2021年10月08日
「快適生活」をコンセプトに、人々の暮らしに寄り添った生活用品を日々創出し続けているアイリスオーヤマ。1989年に発売された世界初の「クリア収納ケース」は当時の収納文化に革命をもたらしたと称され、いまでは国内外で広く普及しているロングセラーの一つです。社のトップを50年以上にわたって務め、今日の基盤を築いた会長の大山健太郎さんは、ビジネスにおいて「NDD」という考え方を主軸にしてきたと語ります。※記事の内容や肩書はインタビュー当時のものです。
◉《期間限定の特典付きキャンペーン開催中》お申し込みくださった方に、『小さな幸福論』プレゼント!各界一流の方々の珠玉の体験談を多数掲載。総合月刊誌『致知』はあなたの人間力を高める、学び続ける習慣をお届けします。
▼詳しくはバナーから!
生活者の代弁者に徹する
私が大切にしている考え方の一つに「NDD」があります。
Nは「なぜ」、Dは「どうして」、もう一つのDが「どうすれば」。これを反復連打し、今日まで前例のない経営戦略を打ち出して市場を開拓してきました。
オイルショックで苦しんだ時もそうでした。NDDを考え抜いた結果、景気に左右されない仕事をしようと、生活用品事業へと大きく業態転換を図ったのです。その代表例がガーデニング用品でした。
園芸好きの妻の姿を見て、「こんな商品があれば便利だ」と生活者目線で開発していった結果、その利便性を評価されて、1980年代のガーデニングブームを牽引することができたのです。
世界を変えたと言われるクリア収納ケースも、不便から着想を得ています。当時は不透明な収納ケースが一般的でしたが、私自身一人の消費者として収納ケースからセーターを探すのに苦労した経験があったため、「透明な収納ケースがあれば便利だ!」と思い立ち、原料から試行錯誤を重ねて製品化を果たしたのです。
恐らく、私同様、収納ケースに不満を抱く人は多かったことでしょう。しかし、「なぜ、どうして、どうすれば」と考え進めた人がいなかった。だからこそ、世界初のクリア収納ケースは全世界で瞬く間に広がり、記録的なヒットを遂げたのです。
近年は情報社会に移行し、「どうして、どうすれば」という答えはインターネットで検索すれば比較的容易に手に入ります。それよりも、不満の種や不便を発見する「なぜ」の部分が重要です。
既存のマーケット内で戦うのではなく、「なぜ」を突き詰め、市場を創出すること。それがアイリスオーヤマの伝統精神です。
アイリスオーヤマは「快適生活」を掲げ、消費者自身さえ気づいていないニーズを察知することで、現在は25000アイテム以上を販売しています。これが可能なのも至ってシンプルで、私たちが生活者の代弁者に徹したから。
まずは周囲の不満・不便に耳を傾け、人々の生活を豊かにすることだけを考え続けました。手掛ける商品の幅は際限なく、園芸、ペット用品から始まり、近年は家電やLED、食品にも挑戦しています。
現在も1年に約1000アイテムの新商品を発売していますが、そのアイデアの鍵は情報共有です。当社の社員は全員ジャーナリストであるとの考えのもと、毎日200字以内でICジャーナル(IC=インフォメーション&コミュニケーション)を書いています。
単に、「商談を何件した、売り上げがこれだけ上がった」という報告書とは異なり、自分の意見をまとめて書くもの。それによって考える癖、分かりやすくまとめる力がつくのみならず、誰もが閲覧・検索が可能なため、アイデアの源泉となっています。私も毎日3回に分けて読むのを楽しみにしています。
(本記事は月刊『致知』2021年9月号 連載「二十代をどう生きるか」より一部を抜粋したものです) ◉《期間限定の特典付きキャンペーン開催中》お申し込みくださった方に、『小さな幸福論』プレゼント!各界一流の方々の珠玉の体験談を多数掲載。総合月刊誌『致知』はあなたの人間力を高める、学び続ける習慣をお届けします。 ▼詳しくはバナーから!
◇大山健太郎(おおやま・けんたろう)
昭和20年大阪府生まれ。39年、19歳の時に父親の死に伴いプラスチック加工の大山ブロー工業所(現・アイリスオーヤマ)を引き継ぐ。平成30年に息子に社長を譲り会長に就任するまで、54年間の長きにわたりトップを務め、園芸・ペットブームを牽引。現在は生活用品だけでなく、LED照明・家電・食品など幅広く事業を展開している。著書に『いかなる時代環境でも利益を出す仕組み』(日経BP)など。