【取材手記】Jリーガー輩出数日本一! 山田耕介監督が語る、前橋育英高校サッカー部の強さの秘訣

~本記事は月刊誌『致知』2026年5月号 特集「人を育てる」に掲載のインタビュー(「Never never never Give up——日本一へと導いた監督の流儀」)の取材手記です~

高校サッカー界屈指の名将

2009年度・2022年度の高校総体、2017年度・2024年度の高校サッカー選手権で頂点に立ち、高校サッカー界において4回の全国制覇を成し遂げてきた前橋育英高校男子サッカー部。日本代表で活躍した山口素弘選手や細貝萌選手をはじめ、これまで輩出したJリーガー数は130人を超え、日本一を誇ります。

44年前から同部の監督を務め、強豪校へと育て上げたのが山田耕介氏です。今年3月には、同じ群馬県のJ3クラブ・ザスパ群馬のゼネラルマネージャー(GM)に就任し、一躍脚光を浴びました。

荒れ放題の部室にリーゼント頭の部員がたむろしていた就任当時、その後の日本一までの軌跡は決して一路順風ではなかったといいますが、いかにして山坂を乗り越え道を切りひらいてきたのでしょうか。氏の苦節の日々から見えてくる、人財・組織づくりの要諦とは――。

月刊『致知』最新号(2026年5月号)特集「人を育てる」に山田さんの記事が掲載されています。テーマは「Never never never Give up」です。

山田耕介(やまだ・こうすけ)
昭和34年長崎県生まれ。52年島原商業高校サッカー部でインターハイ優勝。57年法政大学卒業後、前橋育英高校に赴任し、サッカー部監督に就任。平成29年度全国高校サッカー選手権で初優勝。令和8年ザスパ群馬のゼネラルマネージャーに就任。過去インターハイ優勝2回(平成21年、令和4年)、全国高校サッカー選手権優勝2回(平成29年度、令和6年度)を数える。著書に『前育主義』(学研プラス)がある。

人間力重視の指導哲学

寒風吹きすさびながらも、雲一つない青空に恵まれた2月初旬。取材は群馬県の前橋育英高校で行われました。

「遠路はるばる来ていただいてありがとうございます。散らかっていて申し訳ありませんが」。高校サッカー界を代表する名将への取材ということで、緊張して監督室に伺うも、山田監督は快く私たちを迎えてくださいました。取材中も終始明るく、一つひとつの質問に丁寧に答えてくださるお姿が印象的でした。

監督室には、前橋育英の歴代選手たちの奮闘や優勝時の華々しい写真が壁一面に展示。その景色から、山田監督が前橋育英高校サッカー部で44年間築き上げてきた歴史の重みをヒシヒシと感じました。

今回特集「人を育てる」を組むに当たり、なぜ山田監督を取り上げたのか。その答えは、「前橋育英高校サッカー部の強さの秘訣はどこにあるのでしょうか」という問いに対する山田監督の言葉に、すべて凝縮されています。

「それはやっぱり、人間力ですね」

山田監督はご著書『前育主義』(学研プラス)や他誌インタビュー記事の中でも、折に触れて「指導をする上で大切にしているのは、人間力」だと説かれています。この人間力重視の指導哲学を持つ山田監督に、人間学を学ぶ月刊誌として48年歩んできた弊誌でお話を伺いたい。そう思い至り、本号での登場に繋がったのです。

いつも選手に言うんです。「サッカーが上手? それがどうした」と。何より大事なのは腰から上、すなわち人間力ですよ。

私の考える人間力とは、胆力と包容力があり、自立の精神を持っていること。胆力とは芯の強さ、包容力はやさしさ、気づきの心です。

仲間が悩んでいることを察知し、いち早く声を掛けてあげられる人間に育ってほしい。そう願って人間力を伸ばす指導を心懸けてきたところに、前橋育英サッカー部の強さがあるのだと思います。

荒れ放題の部室、部員と真っ向勝負

山田監督は小学生からサッカーの道に進み、島原商業高校時代には九州勢初の日本一を達成。大学でもサッカーに打ち込み、卒業を間近に控えた頃、前橋育英の採用の話が突然舞い込んできました。前橋育英がどこにあるのかさえ知らなかったそうですが、教員としてサッカー部を指導できることに魅力を感じ1982年、前橋育英に赴任します。

ところが、就任初日に体育館裏にあった部室を訪ねると、リーゼント頭の部員たちがたむろし、煙草の吸い殻が山積みになっていました。

山田監督は当時を振り返り、次のように述懐されています。

挨拶をしても、鋭い目つきで睨みつけられたことを鮮明に覚えています。まさに「スクール・ウォーズ」。

「これは無理だ。国体が終われば長崎へ帰ろう」と、自分自身に繰り返し言い聞かせていました。

荒れ放題の部の実態に愕然とする山田監督。しかし、否が応でも部員と接していくうちに、その心境が変化がしていったといいます。

否が応でも接していくにつれ、根はいいやつらだと分かってきましてね。4人組で煙草を吸っていた部員に一人ずつ話を聞くと、全員が「他の3人は吸っていない」と答えるんです。

友達思いで弱い者いじめはしない彼らに愛着が湧き、共に日本一を目指したいと思うようになりました。

以降、山田監督は約30人の部員たちに真剣勝負を持ち掛けました。「俺に勝ったらお前たちの言うことを聞く」という条件で、グラウンド10周からドリブルの一対一、相撲、柔道に至るまで、部員たちに真正面からぶつかっていく。さらに、日本一のチームの力を実感してほしいと、就任1年目から日本一の強豪校に何度も電話を掛けて練習試合を申し込んでいきました。

端から見れば何をやっているんだと思われたでしょうが、私は真剣でした。最終的に勝負においてはハートのある選手が残り、チームの基盤が築かれていったんです。指導者としてどれだけ本気で選手に向き合っているか。その覚悟の深さが大切だと実感します。

大事なのは、指導者の覚悟の深さ――含蓄に富んだ教えです。

試行錯誤を重ね、荒れ放題の部室からチームの基盤を築いていった山田監督。その後全国大会の常連になった前橋育英は、いかにして4度の日本一を成し遂げる強豪校へと至ったのか。その全貌はぜひ本誌をお読みください。

最後に、山田監督の指導哲学が窺える金言をご紹介します。

「選手の総合力=(技術力+身体能力)×人間力」

いくら技術が優れていても人間力がゼロであれば、選手の総合力はゼロです。逆に人間力が高ければ、人間として立派な人格が形成され、自ずと総合力は上がっていく。人を育てる第一義は人間力であると私は信じています

 ↓ インタビュー内容はこちら!
◇Jリーガー輩出数日本一 強さの秘訣は人間力にあり
◇恩師・小嶺忠敏先生から学んだこと
◇指導者が本気で選手に向き合っているか
◇就任36年目で掴んだ初の栄光
◇選手の総合力=(技術力+身体能力)×人間力

『致知』2026年5月号 特集「人を育てる」ラインナップはこちら

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