大掃除の前に読みたい。掃除の達人が教える、菌やウイルスを防ぐ掃除術

正しい掃除をしなければ、リビングやお風呂、トイレ、エアコンなど、家の中の身近な場所に様々な菌やウイルスが繁殖して健康被害を引き起こす――。そう警鐘を鳴らすのは、長年、大病院などで掃除マネジメントに従事してきた松本忠男さんです。まさに「掃除のプロ」といえる松本さんから、菌やウイルスを防ぐ掃除術を伺います。

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健康=食事+運動+「掃除」

健康のために、食事や運動の大切さを説く人はたくさんいます。しかし私は、この二つだけでは不十分だと考えます。私はもう一つ、「掃除」を加えたいのです。
 
掃除が健康にどう関係しているのか、疑問に思われる方のために、少し具体例を挙げましょう。
 
例えばエアコン。掃除の行き届いていないフィルターから大量のカビや埃がまき散らされるばかりでなく、エアコンの風の下では必ず空気の渦が巻き起こり、部屋に堆積した埃や雑菌を寄せ集めます。エアコンの下にベッドを設置していれば、たくさんの埃や雑菌を一晩中吸い続けることになり、健康に悪影響を及ぼすことは必至です。
 
それからお風呂のボディソープ。高温多湿な浴室は、カビや細菌の温床であり、そこで使うボディソープの容器に使用後に洗浄した水が溜まっていると、中で猛烈に繁殖した緑膿菌という常在菌で体を洗うようなことになり、様々な健康リスクに身を晒すことになります。
 
さらにはキッチンで使うふきん。濡れたまま置いておくと、付着した細菌が倍々ゲームで増えていき、それを触った手で調理をすると感染する恐れがあります。
 
挙げていけばきりがありません。それほどに私たちは、健康を脅かすものに身を晒しており、それらを排除するために大切なのが「掃除」なのです。

気を付けるべき菌やウイルス

先述のとおり、家庭で気をつけなければならない汚れには、主に埃、カビなどの菌やウイルスがあります。
 
埃にはウイルスや細菌がたくさん含まれており、人や物だけではなく、モップが動いても舞い上がり、それを吸い込めば人体に悪影響を及ぼすのです。
 
この埃が意外なほどに多いのがトイレ。衣類の着脱やトイレットペーパーの使用などで発生した埃は、逃げ場のない狭い空間に溜まります。しかも、トイレは体の中の菌やウイルスが外に出ていく場所でもあります。

トイレの埃を調べてみたところ、1グラムあたり数10万~数100万個もの細菌が検出され、その多くは食中毒の原因となる大腸菌や、それとともに臭いの原因にもなるブドウ球菌であったという分析もあります。
 
二つ目のカビは、胞子が1000個くらい集まると体に害を及ぼすといわれています。胞子が1000個というと大体5ミリくらいの大きさですから、カビであちこち黒くなっているお風呂などは、とんでもない状態ということになります。
 
また、カビの胞子は空気中にも浮遊しており、鼻や口を通って気管支や肺に侵入します。トリコスポロンというカビの胞子は、吸い込むとアレルギー反応を起こし、発熱や呼吸困難などの症状が出て、重症化すれば死に至ることもあります。最近世界的に流行したカンジダ・アリウス(通称・日本カビ)は、免疫力の落ちた病人は命を落とすこともある危険なカビです。
 
家庭でカビの発生しやすい場所としては、洗濯槽の中、浴室の天井、水回り、結露ができる窓回り、ベッド回り、家具の裏などがあります。
 
またカーペットは、夏場のエアコンで湿気を含んだ冷気が床の近くに溜まるため、繊維がその水分を吸ってカビだらけになり、人が歩く度に舞い上がります。
 
カビ以外の菌で注意したいのが、先述した緑膿菌という水回りの常在菌です。赤ちゃんや高齢者、免疫力の落ちた病人は、感染すると呼吸器感染症や尿路感染症、敗血症などを起こすことがあります。

