2023年12月19日
◎各界一流プロフェッショナルの体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。人間力を高め、学び続ける習慣をお届けします。
〝日本一小さいクリニック〟阿部クリニック(山形市)を開業している精神科医・阿部憲史氏。学生時代、ラグビーの試合中に頸椎を骨折し、以来、車椅子生活を続けています。首から下の機能を失うというハンディにも挫けず、医師国家試験に合格。残された見る、聞く、話すという機能を最大限に生かして患者さんに向き合う日々です。多くの逆境を経験してきた氏が、体験談ではなく、生き方を通して人々に伝えたいメッセージとは──。
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若者たちの孤独にどう向き合うか
──多くの患者さんと接する中で、どのようなことを感じられますか。
〈阿部〉
私たちのクリニックには比較的若い患者さんが多く、鬱病や適応障碍が増えてきているように感じます。
会社や学校、あるいは友達関係のストレスによるものですが、たかだか20年、30年の人生の中でなぜ周囲と付き合えなくなったのか。診察ではそこを一緒に振り返っていくわけです。
クリニックに来る若者たちは総じて自分らしさがありません。
会社や学校で伸び伸びと自分を表現できず、いつも窮屈な気持ちでいる。そういう若者が診察を受けて、以前よりも自己表現できるようになっていく姿を見ることは私の大きな喜びです。
それに、若者たちは一見、SNSなどで繋がっているように見えても、実際には孤独なんです。ちゃんと相談できない、ちゃんと発言できない。
この「ちゃんと」ができる若者が少ないことが孤独を物語っています。私としては孤独を支えながら、就業、結婚、自立できるところまで導いてあげられたらと思っています。
──そういう若者たちに、ご自身の体験談を語られることは?
〈阿部〉
ああ、それだけはやめようと思っています。
私の話を聞いて「あんなに精神力の強い人にはなれない」と受け止めると、逆に心を塞いでしまう。勤務医時代に先輩の先生からも「おまえの体験はおまえだけのものだ。他人のものではない」とよく言われてきました。
私は医師として活動していますが、車椅子から降りたら四肢障碍の患者であり、周囲に誰もいなかったらきっと数日で息絶えてしまう。
「こんな弱い存在でも皆の力に支えられて仕事ができ、君とこうして真剣に向き合っているんだ」という正直な思いを吐露すると気持ちが通じ合い、相手に力が与えられるように感じています。
本記事では、四肢障碍を負いながらも、自分に残された見る、聞く、話すという機能を最大限に生かし、患者さんと向き合う阿部医師に、これまでの歩みや信条をお聞きしました。阿部氏の生き方には、与えられた運命にどう向き合うか、運命を背負って生きるとはどういうことか、深く考えさせられます。
◉『致知』12月号 特集「敬、怠に勝てば吉なり」◉
インタビュー〝「運命を背負い、最高の人生を模索する」〟
阿部憲史(阿部クリニック院長)
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◆目、耳、口の機能を精いっぱい使って
◆ラグビー中の事故と2年間の入院生活
◆医師国家試験合格、勤務医から開業医へ
◆若者たちの孤独にどう向き合うか
◆真っ直ぐにひたすらに
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◇阿部憲史(あべ・けんし)
昭和34年山形県生まれ。57年東北大学工学部卒業。平成3年山形大学医学部卒業。医学部生だった昭和59年、ラグビー試合中の事故で頸椎を脱臼骨折、四肢マヒとなり、車椅子生活となる。山形大学医学部附属病院で研修医として勤務後、同大学医学部精神神経科に入局。平成8年阿部クリニック開院、現在に至る。