全社清掃1日3回!? 定番ふりかけ「ゆかり」を生んだ三島食品創業者の商売理念

日本で初めて、小袋に分けた一食用ふりかけを開発した三島食品(広島県)。生み出してきたロングセラーは数多く、代表的商品「ゆかり」は、発売から50年余り経ついまなお食卓で愛されています。創業者の三島哲男さん(故人)は、同社で1日3回の全社清掃を取り入れておられました。赤貧にあった幼少期の思い出、長寿企業の土台を築いた三島さんの商売理念に迫った内容をお届けします。※内容は1994年のインタビュー当時のものです

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正直に人生を渡ろう

――三島さんは13人兄弟という大家族のご長男だそうですが、家庭は裕福だったのですか。

〈三島〉
私が生まれた時は資産がありました。当時、父は百姓をやっておりましたが、祖父が鍛冶屋をやっておりまして、そのときに資産を作ったようです。しかし、それも父が全部なくしてしまった。

――お気の毒です。

〈三島〉
父は仕事熱心というより、事業欲が強かったんですな。いろんな商売に手を出して、成功したのはひとつもない。私が小学校に上がるころ、鉛筆が一本一銭でしたが、それを買う金もないほどでした。

いまから思うと、私にとってはそれがよかった。もし父がそのままうまく行っておったら、軟弱な人間になっていたかもしれません。貧乏したおかげでいまの私があると思います。

――小学校を終えてすぐに働きに出られたんですね。

〈三島〉
卒業式にも出ないで、広島市内の乾物屋へ丁稚奉公に出ました。

――独立しようという気持ちは小さいころからあったんですか。

〈三島〉
それははっきりとは覚えておりませんが、正直に人生を渡らなければいけない、ということは考えておりましたね。なぜそんなことを考えるようになったかというと、昔は修身という教科がありましてね。確か、小学校の4年生の時の教科書だった、と思いますが、呉服屋の小僧さんの話がありました。

――どういう話ですか。

〈三島〉
あるお客さんが反物を買おうとするんですが、その反物には傷があるんです。店の小僧さんがその傷のことを告げて、「これには傷がありますから、買わないほうがいいですよ」というものだから、お客さんは買わずに帰った。

店の主人がそれを見ていたものですから、小僧さんのお父さんを呼び、「ああいうことをされると店の方針に合わないから引き取ってくれ」というわけです。

小僧さんは暇を出されることになって、お父さんから叱られるかと思うんですが、お父さんは「お前のやったことは正しい。これからも正直に人生を渡れ」というんです。

反物に傷があることは、そのときはわからなくてもいずれわかる。それを知っていながら売るのは人をだますことだから、何が何でも売ろうとするのではなくて、むしろ正直に道を歩もうと子供心に感じたんですね。

(三島食品創業者・三島哲男さん)

「きれいにせい、きれいにせい」

――ところで、毎日始業前と昼の休憩が始まる前、そして終業時と1日3回全社挙げて掃除をされるそうですが、これを始められたのはいつごろからなのですか。

〈三島〉
創業以来ずっとやっています。どういうわけか私は幼いころから掃除が好きで、毎日掃除をしておった。何から何まで片付けてしまうものだから、かえって母親に叱られたことがあるくらいです。

そんな性格であった上に、創業間もないころ、原料のカレイを仕入れたいと思って、四国の松山沖にある小さな島の漁師を訪ねたことがあるんです。実に質素な家でしたが、戸を開けた時の光景をいまでもはっきりと覚えているんですよ。

かまどの上に平釜が載っているだけで、ほかには何もない家でした。床には畳の代わりにむしろが敷いてありました。

貧しい生活は私も体験していますから、貧しいことには驚きません。驚いたのは、平釜にほこりひとつ付いていなかったことなんです。もちろん、むしろにも土間にもちりひとつ落ちていない。ちょうど障子を通して陽が差し込んできて、なんてきれいなんだろうと思ったものですよ。

――それがきっかけですか。

〈三島〉
こういう家の人と取り引きができたらどんなに幸せだろうかと思ったんですな。その日から「きれいにせい、きれいにせい」というのが私の口ぐせになった。

私、光清学園という障害者のための福祉法人の理事長をやっているものですから、先日も何かしゃべってくれと言われて申し上げたことがある。ボランティアをしてくださっている一般の家庭の方々を相手にしゃべったんですが、それは家庭を乱そうと思ったら簡単なことだということをお話ししたんです。

例えば、玄関に汚れた靴と骨の折れた傘の一本もほうり出しておけば、すぐに家庭は乱れるんですね。ところが、ちゃんと掃除をして一輪挿しの一花でも飾っておけば、それだけで家庭が締まるのではないですか。


(本記事は月刊『致知』1994年6月号 特集「これでいいのか」より一部を抜粋・編集したものです)


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◇三島哲男(みしま・てつお)
大正6年広島県生まれ。昭和7年高等小学校卒業後、広島市内の海産乾物屋に勤める。21年終戦復員。24年三島商店創業。28年株式会社に改組し、社長に就任。36年三島食品に社名変更。平成2年黄綬褒章受章。4年会長に就任、28年逝去。

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