健康を守る掃除術

それでは、こうした健康リスクから身を守るために、具体的な掃除の方法をご紹介します。

1.トイレ
まずゴム手袋を装着し、壁、床の順に埃を取ります。床は、奥から手前に向かって掃除します。
 
その際にお勧めしたいのが、窓掃除の水切りに使われるスクイージーです。ゴムの部分を5ミリ間隔でカットし、掃除する箇所を一方向にゆっくりと擦ると、大量の埃を取り去ることができます。家中どこでも使えて重宝しますから、ぜひ試してみてください。
 
続いて、使い捨てのウエットシートで便器本体を上から下に拭きます。汚れが酷い場合は、酸性洗剤をシートに付けて擦ります。便器内部は、最初に酸性洗剤をつけ、ブラシなどでまんべんなく馴染ませ、3分ほど放置した後に流せるシートで擦って水に流します。落ちにくい汚れは、目の細かい耐水ペーパーで擦り洗いしてください。
 
最後に手袋を変え、除菌ウエットシートで便器、ペーパーホルダー、水洗レバー、ドアノブ、さらには埃を取ったスクイージーの消毒拭きを行います。除菌が目的なので、常に往復拭きではなく一方向に拭いていきます。

2.キッチン
使った後は水気を拭き取り、ふきんやまな板、排水口などを漂白剤で消毒し、食中毒を防ぎます。

食器用スポンジは細菌が繁殖しやすく、胃腸炎などに感染するリスクが高いので、濡れたまま放置しないこと。一日の終わりには熱湯をかけた後、固く絞って風通しのよい場所に干してください。

3.風呂場
濡れっぱなしにしておくと、カビや雑菌が繁殖するので、こまめに換気をし、入浴後は水滴を拭き取ります。子供のおもちゃも、緑膿菌に汚染されないよう十分に洗って乾かしましょう。タオルや足拭きマットなど、洗濯できるものはこまめに洗濯し、きちんと干すようにしてください。
 
なお、風呂場の掃除はカビを繁殖さないために冷たい水を使いましょう。また、チューブ入りのゼリー状カビ取り剤は、長くカビに作用するのでお勧めです。掃除の後は窓の片側だけでなく、両側を10センチくらいずつ開けて、室内に風を循環させるのがポイントです。窓がなければ換気扇を回しましょう。

4.洗面台
歯ブラシ置きやうがい用コップなどは、こまめに水気を拭き取って風通しをよくします。ハンドソープを詰め替える際は、不衛生な水が溜まらないよう、容器をよく洗い、しっかり乾燥させてから詰め替えましょう。石鹸の受け皿は極力乾燥させ、手拭きタオルもこまめな取り替え、洗濯が大切です。

5.リビング
カーペットは、できればフローリングに変えることをお勧めします。難しければ、排気口の位置の高いスティックタイプ掃除機のパワーブラシモードでカーペットを起毛させ、奥のゴミを吸い取ります。
 
畳は、マイクロファイバークロスで畳の目に沿って乾拭きした後、アルコールを染み込ませたマイクロファイバークロスで仕上げ拭きをします。
 
また、テレビやビデオデッキの裏などのコードが集まる場所、リモコンやパソコンのキーボードなど凸凹した場所には埃が溜まりやすいので、気づいたらすぐ除去しましょう。
 
家の中全般に言えることは、普段無意識に手を触れるものに注意すること。整理整頓を心掛け、極力、物を減らしてシンプルにすることです。
 
なお、家庭で使用する加湿器のタンクは、放っておくとカビや細菌が繁殖するので、頻繁に消毒する必要があります。掃除というと、頑張らなければ、完璧にやらなければと肩に力が入り、途中で挫折してしまいがちです。

しかし私は、掃除をより効果的に実践するためにも、楽にやることをお勧めしたいのです。


(本記事は『致知』2018年3月号 連載「大自然と体心」より一部を抜粋・編集したものです)

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◇松本忠男(まつもと・ただお)
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東京ディズニーランド、ダスキンヘルスケアを経て、亀田総合病院の清掃管理者として約10年間、現場のマネジメントや営業に従事。平成9年プラナを設立。日本ヘルスケアクリーニング協会代表理事。亀田総合病院では100人近く、横浜市立市民病院では約40人のスタッフを指導し、現場で体得したノウハウを、医療・介護施設、清掃会社に提供。著書に『健康になりたければ家の掃除を変えなさい』(扶桑社)がある。

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