2022年05月23日
大いなる存在に導かれて実現した対面
『致知』でお馴染みの鈴木秀子先生(文学博士)と共に、富士山を眺望できる田坂広志先生(多摩大学大学院名誉教授)の事務所を訪れたのは3月半ばでした。
この日はあいにくの雪交じりの雨模様。田坂先生は尊敬する鈴木先生に、テラスから眺望できる美しい富士山をご覧いただきたかったご様子でしたが、鈴木先生はそういう田坂先生に「こういうしっとりした景色もまた、素晴らしいじゃないですか」と笑顔で答えられていました。
病床の人たちに寄り添い、死の恐怖を取り除く鈴木先生の活動について、その著書を通して田坂先生が触れられたのは30年ほど前。以来、いつかお会いしたいと思い続けられていたそうです。
鈴木先生もまた、ご自身と同じことを話されている先生がいると聞き、田坂先生の本を何冊も読まれていました。そんなお2人がこの度、初めて出会い対談されたことに、何か運命のようなものを感じないではいられません。
実際、対談はまるで導かれるようにスムーズに進行し、「魂の呼応」という言葉そのものの展開となりました。お2人は共に「人間は大いなる存在によって生かされている」という人生観をお持ちです。目の前に起きる出来事を、それがたとえ逆境と思えるようなことでも、大いなる存在の導きと受け止め、絶対肯定して歩んでいく時に道が開かれる──。
6月号の誌面では、様々な実体験をもとに、その人生観を深く掘り下げられるお2人のお話を詳しく紹介させていただいています。それはいま多くの読者に希望と勇気を与えています。
お2人の言葉を引用させていただきます。
「若い頃、『なんでこんな出来事が起きるのだろう』と思っていたことが、長い年月を経た後に、それが人生の曲がり角で自分を成長させてくれていた大切な経験だったことに気づく。歳をとることの素晴らしさは、そういう過去を振り返って見直せるところなんですね」(鈴木秀子)
「もし我々が、与えられた人生において、人間として成長していくことをめざすならば、たとえ、どのような逆境や挫折が与えられても、それを糧として、必ず、成長していくことができます。そして、成長の喜びを感じることができるのですね」(田坂広志)
今回の取材を通して、人生での縁をとても大切にされる田坂先生のお人柄に触れることができました。
30代の頃、死の病と向き合われた先生は、人生は一度切りであること、限られた人生の中での出会いの一つひとつがいかにかけがえのないものであるかを痛感されたそうですが、そういう逆境体験が田坂先生の人格を育んだのでしょう。
今回の邂逅に深い意味を感じ取られたお2人が、別れ際、再会を誓い合っておられる姿が大変印象的でした。
ありがたいのは、お2人が私たちの『致知』を高く評価してくださっていることです。『致知』の取材を通してお2人が出会われたのも、やはり大いなる存在の計らいだったのかもしれません。
◎2022年6月号「伝承する」には、鈴木秀子先生と田坂広志先生の珠玉の対談を掲載。
人間の心を探究してきたお二人が行き着いた人生観、そして人間が生きることの本質に迫った本対談には、この混迷の時代の中でしっかりと自らの中心軸を定めて生きるヒントが満載です。
ぜひご覧ください。詳細・ご購読はこちら