「お金も複利、ご縁も複利」——東北トップクラスの賃貸管理戸数を誇る山一地所の〝創業の原点〟

仙台を拠点に、賃貸・不動産仲介・賃貸管理・相続・リノベーション・リフォーム業を営む「山一地所」は今年で設立から48年を数えます。同社はいかにして、地場企業としての賃貸管理戸数で東北トップクラスの実績を得るに至ったのでしょうか。代表取締役会長である渡部志朗氏にこれまでの歩みと今後の決意を語っていただきました。

親代わりに育ててくれた長兄夫婦より受けた薫陶

〈渡部〉
「嘘をつくな」「一所懸命働け」

今日まで80年生きてきた、私の人生を貫く背骨になっている言葉です。
 
1942年、福島県南相馬市に9人兄弟の末っ子として生まれた私は、生後2か月で母を亡くしました。父が出稼ぎに出ることになり、それを見かねた亡き母の兄が、まだ20歳にもならない自分の長女を我が家の長兄に嫁がせ、私たち幼い子供の面倒を見させました。その義姉がいつも私に言い聞かせ てくれたのがこの2つの言葉です。
 
長兄も「人に負けない努力をしろ」と精神的な薫陶を授けてくれ、薄給にも拘らず大学まで出してくれました。下宿代を捻出する余裕はなく、毎朝五時半始発の汽車に乗り、片道2時間をかけての通学でしたが、義姉は四時には起きて朝食の支度をして送り出してくれました。自分の子供のように愛情をかけて育ててくれた長兄夫婦への感謝の念は、いまも尽きることがありません。
 
卒業後は建設機械の製造販売会社に勤めましたが、薄給ゆえに将来の見通しが立たず、不動産業を立ち上げ羽振りのよかったすぐ上の兄に憧れ、28歳で兄の会社へ転じました。
 
私が入社したその年、兄は仙台北部の成長を見込んで旧泉市(現在の仙台市泉区)に支店を設けました。しかし4年を過ぎても開発は遅々として進まず、結局は撤退を決断。私が支店閉鎖の整理を行うことになりました。ところが実際に現地へ赴いてみると、ようやく開発が緒に就いており、この地域は伸びるという機運が感じられたのです。

「自分の力で経営をしてみたい」と決意を固めた私に、兄は「やるだけやってみろ」と背中を押してくれました。
 
当時の仙台北部の大半は田や畑、山が広がる未開の農村地帯でした。私はこの地で、不動産業界で一番の存在になるという思いを込め、山一地所として再出発したのです。1975年、32歳の時でした。

土地を保有するお客様のお役立ちに徹して

〈渡部〉
しかし、見知らぬ土地で保証人も担保もなく、銀行へ融資の相談に行っても「あんた、何しに来たんだ」と見向きもされませんでした。
 
社員の一人が不動産投資に興味を持っている男性のことを聞きつけてきたのは、手持ち金が底をつく頃でした。最初にお伺いした時、その方は1時間近く黙って私の話を聞くのみでした。見込みがないと思っていたら、1週間後に「もう一回話を聞かせてくれ」と電話をかけてきたのです。再訪した私は、当時の銀行金利を大きく上回る有利な条件を提示しました。

加えて、商品として仕入れた土地を私の名義で登記し、売れるまで権利証と印鑑証明と委任状の「3点セット」をお預けするという条件でようやく納得され、お金を貸していただくことができたのです。
 
しかし、本当の苦しみが始まったのはここからでした。建物を建て販売準備ができたものの、いくらチラシを撒いてもお客様は現れず、4人の社員と結婚したばかりの妻を抱え、「夜逃げするわけにもいかない」と眠れない日々を過ごしました。
 
奇跡を呼び込んでくださったのは、店舗にお茶飲み話に来られた顔馴染みの農家の方でした。その方の親戚が同居家族と諍いを起こし、仲裁に入った時に、「そんな家族など見切りをつけて、山一地所で売り出している家があるから、そこに移ったらどうだ」と勧めてくださったのです。
 
年末に差し掛かる時期に、その方が全額耳を揃えてお支払いくださったおかげで、借入金額と利息、建築代金などをすべて返済し、さらに借入額を増やして会社を軌道に乗せることができました。
 
創業当初、一番苦労したのはお客様の信頼を構築することでした。そこで考えたのが、土地をお持ちの方々が財産を有効利用するための勉強会です。土地を売るとお金は手に入りますが、無計画に使えばすぐに経済的に行き詰まってしまいます。

私は地元の方々を集め、不動産で賃貸収入を得て、生涯にわたり安心して生活できるように、情報提供や税金対策などのアドバイスに努めました。そこから「山一友の会」が立ち上がり、結果的に多くのお客様から信頼されるようになったのです。
 
その後も土地の有効利用、アパート建築、入居斡旋・賃貸管理、退去に伴うリフォームまでワンストップで対応し、不動産所有者のお役立ちに努めた結果、ご縁がご縁を呼びお客様が増えていきました。同時に仙台近郊への大手企業誘致や私立大学のキャンパス進出があり、泉区一帯の賃貸ニーズが一気に高まりました。金融機関からの信用も厚くなり、フロービジネスから自社の賃貸物件を増やすストックビジネスへの転換を図ったことで、さらに経営を安定させることができました。
 
創業時から様々なご縁に恵まれ、ここまで事業を存続できたことに、私は天のお導きを意識せざるを得ません。そして、その背後に強く感じるのが亡き母の存在です。生後2か月の乳飲み子であった私を残し、後ろ髪を引かれる思いで旅立った母が、私を心配してずっと上から見守ってくれているのではないか。そう私は信じています。

お客様に満足していただいてこそ当社の存在価値はある

〈渡部〉
バブル崩壊以降、不動産業界は様々な荒波に揉まれました。一時の儲けに浮かれて消えていった同業者が無数にある中、おかげさまで当社は現在、地場企業としての管理戸数は東北トップクラス、社員は140名を数え、売上高は100億円超、経常利益も9億円を計上するまでになりました。
 
人に言えない苦労は多々ありましたが、とにかく悲観することなく、真面目に、必死に、一所懸命に働くこと。世に大業を成し遂げた方々に共通することです。この原点を守り続けてきたからこそ、当社は設立以来48年間、一度も赤字を計上することなくここまで来られたと考えています。
 
当社の存在価値は、お客様に満足していただくところにこそあります。少し儲かったからといって傲岸不遜に陥れば、すぐに世間から見放されてしまいます。義姉の教えであり、社訓に掲げる「誠実と謙虚」を、事業を通じて真摯に実践し続けること。

そして仕事で関わるすべての方に感謝すること。こうして他人様とのご縁を大切にすることによって、手元の資産が複利効果で膨らんでいくように、ご縁がご縁を呼んで新しい商売にも繋がっていくような気がします。「お金も複利、ご縁も複利」ではないでしょうか。
 
最近は、会社の収益を少しでも社会に役立てたいと考え、家庭環境に恵まれない子供たちのために、子ども食堂の運営に参加しています。また、学生向け共同住宅の建設・提供なども始めました。

ささやかではありますが、こうした活動を通じて少しでも世の中を明るいものにしていきたい。そして本業においても、「誠実と謙虚」という原点を決して見失うことなく、お客様に満足していただける会社であり続けるべくさらに尽力してまいります。 


(本記事は月刊『致知』2023年10月号掲載記事を一部編集したものです)

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