2023年08月26日
ミュージカルからストレートプレイ(台詞劇)、古典・現代劇に至るまで、俳優として数々のヒロインや主要な役を演じてきた野村玲子さん。演劇の道一筋に歩み続ける野村さんは、師でありパートナーでもあった劇団四季創設者、故・浅利慶太氏の思いを受け継ぎ、最近ではミュージカル『夢から醒めた夢』の公演や後進の指導に力を尽くしています。そんな野村さんが語る浅利慶太氏に学んだ人生・仕事の心得とは。
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努力し続けるものが伸びる
〈—―野村さんは後進の指導にも取り組んでおられますが、伸びていく人材とそうでない人材の違いはどこにあると思われますか。〉
〈野村〉
稽古でも何でもひたむきに向かっていく人は伸びていくと思います。目の前の課題、難しいことから逃げてしまう人はなかなか成長が難しい。
浅利も、若手の俳優が作品や役に飛び込んでいくのを怖がったり、何か理由をつけて逃げたりすると、「どうして逃げるんだ。下手でもいいから、体当たりで向かってこい!」と叱咤していました。
それから、研究生の入所式などでは、「ウサギとカメ」の話を引き合いに、「いくら才能があっても、地道に努力し続けるカメのほうが10年経ったら伸びていることもある」と、よく言っていました。
〈――どんなに才能があっても、努力し続ける人には勝てないと。〉
〈野村〉
それに関してもう一つ心に残っているのは、「君たちは不平等な世界に来たんだ」「自分の時計を持て」という教えです。
どんなにやりたくても、ハムレットを演じられるのは一人しかいない、だから違う役になっても不平不満を言わず、周りと比べず、自分だけの時計を見ながら努力をし続けなさい。そうすれば、自分の個性を生かせる役が回ってくるんだと。
私もこれまでいろんな人材を見てきて、そのことを強く実感しています。才能や個性はそれぞれで、開花するタイミングも違います。才能・個性を生かすも殺すも、自分の信念、祈りを持ち、努力し続けられるかどうかだと思うのです。
〈――とても励みになる教えです。〉
〈野村〉
あと、先ほどの「居て、捨てて、語る」と共に稽古場に貼られていた言葉が「慣れだれ崩れ=去れ」です。同じことを繰り返していると、知らないうちに慣れてくる。慣れてくると次第に「だれ」てきて崩れてしまう。そんな人間は去れという厳しい言葉です。
これは浅利の墓標にも刻まれている言葉ですし、すべてに通じる「生き方の法則」だと思います。
(本記事は月刊『致知』2022年10月号 特集「生き方の法則」から一部抜粋・編集したものです)
◎2022年10月号には、野村玲子さんのロングインタビューを掲載。本記事には、
・自分をなくすことで個性が現れてくる
・役に没頭した時、知恵の蔵が開かれる
・周りと比べず「自分だけの時計を持て」
・劇団四季の創設者、浅利慶太氏から学んだこと
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◇野村玲子(のむら・りょうこ)
北海道旭川市出身。劇団四季の舞台『ユタと不思議な仲間たち』の観劇をきっかけに演劇の道を志し、1981年劇団四季附属研究所入所。『エビータ』で初舞台を踏む。『オペラ座の怪人』『美女と野獣』日本初演のほか数々のミュージカルでヒロインを演じる。またストレートプレイ(台詞劇)でも『アンドロマック』『オンディーヌ』『アンチゴーヌ』などタイトロールをはじめ、古典から現代劇まで数多くの作品で主要な役を演じる。2003年劇団四季の創設者である浅利慶太氏と入籍。2015年劇団四季を退団後は、活動の場を浅利演出事務所に移す。2018年より同事務所代表を務める。
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