2024年04月05日
民間初、製造物における国内認証機関として、企業の海外展開を支える株式会社コスモス・コーポレイション。三重県を拠点に、今年で設立から37年を数えます。代表取締役社長・濱口慶一氏に、創業からの歩みをはじめ、世界を渡り歩いてきた経験から、いま若い世代に伝えたいことについて語っていただきました。
民間初となる国内認証機関登録を実現
〈濱口〉
この300万円を半年以内に返せなかったら、潔く経営から手を引こう──。妻が積み立ててくれていた貯金を元手に、製造物の安全評価・認証を主業務とする当社を立ち上げたのは1987年、39歳の時でした。
製造物を海外で販売する際には、各国で定められた安全認証を取得する必要があります。しかし、当初は取得をサポートする専門家も解説書も皆無で、メーカーが海外展開を図る上で高いハードルになっていました。
私は京セラ勤務時代、設計開発に携わったレジスターの世界販売を通じてこのことを痛感。同社で認証業務を行っていた仲間がこれを専門的に行う会社を立ち上げた際、私も副 社長として参画し、毎週のように海外へ飛び認定担当者と折衝を重ねて経験を積み、独立を決断したのでした。
おかげさまで立ち上がりは順調で、妻が用立ててくれた300万円も無事に返すことができました。私が心懸けてきたことは、認証で困っているお客様のために取得のポイントを分かりやすくアドバイスすること、さらに認証取得に要する日数を大幅に削減したことで引き合いが急増。産業機械、ロボット、医療機器、計測器等々、世界に初めて出荷される製品の大半は当社で認証代行を手がけてきました。
さらに2021年には、民間企業として初めて国内認証機関(NCB=National Certif ication Body)に登録されました。
海外の機関に頼らずとも認証を行える環境を提供することで、企業の海外展開、日本経済の活性化にこれまで以上に貢献すべく尽力。現在年商約10億円を計上しています。
自分は何をもって世の中に生かされているのか
〈濱口〉
とはいえ、ここまで決して順調だったわけではありません。2009年には、事業の急拡大に社員の育成が追いつかず、認証取得のための検査に不備が生じて行政指導を受け、創業来初の赤字に転落しました。設備の新設に巨額の借り入れをした時期で、経営はたちまち窮地に陥りました。
一時は自ら命を絶とうとまで思い詰めましたが、第三銀行(現・三十三銀行)の谷川憲三頭取から全面支援をいただき立ち直ることができました。この人を裏切ってはならない。涙ながらの決意を胸に今日まで歩んでまいりました。
失意の時に支えになったのが、京セラ時代に毎月工場へ視察に来ていただいた稲盛和夫社長(当時)の言葉でした。
「自分が世の中に何をもって生かされているかを自覚し、それに応えていくことが大事だ」
これからは、規格戦争の時代に入るといいます。他国の定めた規格に対応するばかりでなく、日本発の規格を打ち出していく気概を持った若い技術者の輩出と、日本経済の活性化に当社の事業を通じて貢献してまいりたいと考えています。各国を飛び回って培った知見・経験が当社創業の原点となったことを踏まえ、「若者よ、世界を見よ!」と訴えていきたいのです。
そのためにも、当社が認証に関わる製品では絶対に問題を生じさせない覚悟と、国に奉仕する精神を大切に、事業にさらに邁進していく所存です。
(本記事は月刊『致知』2024年3月号掲載記事を抜粋したものです) ◎各界一流プロフェッショナルの珠玉の体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。あなたの人間力を高める、学び続ける習慣をお届けします。 たった3分で手続き完了、1年12冊の『致知』ご購読・詳細はこちら。
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