2023年07月20日
突然襲ってきた悲劇
世界トップクラスの歯科医であると共に、世界の様々な成功哲学、能力開発・経営プログラムの研究にも取り組む井上裕之さん。多方面で活躍し、多くの方々に生きる力を与え続けている井上さんですが、その原点には自殺を思うほどの絶望体験がありました。
大学院を優秀な成績で修了し、アメリカの名門大学にも留学。その後、伴侶に恵まれ、31歳の若さで地元・北海道帯広市に歯科医院を開業するなど、仕事も家庭も何もかもが順調にいってた井上さん。そんな最中、新しい年が明けて間もない1998年1月3日に交通事故に遭い、まさに人生が一変するのです。
「運転席に妻、助手席に私、後部座席には四歳の娘が乗っていました。空は晴れ渡り、最高のドライブ日和(びより)で、家族を乗せた車は順調に目的地に向かっていました。しかし緩やかな坂道を登っているまさにその時、溶けだした路面の雪でスリップし対向車線に滑り込んだ私たちの車に、大型オフロードタイプの車が減速できないまま真っ直すぐ突っ込んできたのです。」
井上さんと娘さんは無傷で助かったものの、対向車が突っ込んできた運転席に乗っていた奥様は、「蛇口を捻ったような出血」で手術が難しいほどの重傷でした。しかし、そこで第一の奇跡が起こります。事故の衝撃で奥様の鞄に入っていたプッシュ式の携帯電話のリダイヤルボタンが偶然押され、実家にいた母親に電話が繋がっていたのです。
電話越しに井上さんの叫び声を聞いた母親は異変を察知し、警察や家族に連絡、その結果、年始にもかかわらず大量の輸血が集まり、奥様は奇跡的に手術を受けることができたのでした。
絶望から光への転換
そして手術は無事成功しますが、待っていたのは非情な宣告でした。集中治療室から出てきた医師は、祈るような思いでいる井上さんにこう告げたのです。
「最善は尽くしましたが、これから先は分かりません。よくて植物人間だと思ってください」
「この状態で助かった事例はない」
絶望の底に突き落とされた井上さんは、以後、実家にお子さんを預け、平日は経営する歯科医院でいつも通り働き、土曜日の診療が終わると、バスで片道4時間かけて奥様が入院する旭川の病院まで通い、日曜日の夕方に戻って来るという過酷な介護の日々を送ることになります。
「妻がいつ亡くなるかも分からない中、自宅に一人でいると、得体のしれない恐怖感が襲ってきました。意識が高ぶっているからでしょう、突然涙が出てきたり、大声を出したり、精神的におかしくなりそうな時もありました」
一時は、自分の死(自殺)を身近に感じることもあったという井上さん。しかし、ある一冊の本をきっかけに井上さんの人生は、絶望の闇から光へと転じていくのです。その一冊とは、アメリカの自己啓発・成功哲学の大家、ナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』でした。
貪るように同書を読んだ井上さんの心に、ナポレオン・ヒルの教えは真正面からズドンと響き、「人間は心のあり方一つでどんな困難でも乗り切れるんだ」「成功するには成功するための心の持ち方・考え方、ルールがあるんだ」と、これまで絶望の闇に沈んでいた心に希望の灯が点るのです。
それから井上さんは様々な自己啓発書を勉強するようになり、心の姿勢がポジティブな方向に転換していくにつれて、第二の奇跡、奥様の状態にも回復の兆しが表れ始めるのでした――。
・ ・ ・ ・ ・
井上さんはいかにして心をポジティブに転換し、人生の艱難辛苦を乗り越えていったのでしょうか。その壮絶な体験談を語っていただいた記事は、『致知』2023年8月号「悲愁を越えて」26ページに掲載されています。ぜひご覧ください。
◎井上裕之さんの記事には、
・人生は一瞬で変わってしまうもの
・命を救った偶然のリダイヤル
・自殺を思うほどの苦しい看護の日々
・強い思いは現実を変えていく
・逆境があるからこそ人間は成長できる
など、人生の逆境を乗り越え、よりよい人生を掴む要諦に溢れています。詳細・ご購読はこちら「【致知電子版】でもお読みいただけます」
◇井上裕之(いのうえ・ひろゆき)
昭和38年北海道生まれ。東京歯科大学大学院修了後、ニューヨーク大学など海外大学で研鑽を積み、平成6年帯広に「いのうえ歯科医院」を開業。歯学博士、経営学博士、東京医科歯科大学、ニューヨーク大学など国内外7大学で役職を務める。自動車事故を契機に、歯科医の傍ら自己啓発、成功哲学の研究にも取り組み、世界的な能力開発・経営プログラムを学ぶ。自己啓発に関するセミナーや講演会を全国で開催。世界初のジョセフ・マーフィー・トラスト公認グランドマスター。『自分で奇跡を起こす方法』(フォレスト出版)『人生の黄昏を黄金に変える「賢者のかけ算」』(サンマーク出版)『1日1分中村天風』(青春文庫)『1日1分蓄財王・本多静六の金言』(さくら舎)など著書多数。