戦国最強の武将は和歌の達人、第一級の知識人だった?? 武田信玄に学ぶリーダーの条件

甲府市内の武田信玄公像

リーダシップの基礎をつくるもの

精鋭の武田騎馬軍団を率い、〝戦国最強〟〝甲斐の虎〟と恐れられた武田信玄。山梨県甲府市内にある迫力ある銅像や肖像画に見るように、多くの方が武田信玄と聞けば、戦に明け暮れた「勇猛な武将」というイメージを抱いていることと思います。

しかし、『致知』2021年12月号 特集「死中活(しちゅう かつ)あり」にご登場、武田信玄の菩提寺・恵林寺(えりんじ)住職を務める古川周賢さんは、そうした武田信玄のイメージは一面的であると言います。

例えば、古川さんは、武田信玄が京都から公家を頻繁に招いて詩歌会や連歌会を開催している事実を挙げ、残された作品から、武田信玄の和歌の腕前は達人級であり、漢詩についても当時の京都徳大寺の宗佐首座より「武田信玄詩藁」が編纂されるほどの実力だったと述べています。

また、武田信玄は禅の修行にも凄まじいまでの情熱で取り組んでいました。武田信玄は最初の禅の師匠である岐秀元伯に就き、非常に難解だとされる『碧巌録』全十巻のうち七巻まで学び終えたとされますが、古川さんによれば、これは並大抵の努力、修養ではできないことだそうです。

実際、『碧巌録』を七巻までで終わってしまったのは、岐秀元伯から「禅の修行にこれ以上打ち込めば、出家か遁世の遠因になる」と止められたからだといいます。武田信玄が禅の修行にどれほど真剣に打ち込んだか伝わってくるエピソードです。

和歌や漢詩の道に秀でた教養人・知識人であり、禅の修行でも非常に深い境地に至っていた武田信玄――。古川さんのお話から、従来の荒々しい武人のイメージとは違った武田信玄の姿が現れてきます。

では、なぜ武田信玄は、あの戦国という生きるか死ぬかの乱世に、和歌や漢詩の学問、禅の修養を熱心に積んだのでしょうか。ここから現代にも通じるリーダーの条件、あり方が見えてきます。古川さんは、リーダーにとってなぜ教養や修養が必要なのか、記事の中で次のように語っています。

なぜ戦乱の世を生きた信玄公が、軍略や組織の統率に直接関係のない事柄にそこまで真剣に取り組んだのか、もっと実用的なことに取り組んだほうがよいのではないかと、疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。これを理解するには、そもそも戦いに勝つための戦略や決断力、人や組織を動かすリーダーシップの根底にあるものは何かについて、より深く考える必要があります。

信玄公が生きた戦国時代というのは、明日誰に裏切られるか分からない、生きるか死ぬかの過酷な日々、戦いの連続です。また、現代のように高度な科学技術や分析手法もないため、戦いの勝ち負けは目に見えない要素、偶然的な要素に多分に左右されました。 

ですから、その想像を絶する孤独と不安、プレッシャーに押し潰されることなく、様々な条件を検討して決断を下し、家臣団をまとめ、国を守っていくためにも、戦国の世のリーダーには単なる知識やテクニック以上のもの、即ち何があっても揺るがない確固たる世界観・人生観、物事を多面的・俯瞰的に見る見識、周囲を感化する人格力・人間力が求められたのです。そしてそれらを養ってくれるものこそ哲学や宗教、歴史や芸術といった学問、いまで言うリベラルアーツ教育に他なりません。 

誰にも頼ることのできない孤独や不安、不確実性の中で決断を下すには、やはり哲学的・宗教的な信念が必要になります。また、その時々の条件や環境変化に振り回されないためには、歴史や古典の学びを通して様々な考え方や価値観を自分の中に蓄積し、五百年・千年の時間軸で物事を俯瞰できる見識を養うことが不可欠です。

『致知』2021年12月号に掲載の「修養の人・武田信玄に学ぶ」では、古川さんに、「リーダー求められるのは世界観・人生観、人間力」「決意の分だけ死中に活を見出せる」など、武田信玄の生き方を通して、先行きの見えない現代社会を生き抜くリーダーの条件や心構えを語っていただいています。

時代の流れに右往左往することなく、リーダーはどうあるべきか、またどういう修養を積めばよいのか、しっかりした人生・仕事の軸を定めるヒントが満載です。ぜひご一読ください。


◎古川周賢さんの記事全文は『致知』2021年12月号「死中活あり」をご覧ください。リーダーはいかにあるべきか、いかなる修養学問を積めばよいのか――歴史の偉人からそのヒントを学びます◎

◇古川周賢(ふるかわ・しゅうけん)
昭和42年岐阜県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程を修了、博士号取得。平成9年京都紫野大徳寺専門道場に掛搭。23年山梨県甲州市妙心寺派乾徳山恵林寺副住職、26年より現職。

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