橋本左内・『啓発録』が説く、志を立てる為の3要素

幕末の英傑・橋本左内が満14歳の時、一人前の大人になるために、どのような心掛けで日々を過ごすか、という覚悟や決意を綴った『啓発録』。本書『14歳からの「啓発録」』は、現代を生きる14歳に向け、自分の人生に対して自覚を促し、志を確立させるため、その内容を意訳した一冊です。本書の中から、「立志」についてのお話をご紹介します。

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立志──志を立てよ

「志」とは心の行くところ、自分の心の向かって行くところをいいます。

人間として生まれ、親や国を大切にする心が有るのならば、まず自分の身体を大切にし、武道、学問に励み立派な一廉の人物になるように心掛けることが大切です。

昔の聖賢君子や英雄豪傑のように、社会のために尽くし、天下国家の利益になるような人物になろうとまず心に固く決意することです。

世のために何の役にも立たずに一生を終えるような者には決してなってはならないと心に決め努力する、この心意気が「志」を抱くことのはじまりです。

また、「志」を立てるというのは、自分が何をしたいのかをはっきりと見定め、一度こうしたいと決心したならば真っ直ぐにその方向を見据え、初心を忘れないようその心を持ち続けて行くことが大切なことです。

この「志」が立つには次の3つの要素が考えられます。

第一は良書によって大いに学び、偉人賢人の生きざまに感化され自分もそのような人物になろうと思うこと。

第二は良き師、良き友から学ぶこと。

第三は自分自身が壁にぶつかったり、逆境に陥ったりした時に発憤して壁を乗り越えるために勇気をもって奮い立つことです。

このような時に人は「志」が心の奥底から湧き上がってくるものなのです。

日頃、何も考えずに呑気に暮らし、心がたるんで緊張感のない者にはとても「志」など立つものではありません。

志が定まっていない者は魂のない虫けらと同じで、いつまでたっても一人前の大人にはなれません。

しかし、一度志が立って目標が定まるとそれ以後は日々努力をすることによって成長していきます。

ちょうど芽の出かかった草木に肥料の効いた土壌を与えるのと同じようにぐんぐんと成長していきます。

昔から叡智あふれ素晴らしい人物と言われた人でも、決して目が四つあったとか口が二つあったというわけではありません。

皆その「大志」を抱き、その「大志」に向かって揺るぎない意思をもって突き進んだ結果として世に知れ渡り歴史に名を残す人物となったのです。

しかし、世の中の多くの人々は現状に甘んじて何もせず、つまらない一生を終えています。

これは「志」がなく、自分の人生と真正面に向き合っていないからです。

「自分の人生、こんなことで良いのか」と真剣に問うたならば無為に過ごせるはずがありません。

これで「志」の大小がその人の人生を決定する最大の要素であることが分かったと思います。

『14歳からの「啓発録」』
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