大自然の〝原風景〟が 教えてくれたもの——写真家・白川義員

27歳で大自然の風景に魅せられ、そこから60年に渡って〝原初の風景〟を命懸けで撮影し続けてきた写真家の白川義員(よしかず)さん。2021年春、人生の集大成となる写真展「永遠の日本」と「天地創造」を開催され、それを見届けるように4月にお亡くなりになりました。86歳でした。
写真を通じ、
人間のあるべき姿を追求してきた白川氏の教えから、地球・自然への畏敬の念、謙虚に生きよ、というメッセージをいただいているような気がしてなりません。ご冥福をお祈りいたします。

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生きているのではなく地球に生かされている

——50年以上、原初の自然の姿を命懸けで撮影し続けてきた白川さんですが、私たちがこの地球上でよりよく生きていくために大事なことは何だと思われますか。

<白川>
「天に星 地に花 人に愛」というテーマにも通じるかもしれませんけど、それはやっぱり、私たちが生きているこのたった一つの地球、自然というのは本当に掛け替えのない存在であること。

私たちが生きていられるのは、この地球以外にはないんだという事実を一人ひとりがもっと深く認識することが大事だと思うんですね。

そして、自然の背後には人智を超えた巨大な何かの存在があるという事実を私たち人間はもっと謙虚に認めなければいけません。

実際、地球以外の惑星で生きてくださいと言われても、無理ではないですか。

にもかかわらず、「地球で生きているのが当たり前」だと傲慢ごうまんになってしまうから、現代のいろいろな問題も起こってくる。

人間は地球で生きているのではなく、〝生かされている〟。そう思えば、この地球、自然との向き合い方も日々の生き方も自ずと変わってくるはずです。

世界的な物理学者であるアインシュタインも、そうした感情を「宇宙的宗教感情」という言葉を使って説明しています。

私たちはいまこそ、この感情を取り戻さなくてはいけない。

特に若い人には、家に閉じ籠ってばかりいないで、自分の目と足で日本の繊細な美しい風景、できれば海外の壮大な風景をいっぱい見てほしいと思います。そうすれば必ず人生観が変わりますよ。

——人間は地球、大自然に生かされている。確かに、一人ひとりがそう思って生きれば違った世の中になっていくかもしれません。

<白川>
しかし、生活はどんどん便利になっていく一方、現代人は真っ赤に輝く日の出や日没の太陽など、大自然の風景に感動する機会や衝撃を受ける体験をどんどん失っています。

だからこそ、私がこれまで命懸けで写真にとらえてきた地球の感動的な原風景を通じて、一人でも多くの人がこの素晴らしい地球を再発見し、人間が人間になった大自然への畏敬の念を取り戻していただきたいし、人間がよりよく生きるとはどういうことかをいま一度考えていただきたい。

それが私の心からの願いです。


(本記事は月刊『致知』2021年10月号 特集「天に星 地に花 人に愛」より一部を抜粋・編集したものです)

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◇白川義員(しらかわ・よしかず
1935年愛媛県生まれ。1957年日本大学藝術学部写真学科卒業後、ニッポン放送に入社。フジテレビを経て、1962年写真家として独立。1969年写真集『アルプス』を出版して以来、『ヒマラヤ』『アメリカ大陸』『聖書の世界』『神々の原風景』『仏教伝来』『南極大陸』『永遠の日本』『天地創造』など12のシリーズを出版する。いずれも前人未到の仕事だが、特にシリーズ8作目の『南極大陸』では、世界初の南極大陸一周に成功。全米写真家協会最高写真家賞、菊池寛賞、日本芸術大賞など受賞多数。1999年紫綬褒章を受章。

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