「仕事を通じて皆様のお役に立つ」——今年創業40周年を迎えるアート不動産の創業の原点

盛岡を中心に不動産仲介業を営む「アート不動産」は今年創業40周年の節目を迎えます。同社はいかにして賃貸仲介件数、賃貸管理戸数で盛岡エリアナンバーワンに成長を果たしたのでしょうか。創業者である櫻井澄男さんにこれまでの足跡と創業に込めた思いを語っていただきました。

業界を革新する。強い思いに突き動かされて

〈櫻井〉
1983年、私が36歳で創業した不動産仲介のアート不動産は、今年40周年の節目を迎えます。

生来の世渡り下手に加え、よい大学を出てよい会社に勤めるという世間の常識に馴染めなかった私は、高校の卒業式にも出席せずに地元盛岡から上京し、土木の日雇い仕事や水商売、新聞配達など、様々な職業を転々としました。

見かねた兄に「盛岡に帰れ!」と促されて二十代後半で帰郷。同級生の伝で地元の建材会社に入社したのが不動産業との縁の始まりでした。どの職場でも仕事は徹底的にやることが信条の私は、同社に在籍した約6年半で実績を積んで独立を果たし、5坪の店舗で営業を始めたのです。

不動産業界を志したのは、新聞配達時代の仲間に触発されて宅地建物取引主任者の資格を得ていたこともありますが、決してクリーンではなかった業界を革新するという強い思いに突き動かされたからです。創業時に決意をしたためた「創業の心14ヶ条」の第一項には「儲けようとするのではなく、仕事を通じてお役に立ち、その結果利益を得ること」と記しました。

とはいえ、理想を現実にするのは容易ではありませんでした。雪降る寒さが身に沁みる中、ようやく初めてお客様が来店されたのは開店5日目。

その後も、たった一人のパートさんの給料が払えずに辞めていただいたこと、疎遠にしていた父親に頭を下げてお金を用立ててもらったこともありました。現実の厳しさを噛み締めつつ懸命に営業活動を積み重ね、少しずつ業容を拡大していったのです。当初から私を支え続けてくれた妻には感謝の言葉もありません。

見えない部分を大切にする会社が真に成長する

〈櫻井〉
経営者としての器を磨く上で大きかったのは、中小企業家同友会や盛和塾に入会し、様々な経営者と交流の機会を得たことです。特に2004年、盛和塾で「稲盛経営者賞」を受賞した際に尊敬する稲盛和夫塾長より、我が強く、優しさに欠ける私の欠点を厳しく指摘いただいたことは、経営者としての自覚を一層深くする転機となりました。

おかげさまで、賃貸仲介件数、賃貸管理戸数で盛岡エリアナンバーワンに成長することができたいま、つくづく痛感するのは、創業の精神は継承の努力を怠ればあっと言う間に形骸化するということです。先述した創業期、一本の電話が鳴ること、一人のお客様が来店くださることを、私はどれほどありがたいと思ったことでしょう。

こうした創業の原点を決して見失うことのないよう、私は挨拶や掃除などの基本動作や、感謝を忘れず人間として素直であることの大切さを社員に説き続けています。お天道様は見ている。こうした見えない部分を大切にする会社こそが真に成長すると私は信じています。

当社はこれからも、仕事を通じて皆様のお役に立ちたいという創業時の思いを大切に守りつつ、超高齢社会という地方都市の課題解決のため、祖業である不動産仲介事業に加え、高齢者福祉事業や高齢者住宅の管理にも一層力を注いでいく考えです。


(本記事は月刊『致知』2023年9月号掲載記事を一部編集したものです)

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