史上初の5連覇達成——中村学園女子剣道部が圧倒的に強い理由(剣道部顧問・岩城規彦)

2021年3月の「全国高等学校剣道選抜大会」で6度目の優勝を果たし、8月のインターハイでは史上初の5連覇を成し遂げた中村学園女子高校剣道部(福岡県)。その偉業達成の礎には、特別な技術をトレーニング法ではなく、部員一人ひとりの〝心を鍛える指導〟があったといいます。これまで同剣道部を導いてきた岩城規彦監督に、真に強い選手を育てる秘訣をお話しいただきました。

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強さとは負けないこと

――精神面の指導において、力を入れていることはありますか?

〈岩城〉
日誌を書くことと清掃活動、この2つを毎日必ず継続するよう伝えています。日誌と清掃は自分の心を整理することだと言っているんですけど、どんなことでもいいので、自分で決めたことを継続させる。できることをコツコツと続けることで心が強くなり、それを積み重ねることで自信が築かれていくのです。

――それが中村学園女子の強さの秘訣ですね。日誌にはどのようなことを書くのでしょうか?

〈岩城〉
1日1ページで、毎日必ず、長期・中期・短期の目標を書くところから始めます。長期目標というのは「インターハイ優勝」など1年間の集大成ともいえる大きなゴールを掲げます。初めはピンときていない目標であっても、毎日書き続けることで、自然と潜在意識の奥にまで入り、目標が自分のものになっていくのです。

短期目標は「心・技・体」と戦術の四項目に分けています。精神面、技術面、体力面の他に、どのように練習を行うかといった戦い方を記すのです。これを毎日行うことで、「いま自分が取り組むべきこと」を子供たち自身が明確に把握できるようになっていきます。

大会前には1年前の日誌を見返しさせることもあるのですが、「自分はこんなに成長していたのか」「この時はまだ長期目標が他人事だったな」など、子供たちが自分でいろいろな気づきを得てくれます。

――日誌は先生も目を通されるのですか?

〈岩城〉
毎日確認し、コメントも書いています。私に見られる前提で書いていますから、100%の本音でないのは承知の上ですが、文字の書き方、文章量、筆圧などから子供たちのモチベーションや心の状態が見えてきますね。

結局、高校3年間のうち、私が預かることができる期間は2年半しかありません。その短い間にある程度の結果を残そうと思うと、あまり遠回りができない。最短でゴールに導くのが指導者である私の役割だと思っているので、子供たちに常に目標を意識させ、目標に向けた努力をさせているのです。

――日々の練習で大切にされていることはありますか?

〈岩城〉
剣道は一対一の個人競技ではありますが、私は個人戦にほとんど重きを置いていません。それよりも、五人一組で行う団体戦に力を入れ、練習でも団体戦を意識したチームワーク力を高める練習しかしません。団体戦に出場する五名は選手の総合力で選んでいますが、その絶対基準は〝負けない子〟です。強い子、勝てる子ではなく、絶対に負けない子。

――負けない子、ですか……?

〈岩城〉
勝負の強さって、勝つことではなく、負けないことだと思うんです。団体戦においては負けなければ他の誰かが勝って、チームで勝利を掴めますが、負ける選手がいると勝ってもプラスマイナスゼロ。ですので、派手に勝って派手に負ける選手よりは、粘り強い選手を評価します。引き分けでもいいので、絶対に一本打たせないことを重視しているんです。当然相手も勝ちたいので試合の数分間は真剣勝負。忍耐力、慎重さ、判断力など様々な力が要求されます。


本記事は月刊『致知』2020年11月号 特集「根を養う」より一部抜粋・編集したものです)
◇岩城規彦(いわき・のりひこ)
昭和44年山口県生まれ。福岡大学付属大濠高校、福岡大学卒業。母校の大濠高校で1年、中村学園三陽中学で5年の勤務を経て、平成9年に中村学園女子高校に赴任。

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