2023年01月08日
昭和の経営の神様・松下幸之助氏、平成の経営の神様・稲盛和夫。それぞれ一代で松下電器産業(現・パナソニック)、京セラやKDDIを日本を代表するグローバル企業に育て上げた二人に共通するものが多くあります。その二人の経営の神様に薫陶を受けた上甲晃さんと大田嘉仁さんに、松下幸之助氏と稲盛和夫氏の奇跡的な出逢いについて語っていただきました。経営、人生の極意が満載です。
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高い山を目指すには
〈上甲〉
私は稲盛さんとの出逢いもありましてね。稲盛さんには松下政経塾設立当初から評議員を務めていただいておりました。ある時、塾生との懇談会の席で稲盛さんに松下幸之助から教わったダム式経営の話をしていただきました。
京セラを創業して間もない二十代の頃、松下幸之助がダム式経営について語った講演会に参加された時のことです。ある参加者が、
「ダム式経営の重要性は分かりましたが、どうすればダムができるのでしょうか」
と質問すると、松下幸之助はじっと考えた後、
「一つ確かなことは、まずダム式経営をしようと願うことです」
と答えました。多くの人が「なんだ、そんなことか」と失笑する中、若き稲盛さんは体に電流が走るような衝撃を受けた、という有名な話です。
これを稲盛さんから直接聞いた時に、私は、ハッとしたんです。同じ話を聞いても、聞く側の姿勢によって受け止め方は全く変わる。これは人生においても同じで、求める心がない限りどんなにいい教えに出逢っても、出逢って出逢わずだなと。
稲盛さんは求める心が非常に強かったから松下幸之助の「まずは願うことですな」というひと言に痺れたのだと思います。
〈大田〉
やはり目指すものが違ったのでしょうね。ダム式経営の話を聞いて、「うちには無理だ」と思った中小企業の経営者には申し訳ないですが、求めるレベルがその程度だったということです。
稲盛さんは京セラがまだ社員数百名に達していなかった時から、「京都一、日本一、世界一のセラミックメーカーになるんだ」と目標を掲げていました。また、人生を山に譬えて、こういう話もされています。
低い山を目指すのであれば特に装備は不要でピクニック気分でいいけれど、高い山を目指そうと思ったらそれ相応の装備が不可欠。つまり、世界に冠たる企業を目指すならば、生半可な考え方ではだめで、それに見合った高い次元の企業哲学が必要だと。
〈上甲〉
松下幸之助も高い目標を掲げた人ですが、私は最近、松下幸之助の残した言葉にはすべて、本当はひと言、「志があれば」という前置きが隠れているのではと思っています。「〝志があれば〟困難はチャンスになる」と。この前置きを除いてしまうと、困難は困難のままではないかと思うのです。
(本記事は月刊『致知』2022年1月号 特集「人生、一誠に帰す」より一部を抜粋・編集したものです)
●この後も、お二人には「『本気』の姿勢は必ず伝わる」「経営者とサラリーマンの違い」「実体験から掴んだ言葉は説得力が違う」など、二人の経営の神様から学んだ人生、経営の極意を縦横に語り合っていただいています。詳細はこちら
◇上甲晃(じょうこう・あきら)
昭和16年大阪府生まれ。40年京都大学卒業と同時に、松下電器産業(現・パナソニック)入社。広報、電子レンジ販売などを担当し、56年松下政経塾に出向。理事・塾頭、常務理事・副塾長を歴任。平成8年松下電器産業を退職、志ネットワーク社を設立。翌年、青年塾を創設。著書に『志のみ持参』『松下幸之助に学んだ人生で大事なこと』など多数。最新刊に『人生の合い言葉』(いずれも致知出版社)がある。
◇大田嘉仁(おおた・よしひと) ◇追悼アーカイブ◇ 昨今、日本企業の行動が世界に及ぼす影響というものが、従来とちがって格段に大きくなってきました。日本の経営者の責任が、今日では地球大に大きくなっているのです。 ――稲盛和夫 ◎来年、仕事でも人生でも絶対に飛躍したいあなたへ――
昭和29年鹿児島県生まれ。53年立命館大学卒業後、京セラ入社。平成2年米国ジョージ・ワシントン大学ビジネススクール修了(MBA取得)。秘書室長、取締役執行役員常務などを経て、22年日本航空会長補佐専務執行役員に就任(25年退任)。27年京セラコミュニケーションシステム代表取締役会長に就任(29年顧問、30年退任)。現職は、MTG取締役会長、学校法人立命館評議員、鴻池運輸取締役、新日本科学顧問、日本産業推進機構特別顧問など。著書に『JALの奇跡』(致知出版社)がある。
稲盛和夫さんが月刊『致知』へ寄せてくださったメッセージ「致知出版社の前途を祝して」
平成4年(1992)年
このような環境のなかで正しい判断をしていくには、経営者自身の心を磨き、精神を高めるよう努力する以外に道はありません。人生の成功不成功のみならず、経営の成功不成功を決めるものも人の心です。
私は、京セラ創業直後から人の心が経営を決めることに気づき、それ以来、心をベースとした経営を実行してきました。経営者の日々の判断が、企業の性格を決定していきますし、経営者の判断が社員の心の動きを方向づけ、社員の心の集合が会社の雰囲気、社風を決めていきます。
このように過去の経営判断が積み重なって、現在の会社の状態ができあがっていくのです。そして、経営判断の最後のより所になるのは経営者自身の心であることは、経営者なら皆痛切に感じていることです。
我が国に有力な経営誌は数々ありますが、その中でも、人の心に焦点をあてた編集方針を貫いておられる『致知』は際だっています。日本経済の発展、時代の変化と共に、『致知』の存在はますます重要になるでしょう。創刊満14年を迎えられる貴誌の新生スタートを祝し、今後ますます発展されますよう祈念申し上げます。
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