですね。その時、ようやく遅まきながら○○○だと気がついたんです……」(横田)

◇選手を心の底から信じ切って送り出す
「その先の結果は別として、自分が本当にこの選手で行けると思って送り出しているかどうか。これがやっぱり勝っていく上ではすごく重要でした。○○が足りなかったり、○○○ができていなかったりすると信じ切れない……」(栗山)

◇自分を信じ切るために大切なこと
「栗山監督は以前、最後は自分を信じると言われていましたね。でもどうしたら自分を信じ切れますでしょうか。栗山監督の場合は○○○が根底にあるのでしょうね……」(横田)
「WBCの時も〝プレッシャーをどう乗り越えたんですか〟みたいなことをよく聞かれましたけど、○○○と思っていました……」(栗山)

◇大谷翔平はなぜ世界の大谷翔平になったのか
「もちろんご先祖様からの遺伝子がうまく組み重なって、あれだけの体格と能力が生まれているのは事実ですけど、僕が思っているのは○○○ということです……」(栗山)
「以前、栗山監督に見せてもらって驚いたのは大谷選手がバッティング練習をしている映像です。何に驚いたかというと、その○○ですよ。ああ、なるほど、○○○が違うんだと思いました……」(横田)

◇一生求道 死ぬまで修行
「私が感動したのは、この間栗山監督に〝夢は正夢で、大きな夢を叶えて、これからの夢は何ですか〟と聞いた時の答えです。北海道の栗の樹ファームで子供たちに野球を教えて幸せに生きる、というようなことを言うのかと思ったら豈はからんや、全く違う。○○○とおっしゃいましたよね」(横田)
「僕はいままで足りないものを何とか補ってずっと走り続けてきて、やっといまスタートラインに立ったという感覚なんですよ。○○○と思ってワクワクしています……」(栗山)

「野球と禅」「名将と名僧」――異色の組み合わせながら、そこに通底する人間学談義には仕事や人生を成功に導くヒントが凝縮されており、興味は尽きません。ぜひ本誌の対談記事をお読みください。


◇栗山英樹(くりやま・ひでき)
昭和36年東京都生まれ。59年東京学芸大学卒業後、ヤクルトスワローズに入団。平成元年ゴールデン・グラブ賞受賞。翌年現役を引退し野球解説者として活動。24年から北海道日本ハムファイターズ監督を務め、同年チームをリーグ優勝に導き、28年には日本一に導く。同年正力松太郎賞などを受賞。令和3年侍ジャパントップチーム監督に就任。5年3月第5回WBC優勝、3大会ぶり3度目の世界一に導く(同年5月退任)。6年北海道日本ハムファイターズの最高責任者であるチーフ・ベースボール・オフィサー(CBO)に就任。著書に『信じ切る力』(講談社)など多数。

◇横田南嶺(よこた・なんれい)
昭和39年和歌山県新宮市生まれ。62年筑波大学卒業。在学中に出家得度し、卒業と同時に京都建仁寺僧堂で修行。平成3年円覚寺僧堂で修行。11年円覚寺僧堂師家。22年臨済宗円覚寺派管長に就任。29年12月花園大学総長に就任。著書に『禅の名僧に学ぶ生き方の知恵』『人生を照らす禅の言葉』『禅が教える人生の大道』『十牛図に学ぶ』『臨済録に学ぶ』など多数。最新刊に『無門関に学ぶ』(いずれも致知出版社)

▼『致知』2024年8月号 特集「さらに前進」
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