〈ドトール×タビオ〉創業者が語り合う、倒産していく会社の共通点

駅前を歩けば頻繁に目にするドトールコーヒー、百貨店の衣料品フロアでも独自の品揃えが目を引く靴下屋・タビオ。それぞれの創業者である鳥羽博道さんと越智直正さんは、経営者として数々の組織の盛衰を見てこられました。組織の興亡を握るカギは、どこにあるのでしょうか――。写真右が鳥羽さん、左が越智さん

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リーダーとして心掛けてきたこと

〈鳥羽〉
越智さんが求めるリーダーの心得って何でしょう?

〈越智〉
『孫子』の中に「将とは、智信仁厳勇(ち しん じん げん ゆう)なり」って書いてますねん。仕事に対する智謀(ちぼう)を持っとるかどうか。嘘をつかない、約束を守れるかどうか。思いやりの心に溢(あふ)れてるかどうか。厳しさがあるかどうか。勇気があるかどうか。これがリーダーの五徳やと。

もう一つ心掛けてたのは、これも『孫子』の一節で、「卒(そつ)未(いま)だ親附(しんぷ)せざるに而(しか)もこれを罰すれば、則(すなわ)ち服せず。服せざれば則ち用い難きなり。卒已(すで)に親附せるに而も罰行なわれざれば、則ち用うべからざるなり」。要するに、部下が自分に心服した時には思いっきり叱れ。しかし、部下が心服してないのに叱ったら離れていく。

〈鳥羽〉
それはいい言葉ですね。

僕は『三国志』を読んで、ただ一つだけ覚えてるのは、

「口舌(こうぜつ)を以ていたずらに民を叱るな。むしろ良風を興(おこ)して風(ふう)に倣(なら)わせよ。風を興すもの師と吏(り)にあり。吏と師にして善風を示さんか、克己の範を垂れその下に懶惰(らんだ)の民と悪風を見ることなけん」

という言葉です。

社員を口で叱ってはいけない。むしろいい環境をつくって、その環境に倣わせなさい。環境をつくる責任は社長と幹部にある。社長と幹部がまず手本を示しなさい。その下に悪い社員ができようはずがないではないか。

現実には随分と社員を叱りましたけど(笑)、かくあるべしと心に留めてましたね。

それからもう一つは、「主師親の三徳」という言葉があるんですね。

〈越智〉
主師親の三徳?

〈鳥羽〉
主人としての面倒見、師匠としての指導力、親としての厳しさと温かさ。リーダーはこの三つの徳を備えてなきゃいけない。

この言葉をある人から教えてもらったんですが、ちょうどその時、上場を控えていて、大家族主義的な雰囲気で一所懸命商売やってきたにもかかわらず、上場に向かう過程で、どんどん冷たい組織経営に変わってしまうことが僕にとっては非常に辛かった。

ですから、主師親の三徳という言葉を聞いた時に、「そうか。リーダーがこの三つの精神を持った上で組織経営すればいいんだ」ってものすごく合点して、嬉しさのあまり涙が流れてきたんです。それがまた一つ、僕にとって大きな転機になりましたね。

この世における本当の勝者

〈鳥羽〉
越智さんは倒産していく会社をたくさん見てきたでしょうけど、そういう会社に共通してる点って何かありますか?

〈越智〉
民族滅亡の三原則ってありますやろ。理想を失った民族は滅亡する。価値を金銭に求める民族は滅亡する。歴史を忘れた民族は滅亡する。倒産した会社はこの三つのどれかに当てはまってますわ。

〈鳥羽〉
僕の体験をもとに考えると、失敗や危機をエネルギーに変えられるか、これも盛衰を決する大事なことだと思います。

僕は26歳の時、詐欺に引っかかって700万円騙し取られたことがあるんですね。最初はものすごく心が荒んでやけ酒を呑んだりもしましたが、ある時、こう思ったんです。騙した人間が成功して騙された僕が敗北したら、世に正義がない。何としても成功して世に正義があることを証明しよう。

そして、いつか騙した人間に再会したら、「お元気ですか」って言える人間になろう。もし元気がなかったら助けてあげよう。それが本当の勝者だと。

騙されたことは辛かったけど、その経験が強烈なエネルギーを生んだことは間違いありません。


(本記事は月刊『致知』2018年3月号 特集「天 我が材を生ずる 必ず用あり」より一部を抜粋・編集したものです)

◇鳥羽博道(とりば・ひろみち)
昭和12年埼玉県生まれ。29年深谷商業高等学校中退。東京の飲食店勤務、喫茶店店長を経験し、33年ブラジルへ単身渡航。コーヒー農園で3年間働いた後、帰国。37年ドトールコーヒー設立。平成17年会長に就任。18年より現職。著書に『ドトールコーヒー「勝つか死ぬか」の創業記』(日経ビジネス人文庫)など。

◇越智直正(おち・なおまさ)
昭和14年愛媛県生まれ。中学卒業と同時に大阪の靴下問屋に丁稚奉公。43年独立、靴下卸売会社ダン(現・タビオ)を創業。丁稚時代から読み始めた中国古典の教えをもとに、モラルある商売の道を追求。靴下業界屈指の企業を築く。平成20年より現職。著書に『男児志を立つ』『仕事に生かす「孫子」』(ともに致知出版社)など。

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