日本の自立のために、国のためにあなたは何ができるかを問うてほしい——櫻井よしこ×中西輝政

日本が抱える内憂外患は深刻さを増す一方で、混迷窮まれりの感は否めません。そのような時代を生きる私たちにとって大切なことは何か。保守論壇の重鎮である櫻井よしこさんと中西輝政さんが口を揃えるのは、世界最古を誇る我が国の歴史を学び、志を立て、未来への希望を抱いて前進する大切さです。

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思い起こすべきケネディの言葉

<櫻井> 

自然再生エネルギーだけでは到底、全国民の電力を賄いきれないですし、原子力発電を安全に動かすことがエネルギー政策の根本でなければ、力強い経済は実現できない。にも拘らず、この問題に果敢に挑んでいく政治家は少数です。

こんなことを言ったら選挙に落ちるかもしれないという思いがあるのかもしれませんね。だからこそ、いま原子力発電を応援している政治家を言論人として支えていきたいと思います。

<中西> 

ある政党は「身を切る改革」と言っていますが、身を切るとは一体どういうことなのでしょうか。給料を少しカットするとかそんな話ではないはずです。やっぱり議席を懸ける、もっと言えば身命を懸けるということでしょう。ところが、このご時世に総理大臣も含めて特別公務員の給料を引き上げているわけですよね。

<櫻井> 

そうなんですよ。国民の納得はなかなか得られませんね。

<中西> 

「日々税金を納めていただいている国民の賃金をまず上げましょう。我われは最後でいいです」と言うべき立場の人が真っ先に上げている。しかも、支持率を気にしてか「物価高で国民が苦しんでいる現状を踏まえて、増額分を党所属議員から集めて公的機関に寄付します」と。あまりにも見え透いた薄っぺらな議論が罷り通ってしまっているんですね。

エネルギーも食料も少子化も財政も外交安全保障も全部含めて、これらの問題に対しては議席を懸ける、党の命運を懸ける、自らの身命を懸ける覚悟が必要ですよ。戦前の日本の政治家で立派だなと思う人は伊藤博文をはじめ、原敬、浜口雄幸、犬養毅、この四名は全員凶弾に斃(たお)れています。

そういう気骨ある政治家がいまの日本では絶滅危惧種になってしまったのかなと思います。でも政治家を志した以上、彼らが示した「政治家の本懐」に倣ってもらいたいですね。

<櫻井> 

リーダーというのは日本が自立した立派な国、民主主義の価値観において世界に誇ることができる国にしていくという大戦略をいつも頭に入れて、その中に個々の政策を置いて考えていかないといけませんね。中西先生はインテリジェンスも含めて、世界のあり方を俯瞰して論じておられる専門家ですが、そういう目からご覧になると、日本は自立している国なのか。どのように見えますか。

<中西> 

ええ、全く自立していないですね。安全保障をはじめとして国の根幹が依存の構造になってしまっています。日本人としての志や理想を失っている。明治維新の時の「五箇条の御誓文」じゃないですが、世界に知識を求めて世界の国と共に歩む。しかし同時にその根本には、いざとなると一国として立つ。国民一人ひとりがこの国をどうしていくのかを真剣に考える精神風土を取り戻さなければいけません。

私が子供だった昭和20~30年代、まだ高度成長前のテレビやクーラーのない時代、大阪の下町でしたが、夏の暑い夜なんか軒先に涼み台を出して団扇で扇いでいるんですよ。お隣さんやお向かいさんも出てきて、大人同士が雑談していると、そのうちに「いまの池田勇はや人と内閣はけしからん」とかいった政談が始まるわけです。

別に教育水準が高い町でもないし、インテリでもない。普通の職工さんたちが政治を滔々と論じ、真剣に国のあり方を考えていることが子供心に伝わってきました。

1961年にアメリカ大統領のジョン・F・ケネディが就任演説で述べた有名な言葉がありますね。

「国があなたのために何をしてくれるかを求めるのではなく、国のためにあなたは何ができるのかを問うてほしい」

これこそいまの日本人に必要不可欠な言葉であり、日本の政治家が勇気を持ってそれを語り続ければ、日本人が立ち直る大きなきっかけになると思います。

★本記事は『致知』2024年2月号「立志立国」掲載記事の一部を抜粋・編集したものです。

◎櫻井さんと中西さんの対談には、

・イスラエルとパレスチナ 争いの本質

・日本のメディアを覆う対米ルサンチマン

・短期の悲観、長期の楽観

・国際情勢を捉える上で大切な三つの視点

・米英関係に学ぶ 日本の生きる道筋

など、現在の複雑な国際情勢を紐解き、これからの日本の生きる道を探ります。全文は『致知』2月号「立志立国」をご覧ください。詳細はこちら 

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◇櫻井よしこ(さくらい・よしこ)

ベトナム生まれ。ハワイ州立大学歴史学部卒業後、「クリスチャン・サイエンス・モニター」紙東京支局勤務。日本テレビニュースキャスターなどを経て、現在はフリージャーナリスト。平成19年に国家基本問題研究所を設立し、理事長に就任。23年第26回正論大賞受賞。24年インターネット配信の「言論テレビ」創設、若い世代への情報発信に取り組む。著書多数。近刊に『異形の敵 中国』(新潮社)『安倍晋三が生きた日本史』(産経新聞出版)。

◇中西輝政(なかにし・てるまさ)

昭和22年大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。英国ケンブリッジ大学歴史学部大学院修了。京都大学助手、三重大学助教授、米国スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学教授を経て、京都大学大学院教授。平成24年退官。専攻は国際政治学、国際関係史、文明史。著書に『国民の覚悟』『賢国への道』(共に致知出版社)『大英帝国衰亡史』(PHP研究所)『アメリカ外交の魂』(文藝春秋)『帝国としての中国』(東洋経済新報社)など多数。近刊に『偽りの夜明けを超えて』(PHP研究所)。

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