〝自分、自分〟という生き方には限度がある──長渕剛さんを支える稲盛和夫の魂の言葉

1978年にデビューして以来、「乾杯」「巡恋歌」「とんぼ」など数々のヒット曲を世に送り出し続けているシンガーソングライターの長渕剛さん。2011年の東日本大震災後に航空自衛隊松島基地で決行した激励ライブは、当時震災に打ちひしがれていた多くの人の心を勇気づけました。常に時代の最前線で行動し続ける長渕さん。その原動力には郷里の大先輩である稲盛和夫氏の教えがあったと語ります。(撮影/長谷川拓司)※記事の内容や肩書はインタビュー当時のものです。

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あの日、松島に向かった理由

〈長渕〉
稲盛名誉会長からは大事な人生訓をいつもマンツーマンで聴かせていただいた。それは僕にとって悦びだった。

心に残っている言葉はたくさんあるが、やっぱり一番は「人のために生きろ」である。

「自分の命は自分のものではない。借りものだから、生まれた時より少しでも魂を美しく磨いてお返しするんだ」

「〝自分、自分、自分〟という生き方には限度がある。そうではなくてこの人を喜ばせたいと思った瞬間から、限度を超えていく」

こういったことはお会いするたびにおっしゃっていたし、僕自身何となく分かるような気がする。人生を振り返ってみると、悩みや不安、怒り……そういう自分の想いを叫ばなきゃ生きていけなかったから、それを歌にして表現した。

そして、歌を聞いてくれる仲間が欲しかった。ライブハウスから数をどんどん増やして、1万、5万、7万、10万人という場所で歌えるようになった。

僕らミュージシャンは素直じゃないところもあるから、なかなか「おまえのために」なんてことは小恥ずかしくて言えない。だけど、結局のところ聞き手がいなきゃ存在理由がないし、悩んでいる人や生きづらさを感じている人に向けて作詞をしたり歌を歌ったりしている気持ちは当然ある。自己満足だけで終わっちゃ具合が悪い。

これはいまでこそ語れることだが、東日本大震災から1か月後の4月16日に、壊滅的な被害を受けた航空自衛隊松島基地を訪れ、約1500人の隊員を前に激励ライブを決行した時もそうだった。

10年前の3月11日、街ごと呑み込む大津波に加えて福島第一原発の爆発事故が起こり、僕自身も恐怖の真っ只中に突き落とされた。同時に、心にメラメラと燃えてきたものがある。それは「何か俺にできないか? と答えを探し当てたい」ということだ。

(中略)そして、パッとテレビを見た時に、「松島基地に行こう!」と思い立ったのである。そこからは様々な人のご縁が繋がり、嘘みたいにとんとん拍子で事が運んだ。

大げさに聞こえるかもしれないが、「命懸けで闘ってる奴らん中に行くなら、腹切る覚悟で突っ込まなきゃ。これで彼らの拳が上がらなかったら、俺は終わりだ、歌い手として失格だ」と覚悟を決め、ガンガン体を鍛えて、張りをつくって、ギターを持ってバコーンと松島基地へ向かった。

その時思い出したのは、「目の前に倒れている人間がいた場合に、知らん顔する人間と手を差し伸べる人間、どっちが美しいかと考える間もなく、手を差し伸べるのが人間なんだ」という稲盛名誉会長の言葉だった。そういった教えが僕の潜在意識の中に打ち込まれていたのかもしれない。


(本記事は月刊『致知』2021年4月号 特集「稲盛和夫に学ぶ人間学」より「我が心の稲盛和夫:〝誰かのためにと思った時、自分の限界を超えられる〟」を一部を抜粋・編集したものです)


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◇長渕剛(ながぶち・つよし)
1956年鹿児島県生まれ。78年にシングル「巡恋歌」で本格デビュー。以後、「順子」「乾杯」「とんぼ」「しゃぼん玉」「しあわせになろうよ」など数多くのヒット曲を連発。革新的な作品で熱烈な支持を獲得し、全国各地で記録的な動員数を誇るライブを展開。2011年の東日本大震災後、いち早く復興支援ラジオ番組を立ち上げ、航空自衛隊松島基地で決行した激励ライブは全国を感動の渦に巻き込む。音楽以外にも俳優としてTVドラマや映画に出演する他、芸術家として詩画展を開催するなど、多方面で才能を発揮している。

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